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夫が浮気して、金に困って実家で盗み?義母が電話で深刻そうに…/子育てとばして介護かよ(2)

パッと思い浮かんだのは「夫が女性とふたりで歩いているのを見かけ、義母が誤解した」というパターンだった。ここ最近、実家の近くで飲み会があったとは聞いていないけれど、取材や打ち合わせなども含めれば可能性はいくらでもある。
最悪なのは、義母が目撃したのが決定的な瞬間だった場合だ。「駅の改札で抱き合ってキスしてたの……」などと聞かされたら、どう反応すればいいのか。
場所ぐらい選べよ! 想像するだけで夫に腹が立つ。なぜ、そんな話を義母から聞かされなくてはいけないのか。
最悪だ!!
「あの子には絶対言わないでほしいんだけど……この間、旅行に行ったでしょ?」
「ああ、親戚同士で九州に行かれてましたね」
浮気現場を目撃したという話じゃないの? 戸惑いながら、あいづちを打つ。
「とっても楽しい旅行だったんだけど、帰ってきたら、あったはずのお金と通帳がなくなっていて……」
「それは大変でしたね」
「主人は警備会社が怪しいって言うんですけどね。玄関に見覚えのない男ものの傘があって。もしかしたら、あの子かなって……」
浮気を疑われている理由ってそれ!?
さすがにそれは大胆すぎる推理のような気がしつつ、念のため、被害状況を確認してみる。
「ちなみに、なくなったお金っていくらぐらいでした?」
「3万円ぐらいかしら。通帳はそのあと、別の引き出しから見つかったんですけどね」
「おかあさん! 大丈夫です。彼ではないです」
仮に夫が浮気していたとしても、片道1時間半以上もかけて実家に忍び込むなんて考えにくい。わたしがキッパリ否定すると、なぜか義母はあっさり納得し、今度は息子に叱られることを心配しはじめた。
「あなたがそう言うなら、きっとそうね。胸のつかえがおりたわ。あの子には絶対言わないでね。きっと怒るから」
そりゃ怒りたくもなるだろう。あらぬ疑いをかけられ、呆然とする夫を思い浮かべながら「わかりました」と答えた。
「大丈夫です。言いません」
「約束よ。絶対言わないでね」
しつこく念押しする義母を「大丈夫です! 言いません」となんとかなだめ、電話を切った。そして夫が帰宅したあと、真っ先に報告した。こんなすっとんきょうな出来事を話さずにいられるわけがない。
話を聞いた夫は愕然としていた。
「なんだよ、その話……」
「びっくりするよね。わたしも思わず、『何か見ました?』って聞いちゃった」
「その質問もひどいよ!」
「だって、おかあさん、ものすごく深刻そうだったんだってば」
「浮気をして、金に困って、実家に忍び込んで年寄りの財布から数万円盗む……って、どれだけダメな男だよ!」
あらぬ疑いをかけられた夫が気の毒でもあるのだけれど、夫が憤慨すればするほど笑えてくる。疑われている内容が、あまりに残念すぎる。
わたしたちは「結婚してもなお、親に心配され続ける素行の悪いドラ息子」を酒の肴に笑い転げ、ほんの少し親不孝を反省し、疑惑が晴れたことに乾杯した。事態の深刻さにはまだ、気づいていなかった。
著=島影真奈美、マンガ・イラスト=川/『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)
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