せっかくの夏休み。いろんな体験をさせてあげたいけど出かけるのも心配です【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第79回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

夏休みの過ごし方に漠然とした不安があります。夫婦共働きのため、小2の息子は朝から夕方まで学童。帰宅後は公園に遊びに行ったり、夜に少しドリルをやったりなど、学校がある時期とほぼ変わらない日々を過ごしています。せっかくの夏休みなので、もっと何か普段できないことをできたらと思っているのですが、平日は夫婦とも仕事でバタバタしている状態。学童を休ませて一緒に何かをやるとか、夕方以降に毎日何かにつき合うなどは現実的ではありません。

土日も、人混みの中出かけるのはコロナが怖いし、熱中症の心配もあるため、あまり外に出られずにいます。自宅でクッキー作りなど、普段はあまりやらないちょっとしたことを企画してはいるのですが、こんな日々の連続でせっかくの小2の夏休みが終わってしまっていいのかな?とも思います。本人は工作をしたり、絵を描いたりするのが好きなインドア派なので、家にいて楽しそうにはしているのですが、もうちょっと何かしてあげられないかなと思っています。(Hさん・37歳)

【小川先生の回答】

体験に必要なのは特別な何かじゃなく、日々の出来事に寄り添う姿勢

今回のお悩みを解決するにあたり一番大事なことは、「夏休みを特別なものにしなきゃいけない」という信仰から逃れるということ。みなさん「夏だから特別でなければいけない!」って思い込み過ぎているんです。もちろん旅行などわかりやすいイベントを入れることで、家族の楽しい思い出ができるのは、それはそれでいいとは思います。でも、子どもって意外と「旅行どうだった?」と聞かれて「蝉がすごかった」と答えたり、恐竜博に連れて行ったはずなのに「ハンバーガーが美味しかった」という感想を言ったりするもの。それはなぜかというと、それが本人にとっての体験だからです。大人はついコンテンツに気持ちが行きがちですが、体験というのは、出会った事柄に本人の心の動きが合わさって、初めて本人にとっての体験になります。

親たちはどんな体験をさせたらいいかとそこに価値を求めるため、何か特別なことをしてあげなきゃと思いがちですが、そんな必要はないのです。それよりも、子どもの日々の出会いに寄り添って、ひとつひとつを体験に替えてあげることのほうが大切。特別なイベントに頼るよりも、毎日を大事に過ごしたほうがはるかに有意義です。

子どもが自分で自分の時間を決める。そこにこそ価値がある

夏休みなのに普段と変わらないとおっしゃっていますが、そんなことは絶対にありえません。なぜなら学校がないのですから。普段はいつも学校があって、夕方からしか子どもは自分の時間を持てません。でもそれも、習い事があったり、宿題をやらなきゃいけなかったり、食事など家族との生活の時間があったりで、自分の時間を何時間かかたまりで持てている子はほとんどいないでしょう。自分の時間を3時間以上かたまりで持てるのは週末ぐらいですが、それもなんだかんだ平日のシワ寄せがきたりして、たっぷり自分の時間を過ごせていないのが現実です。結局いつも何かをこなしながら日々を過ごしているため、「今日何やったっけ?」とはっきりしない日がたくさんあります。

でも夏休みは毎日の使い方を自分で考えることができます。今日一日をどう使おうかというのを、自分で考えて決められるのです。それは学童でその日に何をするか決めるのも同じこと。イベントに行くのも楽しいでしょうが、子どもが自分の時間を自分で決めるほうが、はるかに価値があります。そう考えると、子どもにとって夏休みというのは、既に毎日が特別と言えます。

子どもが楽しんだストーリーを共有する

一見平凡に思える時間を特別にするための秘訣は、「今日はどんなことをしてみたい?」と短くてもいいので子どもの話を聞いてあげる時間を持つことです。そして本人がどんなふうに楽しんだのかを共有することも大切。例えば子どもが工作で作ったものを見せてくれたら、「よくできたね」で終わらせるのではなく、「どうやって思いついたの?」「どういうふうに作ったの?」と、その作ってきたプロセスを聞くようにしましょう。なぜなら、そこにはその子だけの時間がこもっているからです。そのストーリーを丁寧に聞いて共有することで、その出来事は本人にとって体験へと替わっていきます。

特別な体験にするためには、この「共有」というのがとても大事です。私自身、子どもの頃の思い出として今でも強く印象に残っているのは、高校野球を見ながら家族で素麺を食べたことや、夜にみんなでホラー映画を見てめちゃくちゃ怖かったことだったりします。旅行よりもそっちのほうがなぜ印象に残っているのかというと、それは家族と共有したからに他なりません。「特別なことをしなきゃいけない」とか、「何かを成し遂げなきゃいけない」などタスクに追われるのではなく、家族と過ごしたまったりとした時間。目的がないからこそ残る価値というのもあるのです。みなさんも自分の子どもの頃の夏休みを思い出してみてください。結構まったりしていて、でもそれが良かったのではないでしょうか?

面白がれる感性を身につければ、あらゆることが特別なイベントになる

コロナで制約や閉塞感がある中、何か開放感のあることを子どもにさせてあげたいと望まれる親御さんが多くいらっしゃいます。でもどうせ制限があるなら逆に、家庭に中の平凡と思える毎日を特別にしていくということを、この機会に取り戻してみるのもいいのではないでしょうか?子どもにたくさんメニューを入れてあげなきゃと思うのではなく、子どもの好きにさせてあげること。ただその代わりに、どう楽しかったのかを絶対に教えてもらうのです。そうすれば、子どもにとっては毎日が特別になるはず。スーパーに買い物に行くだけでも、旬の美味しいものを食べるだけでも、十分に楽しいイベントになります。

もちろんお菓子作りもいいと思います。クッキーを焼くなら、そこからひとひねりして遊んでみるのもおすすめです。何種類かクッキーを買ってきて、食感の違いを比べるところから始めてみるのも楽しいですよね。その後に実際焼いてみて、硬さの違いを不思議に思ったら、その原因は何だろうと調べてみるのもいいと思います。そういうふうにいくらでも楽しめるんです。要はちょっとしたことを面白がれるか、不思議がれるかということ。なのでこの夏は、面白がれる感性を親子で育てる時間にしたらいいと思いますよ。

今年の夏は、例年以上に夏休みをどう過ごしていいか悩んでいる親御さんがたくさんいらっしゃいます。そこで、YouTubeでも夏休みを充実させるコツをあげました。夏休みの過ごし方で悩んだら、ぜひご覧になってみてください。


回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。YouTubeチャンネル小川大介の「見守る子育て研究所」で情報発信中。

文=酒詰明子

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