夫が浮気して、金に困って実家で盗み?義母が電話で深刻そうに…/子育てとばして介護かよ(2)

#くらし 
立て続けに着信。受話器をとると、義母だった

『子育てとばして介護かよ』2回【全9回】


久しぶりに会った親が「老いてきたなぁ」と感じることはありますか?
著者の島影真奈美さんは31歳で結婚し、仕事に邁進する日々を送っていました。33歳で出産する人生設計を立てていたものの、気づけば30代後半!いよいよ決断のとき…と思った矢先、なんと義父母の認知症が立て続けに発覚してしまい…。
話題の書籍『子育てとばして介護かよ』から、仕事は辞めない、同居もしない、今の暮らしを変えずに親の介護を組み込むことに成功した著者の、笑いと涙のエピソード『夫が浮気して、金に困って実家で盗み?義母が電話で深刻そうに…』をお届けします。

※本作品は島影真奈美、川著の書籍『子育てとばして介護かよ』から一部抜粋・編集しました

「介護」というわらじを履く日々が始まろうとは


あの子、きちんと家に帰ってきてる?


普段は鳴らない固定電話に、立て続けに着信があった。きっとセールス電話だろう。

そう思って留守電のまま放っておいた。でも、今日はやけにしつこい。

10回ほどコールしたかと思うと切れ、数分後にまたかかってくる。うるさくて仕事にならない。根負けして受話器をとると、義母だった。

「あの子はいるかしら?」

おずおずした感じで聞かれる。あいにく、夫は外出中だった。

「今はいませんけど、あとで電話するように言いましょうか?」

「いえ、いないなら、いいんだけど……」

受話器の向こうの義母はいつになく神妙な口調で、歯切れも悪い。どうにも気まずい。結婚して10年ぐらい経つけれど、夫の両親と会った回数は数えるほどしかない。年に1回、正月の家族の集まりに参加し、あたりさわりのない近況報告をし、新年の抱負を言い合う程度の関係だ。とくに険悪でもないけれど、親しくもない。実家とのやりとりはもっぱら夫の役目で、わたしが義父母と直接やりとりする機会はほぼなかった。

「完全に嫁としての役割を放棄してるけど大丈夫?」

夫に何度か聞いたことがある。返答はいつも同じで「やりたいの?」だった。

いや、まったく望んでいない。ただ、なんとなく、申し訳ないかなと思っているだけ。「年寄りに期待を持たせると、あとが大変だよ」と夫に言われると、自信がない。せっかく「やりたくないならやめようよ」と言われているのを押しのけてまで関わる理由がなかった。

そんなわけで、嫁としての経験値はほぼゼロ。義母から電話がかかってきても、どう対応したらいいのか、さっぱりわからない。

「おかあさん、どうしましたー? 何かありました?」


とっさにとった行動は「抜群に明るい声で単刀直入に質問する」だった。自分でもあきれるぐらい、能天気な声を出せたと思う。迷惑がっていることを悟らせてはいけない。でも、早く電話を切り上げ、仕事に戻りたい。

「あのね……あの子、きちんと家に帰ってきてる?」

「多分、帰ってきてると思いますけど」

「あの……ほかに女性がいるってことは……」

「おかあさん、何か見ました?」

聞き返す声が裏返った。自分でも、その切り返しはないだろうと思う。でも、軽く受け流すには義母の声があまりに真剣だった。

次ページ:あの子には絶対言わないでほしいんだけど…(2/2)

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