「おせちが机の上にあります」部屋のあちこちに貼られた衝撃の手紙の数々/子育てとばして介護かよ(7)

#くらし 
義父母は本気でその存在を信じている

『子育てとばして介護かよ』7回【全9回】


久しぶりに会った親が「老いてきたなぁ」と感じることはありますか?
著者の島影真奈美さんは31歳で結婚し、仕事に邁進する日々を送っていました。33歳で出産する人生設計を立てていたものの、気づけば30代後半!いよいよ決断のとき…と思った矢先、なんと義父母の認知症が立て続けに発覚してしまい…。
話題の書籍『子育てとばして介護かよ』から、仕事は辞めない、同居もしない、今の暮らしを変えずに親の介護を組み込むことに成功した著者の、笑いと涙のエピソード『「おせちが机の上にあります」部屋のあちこちに貼られた衝撃の手紙の数々』をお届けします。

※本作品は島影真奈美、川著の書籍『子育てとばして介護かよ』から一部抜粋・編集しました

お正月のおせちが机の上にあります

周囲を見回すと、ドアや和室のふすまなど、部屋中のあちこちに何枚も便せんが貼られていた。

「他人の家に断りなく入り込むのはやめてください」
「大切なものがなくなった気持ちを考えたことがありますか」
「お願いだから出て行ってください」

そんなメッセージが几帳面(きちょうめん)な文字でびっしりつづられている。

例の「2階の女性」に宛てた手紙だった。義父母は本気でその存在を信じている。
というか、やっぱり実在するの? どうとらえたらいいのかわからない光景だった。隣にいた夫も顔をこわばらせている。「あれ、撮っておいて」と小声で伝えると、無言でうなずき、かばんからデジタルカメラを取り出した。

手紙の文面はどれも、驚くほど長かった。厳しい口調で不法侵入を問い詰めたかと思うと、「子どものとき、友達のおもちゃは友達に断ってから使わせてもらいましたよね」と改心を促す。さらには、「わたしたちは子どもの支えになりたいのに、それができないのがつらい。あなたが出て行ってくれさえすれば……」と泣き落とす。

年明け早々に書かれたらしき手紙に至っては「新年おめでとうございます」で始まり、なぜか「初詣(はつもうで)に行ってきます」と〝女ドロボウ〞に向かって報告している。「お正月のおせちが机の上にあります。少しずつですがお召し上がりください」というメッセージまで添えられていた。下宿のおばちゃんと店子(たなこ) か。

もはや「見知らぬ貴女」に対して、義父母がどういう感情を抱いているのかもよくわからない。思い切って、この手紙について聞いてみたほうがいいのか。さすがにそれはマズいのか。

「最近ね、物騒になっていて困るの」
「そうそう、あの女ドロボウだろう? 早く出て行ってほしいんだが……」

義父母が顔を見合わせうなずき合う。義母によると、「2階の女性」は夜中になると階下にやってきてタンスの中を物色し、あれこれものを盗んでいくという。

「この間も、あれだろう? カーディガンを盗まれたんだよな」
「そうなの! すごくお気に入りだったのに」
「けしからんな」
「しかも、ちょっとおかしいのよ。わたしのパンツまで盗んでいくの……」

義母が顔を赤らめ、恥ずかしそうに身をよじる。

ぶっちゃけ、認知症の症状じゃないですかね?

次ページ:黙って聞くだけに徹することもできなかった(2/2)

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