ダイナソー小林こと小林快次先生&千葉謙太郎先生に聞く「タイムマシンで旅するように楽しむ恐竜図鑑」って!?

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考える力を育む「新しい」図鑑

『角川の集める図鑑GET!』は、「考える力を育む“新しい”図鑑」をコンセプトに創刊された学習図鑑シリーズ。従来の分類別ではなく生息地域別による構成や、オンライン図鑑「GET!+(プラス)」との連動など、子どもたちの好奇心を膨らませる工夫が詰まっています。3冊同時発売された『恐竜』『動物』『昆虫』の中から、『恐竜』の監修を務めた小林快次先生と千葉謙太郎先生にお話を伺いました。

時空の旅で、恐竜たちの生きていた世界へ


――小林先生と、千葉先生が監修された『角川の集める図鑑GET! 恐竜』は、分類別ではなくて、時代別・生息地域別で恐竜を紹介するという新しい試みをされていますね。

小林快次先生(以下、敬称略) これまでの図鑑はどれも分類区切りで、それはそれでいい図鑑だと思うのですが、辞書的な、興味ある恐竜を調べるための図鑑という感じだったんですね。でも今回の図鑑は、図鑑の中で時空の旅をするという、読み物的な楽しみのある、まったく新しい図鑑になったと思っています。

―― 時代別・生息地域別で見せることの利点として、どんなことが挙げられますか。

千葉謙太郎先生(以下、敬称略) 僕らが恐竜を考えるとき、生き物として捉えるのと同時に、時間の流れも意識するんですね。子どもも恐竜を勉強すると、古い時代はこういう恐竜がいて、徐々にこうなって……という感じで、自然と進化というものを感じると思うんです。進化というのはひとつの恐竜だけで起きるわけではなくて、環境や同時代に生きるまわりの恐竜との相互作用で起きるので、分類別の図鑑よりも時代別・生息地域別の図鑑の方が圧倒的に意識しやすい。ページをめくるだけで自然と体感できるのではないかと感じました。

小林 この図鑑は、この時代のこの場所にタイムマシンで旅したら、どんな恐竜に会えるのか、という設定で読み進めていけるようになっているのですが、恐竜が分類別で並んでいるような今までの図鑑と違って、この図鑑ならその時代のその場所にどんな生物がいたか、当時の生態系を見ることができる。こういう見せ方は、図鑑としては初めての試みだと思います。

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―― 恐竜の種類をカタログ的に見せるではなく、恐竜同士の関係性や暮らしぶりが見える図鑑を目指したそうですね。

小林 各章の扉となる見開きに、ふたつ以上の恐竜が一緒にいるシーンがあって、そのまわりを同じ場所に同時期に生きていた恐竜たちが囲んでいるんですね。その見開きを見ただけで、恐竜たちが生きていた当時の世界が伝わるようになっています。

千葉 他の図鑑よりも恐竜同士のつながりがわかりやすく描かれていますよね。それぞれの恐竜について、化石が発見された国と地層の名前まで載っているので、この恐竜とこの恐竜は同じ地層から見つかったのか、同じ場所に同時期にいたのか、というところまで読み込むこともできます。生態系をイメージしやすいというのは、この図鑑の特徴のひとつだと思いますね。

幅広い層が楽しめる、ワクワクするような図鑑


幅広い層が楽しめる、ワクワクするような図鑑


―― この図鑑を監修するにあたって、心がけたこと、工夫されたことはどんなことですか。

小林 恐竜図鑑はいろんな出版社から出ていますが、どれだけ数を載せたかということが重視されているような感覚があって。せっかく新しく図鑑を作るなら、恐竜についてまだあまり知らない子ども、またはもっと踏み込んだ恐竜ファンの子どもにも楽しめる、ちょっと切り口の違った図鑑にできないものかな、という思いは当初からありました。

この図鑑を開くことで、好きな場所、好きな時代にタイムトラベルできたら、ワクワクしますよね。旅行気分で楽しんでもらうのもいいし、恐竜をちょっと知っている子でも、他の図鑑には出ていない場所や時代が載っているので、豆知識を補完することができます。恐竜についてまだ知識の浅い子から、恐竜ファンの子、さらには大人まで楽しめる、深みのある図鑑になったと思っています。

―― 監修する中で大変だったのはどんなことですか。

小林 今までと同じような分類別の図鑑を作るのではなく、今回は時代別・生息地域別という、まったく新しい図鑑を作るので、最初に全体的な骨子を決めていくところが楽しくもあり、大変でもありましたね。なるべく多くの恐竜をカバーすることを意識しつつ、どう組み上げたら楽しい図鑑になるか、編集者の皆さんと話し合いながら時間をかけて決めていきました。

千葉 復元画や文章を一点一点、論文と照らし合わせながらチェックしていくのが大変でしたね。復元画は、指の数を描き直してもらったものもありましたし、描き下ろしのものについては、より特徴が出るようにポーズやアングルを指定したこともありました。間違いがあると図鑑の評判が下がってしまうので、そのあたりはできるだけ細かいところまでしっかりと確認しました。

きみも恐竜博士になろう!


―― この図鑑にはオンライン図鑑と連動して、自分で図鑑が作れる「GET!+」という機能がついていますが、これについてはどう思われますか。

小林 図鑑は1回出すと数年、長いものなら10年くらい改訂しないことがあるので、その間、内容がアップデートできないんですね。でもオンライン図鑑があると、図鑑をベースにしながら、さらに自分だけの図鑑を作ることができます。今まであったリミットがなくなるし、自分だけのオリジナル図鑑ができるというのは面白いですよね。


新しく出てくる恐竜のデータをオンライン図鑑に追加することもできるだろうし、博物館と連携して、QRコードで読み込めるようにすれば、図鑑だけでなくて博物館に出向いたり、ものに触れたり、誰かとコミュニケーションをとったりと、もっといろんな方向に展開していくこともできるはず。その原点として、いいツールかなと思います。

―― 章ごとに出題される「GET!ミッション」は小林先生のアイデアだったそうですね。

小林 図鑑を見て恐竜の名前をただ覚えるのではなくて、何か課題があれば、ゲーム感覚で学んでいけますよね。子どもたちに興味をもってもらうための入り口として、ミッションがあるといいかなと思って提案しました。図鑑の見どころがミッションになっているので、そこに注目しながら旅をしていくような感覚で読み進めていってもらえたらなと。考えながら読むことで、より深い学びにつなげていけるのではないかと思います。

きみも恐竜博士になろう!


―― 子どもの頃の図鑑の思い出があればお聞かせください。

千葉 僕は子どもの頃から恐竜が好きだったので、家でも学校の図書館でも恐竜図鑑を読んでいましたね。図鑑が好きすぎて、図鑑で読書感想文を書いて、市のコンクールで表彰されたことがあります。図鑑といえばその思い出ですね。

小林 僕は、家族がみんな寝静まったあと、自分の部屋のベッドで、懐中電灯で照らしながら鳥の図鑑を見ていた記憶があります。オオルリが好きで、図鑑を見ながら自分でオオルリの絵を描いたりして。ひとりで図鑑を見ていると、自分の世界に入れるんですよね。それがすごく好きでした。

―― 小林先生は図鑑のカバー袖の監修者の言葉で、「恐竜研究はまだ始まったばかり。みんなで「新恐竜研究時代」を始めよう!」と書かれていますが、これだけ研究が進んでいても、まだまだ研究できるのでしょうか。

小林 恐竜の研究者としては、僕はすでに少し古い世代になりつつあるんです。だから今回、千葉先生にも監修に入ってもらいました。千葉先生のような若くて優秀な研究者が今、どんどん新しい研究を進めているんですよね。僕と千葉先生の年齢差は15ですが、それだけで僕が描く恐竜像と千葉先生が描く恐竜像は違うし、研究スタイルも目に見える速度で変わっています。千葉先生は、日本で次の恐竜界を担う一人。この図鑑を読んだ子どもたちが、次の千葉先生を目指してくれたらうれしいですね。

―― 『角川の集める図鑑GET! 恐竜』を通して、子どもたちにどんなことを伝えたいですか。

千葉 一昔前だと、恐竜の色は想像するしかなかったのですが、最近の研究では皮膚に残った色素などから、色が復元されている恐竜もいます。この図鑑には、そういった最近の研究の話なども載っているので、ぜひ読んでもらいたいですね。恐竜はまだまだわからないことだらけ。図鑑を見て、驚いたり疑問を抱いたり、知識を得ることの楽しさを味わってもらいたいですね。

小林 タイムマシンで時代をさかのぼって世界中を旅する、というワクワクするような設定があるので、恐竜が好きでない子にも気軽に楽しんでもらえるし、恐竜が好きな子にとっても最新の情報などがあって読み応えのある図鑑になりました。恐竜研究はまだ始まったばかりです。将来もし恐竜の研究者になりたいと思うのであれば、図鑑を見ながら夢をふくらませてほしいなと思いますね。

取材・文=加治佐志津

【著者プロフィール】
小林快次(こばやし・よしつぐ)
1971年、福井県生まれ。ワイオミング大学地質学地球物理学科卒業。サザンメソジスト大学地球科学科で博士号取得。現在、北海道大学総合博物館教授。

千葉謙太郎(ちば・けんたろう)
1985年、札幌市生まれ。東北大学理学部卒業、北海道大学理学院修士課程修了。トロント大学生態学進化生物学科で博士号取得。現在、岡山理科大学生物地球学部講師。

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