父親の浮気を知った子どもたち。葛藤の果てにたどり着いた家族の形は…『マタしてもクロでした』著者・うえみあゆみさんインタビュー

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気がつけば、17年も…

『マタしてもクロでした』著者・うえみあゆみさんインタビュー【後編】


夫の浮気を偶然発見し、カマをかけたらクロだった…。離婚調停まで経験した夫婦の「再生物語」を描き、大反響を巻き起こした『カマをかけたらクロでした』(通称『カマクロ』)から10年。家族の平和のため、繰り返される夫の浮気を不問にし続けた結果、なんと息子が夫の浮気を知ってしまった! 

妻として、母としてどうする!? 戦う女が再始動した姿を描き、レタスクラブWEBで500万PVを越えた続編『マタしてもクロでした』(通称『マタクロ』)の著者・うえみあゆみさんが、当時の思いを語ります。
その後の夫と子どもたちの関係や、密かに計画している将来の夢の話も飛び出して…。

浮気発覚から8年。夫は全然、懲りてなかった!『マタしてもクロでした』


夫と子どもたちの関係は…、意外と良好!?


――ご主人の浮気が発覚した後の、お子さまたちとご主人の関係はいかがでしたか?

「上の娘は昔から『浮気のことを抜かせば悪い人じゃないと思う』と言っていますね。
娘は大学生になりましたが、実は先日、彼氏と別れたんです。別れ話をするために出かけて行って『連絡待ってるね』と送り出しました。帰って来るときに連絡が来たので、家にいた夫、息子、私の3人で『行くぞー!』って言って駅まで行って。お姉ちゃんは駅からとぼとぼ歩いて来たんですけど、わーって3人で駆け寄って、ラグビーのスクラムみたいな円陣を組んだりしていました(笑)」

娘から見た夫は「ときどきやらかすけど、普段は悪い人じゃない」。ずっと夫の味方だった


――ご主人も!? なんていいお話! 下の息子さんは?
「高校受験をきっかけに、夫との関係が変わりましたね。中学3年生の夏ごろから、息子のほうが私の方針についてこられなくなったというか、うまくいかないときがあって。夫がサポートしてくれるようになったんです。

私はわりと『いけいけゴーゴー』な性格で、根性論じゃないですけど、『やらないからできないんだ!』『やればできる!』という考えなんですが、夫は私と全然性格が違うんです。息子の模試の結果や成績、勉強している内容を見て緻密に分析して『次はこうこうこうだな』と、私と全く真逆のアプローチで息子を誘導しました。それが本人にはよかったようで、夫を頼るようになった。その時に初めて『この2人、関係性が変わったな』と感じました。

高校受験を機に夫に息子は夫に頼るようになった

息子と夫2人で過ごす時間が多くなったし、男同士で『ママってさー』とか文句を言い合ったりしていたみたいです。いま息子は高校1年生になりましたが、今も夫に頼る部分は頼っていますね」

母が補えない部分を夫がフォローできることを知った


子どもたちが父親を嫌いになることだけは絶対に避けたかった


――それは、母親としては安心しますね。

「前作の“カマクロ”を描き始めたとき、一番回避したかったのは、子どもたちが父親を嫌いになってしまうことでした。間違えたことをした親を軽蔑したまま別れてしまうことは一番避けたかった。少し時間はかかったし、きっかけは私と息子がうまくいかなくなったことでしたが、結果としてはよかったなと思いますね。
“マタクロ”を描いていた時、以前はよく「ママっていつ離婚するの?」と言っていましたが、今は言わないですね。たぶんですけど、もし今の状況で『ママ、離婚する』と言ったら、息子はさみしがると思います。あのときとは状況が変わってきているので」

――ご主人は、数々の女性関係は問題ですが、お子さんとはしっかり向き合っているように見えます。

「そこは変わらないですね。『今は生活を支える大人は必要。子どもたちに俺がいらなくなるまで離婚は待って下さい』と言っていました。
不器用なんですよ。自分から理解を求めようとドアを開かない人なんです。反省はしていて、謝りたいと思っているけど、自分では言えないやつなんで。それはいまだにずっと私の腹にためてますけどね。これまでの謝罪にはあまり意味がなかったので、『ま、そのへんはいいかな』と。

お金のことも含め、夫は子どものことをきちんと考えていた

面倒くさい性格の人なんだと思います。自分が主張しなくてはいけないときにしなかったり、地雷がたくさんあったり。でも、それも人間だと思うんです。どちらかというと、そこを子どもたちに理解してほしくて。神格化された『父親』ではなく、今はそういう人だと理解していると思うので、それはよかったのかな、と」

実は、仕事も家庭も投げ出したりせず、実はちゃんとしてきていた夫に気づき始め…


今はつらくても苦しくても、3年後には必ず違う未来があるはず


――今後、ご家族はどうなっていくのか、気になる読者も多いと思います。

「今は、自分が出した結論に納得していますが、将来の夢がありまして。息子が社会人になった頃、ある程度親の手がかからなくなったら、離婚して1人で沖縄に移住したいと考えています! 完全に自分を誰も知らないところで、自然の中で気ままに生活したいんです。創作活動は全部やめてリタイアですね(笑)。

実は以前、ようやく仕事がひと段落したので、1カ月くらい休もう、まずは1週間くらい寝て過ごそう、と思ったんですが、そんな生活は3日くらいで終わってしまって…。気付いたら、マンガを描いていたんですよね…。自分でもびっくりなんですけど」

――やはりマンガを描くことは天職なのでは!?

「そうなんでしょうか…。趣味を持ったり、やったことないことをしてみたいんです。醤油やみそを仕込んだり、畑で野菜を作ったり。昼夜逆転の生活も15年以上続いているので、沖縄に移住して、太陽の下で正しい生活を送りたいですね。
沖縄は、毎年子どもたちと家族旅行に行っていた場所なんです。海が好きですし、自分に合っていると思うので、そこでのんびり過ごせたらいいな、と考えています」

――沖縄の新生活を描いたコミックエッセイを楽しみにしています!(笑) 最後に、読者にメッセージをお願いします。

「前作の『カマクロ』を描いたときも感じていましたが、3年後は同じ状況では絶対にないと思うんです。今ある怒りも苦しみも悔しさも、きっと変わっていきます。離婚に向かっている人も、そうでない人も、3年後は今の自分とは絶対に違うはず。当たり前ですけど、今の状態がずっと続くわけではないと、自分が一番ひどかったとき、一番落ち込んでいたときにそう考えていました。

子どもたちと夫が思い合っている姿を見て…

夫に見切りをつけて新しい人生を歩むという選択肢もあったけれど…

自分がこういう当事者になったとき、離婚したほうがいいのか、子どもにはどう接したらいいのか、悩むと思うんですよね。そういうぐしゃぐしゃの状態のときに『大丈夫、私も同じようにぐしゃぐしゃだったよ、でも、何年かしたら夫婦関係や親子関係もこうなったよ』という体験談を、本当に小さな体験談ですが、読んでいただいて、『あぁ、こういうこともあるのね』って思ってもらえたらいいですし、こういうふうにはなりたくないなって思うのもありです。

夫婦や家族の在り方について、いろいろな意見があると思います。ですが、外から正論を押しつけたり、あれこれ批評されることではないと思うんです。今を悩み、戦う女性の方々を応援する気持ちで、『こんな形もあるんですよ』ということをお伝えできればうれしいです」


取材・文/岡田知子(BLOOM)

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Information

著者:うえみ あゆみ
東京生まれ。多摩美術大学グラフィック専攻卒業後、CMプランナーとして活躍。出産を機にイラストレーター、フリーのCMプランナーに転向。現在、ムスメとムスコのおかあさん兼イラストレーター&漫画家。

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