約束は破る、嘘もつく。常習犯で、もう子どものことが信用できない!!【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第88回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

小6の受験生の娘がいます。今まで何度も嘘をつかれたことがあり、どうしても子どものことが信用できなくなってしまいました。例えば、塾のない日は、私が仕事から帰宅するまで、3時間ほど娘が家で1人になることがあるのですが、その間約束していたことを全くやっていないということがよくあります。3時間丸々遊んでしまうと、やるべき課題が終わらないため、計算と漢字くらいはやっておくよういつも言っているのですが、その約束を何度も破られています。しかも、私が帰宅後やったかどうかを尋ねると、「やったよー」とすごくナチュラルに嘘をつきます。その素振りには一切の迷いも見られないため、忙しい時は「そうなんだ、よかった」と流してしまうのですが、落ち着いて「今日やったとこ見せて」と言うと、白紙なことも多々。

やるべきことをやらずに何をしているかというと、本や漫画を読んでいることがほとんどです。「先に宿題を終わらせてから本を読めば怒られないのに、順番を間違えたから、今ものすごく怒られているんだよ」と言うと、「そっかー、わかった」と言うものの、また同じことをやらかします。確信犯的にやるべきことをやらないというよりも、おそらく目先の誘惑に負けているのだと思われます。そんなことが積み重なったこともあり、私が家を空けて目を離すことがダメなことのように思えてきて、『私がいなかったらこの子はやらない』というマインドになってしまいました。

そんな折、ちょっとした事件が。私が仕事から帰宅した際、娘はまだやるべきことが終わっておらず、近くには、漫画がズレた状態で置かれていました。私はてっきり娘が読んだものと思い、「また漫画読んでたでしょ!」と、ものすごく怒ってしまったのですが、実はそれを読んでいたのは娘ではなく夫。娘は終わらせてはいないものの課題を進めていた途中だったのに、私は娘を疑いかなり叱ってしまいました。後で「ごめん、勘違いだった」と謝りましたが、私が彼女のことを信用していないところに根本的な問題があると思っています。目を離したらダメと思っているこのマインドを変えない限り、私はずっと張り付いていないと不安なままな気がします。おそらく今後も親の目をかいくぐることをやるとは思いますが、どういうふうにこの不安な気持ちを手放していけばいいでしょうか。(Yさん・42歳)

【小川先生の回答】

誘惑に当たるものを簡単に手に取れる場所に置かない

約束を破ってしまうのは、目先の誘惑に負けているためと分析されている通り、本人は決して約束を破ろうとは思っていないはずです。ではどうして破ってしまうかというと、そこには約束を守ることのできない本人なりの事情があるのです。その事情を汲み取ってあげることがまずは必要です。

ひとつは、本や漫画などの誘惑に当たるものが、簡単に手に取れる場所に置いてあることです。例えばダイエット中にお菓子が家の中にいっぱいあったら、つい食べてしまったりしますよね?ダイエットしたいなら、お菓子を買わずに、家にお菓子がない状況を作ることが大切だと思います。それと同じく、勉強するにも、勉強に取りかかりやすい環境作りというものが必要なのです。本や漫画が好きで、つい読みたくなってしまい、読みだすと止まらなくなることがわかっているのであれば、そうならない環境作りをしてあげましょう。

例えば、脚立を引っ張り出してこないと届かないような本棚の上の方にわざわざ置くとか、事前に言わないと出してもらえないような場所へしまっておくとか、ひと手間かけないと手に取れないように工夫することで、無意識に流れでやってしまうのを防げます。また、「やることやればちゃんと渡すよ。読んでいいんだよ」というやり取りをすることで、本人も宿題を先にやるということを意識しやすくなると思います。

本人が取り組みやすいようにお膳立てする

もうひとつは、自分でできるはずのことについても、どういう状況であれば取り組みやすいのかという、本人なりの事情というものが存在します。例えば、机の上に最初から準備されていたらできることも、本棚から問題集とノートを引っ張り出してくるところからだったらできないという、ちょっとした『できる・できない』のハードルがあったりするのです。「やらない」と言うけれど、もしかしたら1人で準備してやるところまではいけていないだけなのかもしれません。準備の最中に誘惑のものを見つけてしまい、流されている可能性も高い気がします。

そうであれば、朝に家を出る時点で、帰ってからの動きがとれるようにお膳立てを手伝ってあげましょう。課題をやる順番に揃えて机にセットしておけば、迷いなく誘惑にも負けずに取り組みやすくなると思います。また、学校から帰ったら『何と何をやる』という報告メールを送ってもらうようにするのもおすすめです。親からはその返事として「計算は時間を見ながらやるといいよね」とか、「国語の文章題は、音読したほうがこの前うまくいったよね」など、具体的な取り組み方を書いて送るようにします。毎回同じ内容でもいいので、取り組み方を言語化することで、本人の中で『取り組めている自分』をよりイメージしやすくなります。そして、ちょっとできるようになったとしても、くれぐれも「もうそろそろ言わなくてもいいだろう」と勝手にこちらから止めないこと。やり続けさせてあげるためには、こちらからの働きかけも継続していく必要があります。当然のようにできるようになったとしても、更にあと一週間は関わり続けるくらいがいいでしょう。

本人に「やらせる」のではなく、本人が「できるように手伝う」

このように、「約束を守れない」と思うのであれば、どのようにすれば約束を守れるようになるのか、本人なりにできる理由や、できる状況作りを手伝ってあげればいいだけです。親としてできることは、あくまでも本人が約束を守れるための手伝いに過ぎません。「どうやらせるか」を考えている限りうまくはいかないし、過去にできなかった事例を引っ張り出して疑っても、何の成果も生みません。それよりも、実際に「守れた」、「できた」という体験を増やすことが何よりも重要です。それが、本人にとっての自信にもなるし、子どもを信じることにも繋がります。

人は信用しようとしてくれることに応えようとするものです。親が信じなければ、本人も「どうせ信じてくれないでしょ?」というマインドに陥るのは必然です。「あなたならできると信じているから、できるための方法を一緒に考えよう」という親としてのスタンスが伝われば、本人もきっとそれに応えようとするはず。「あなたのことを信じたいし、信じようと思ってる」ということは本人に伝え続けてあげてください。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。YouTubeチャンネル小川大介の「見守る子育て研究所」で情報発信中。

文=酒詰明子

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