片づけとは、自分を知る術を学ぶこと。整理整頓がもたらす精神的効果/モノを元に戻す技術(5)

#くらし 
整理整頓された家は、混沌とした外の世界に対する防備

『モノを元に戻す技術  片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく』 5回【全10回】


「シンプルライフ」の体現者が実践している片づけの極意!

ベストセラー『シンプルに生きる』の著者・ドミニック・ローホーさんが贈る、豊かな人生を手に入れるための片づけ術のすべてを綴った『モノを元に戻す技術  片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく』

フランス流、心地よい空間を作るための考え方を基に、片づけの下準備(自分の時間を確保し、ひとりで片づける)、片づけの順番(衣類・布製品から片づけ始める)、便利な収納用品(箱、キャビネット、フック、タグ)、行動動線のルール(使用頻度に合う、手に取りやすい高さ別に片づける)といった、具体的な片づけのノウハウを紹介していきます。きっと、整理整頓に多くの時間を費やしているあなたの役に立つはず!

※本記事はドミニック・ローホー(著)、笹根由恵(翻訳)の書籍『モノを元に戻す技術  片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく』から一部抜粋・編集しました

整理整頓の精神的効果

【整理整頓された家は、混沌とした外の世界に対する防備】

「整理する、捨てる、選ぶ……。
片づけは、多くの場合、
不安や無力に対する最善の防御手段である。」
--Psychologies Magazine(心理学雑誌)の記事(2013年1月)


片づけることによって自分をいたわることができます。自分の心のなかが健康なとき、身体のなかも健康です。そして身体のなかが健康なとき、思考はクリアになるのです。私たちは極めて混沌とした時代に生きています。大規模自然災害、経済的不安定、世界中の社会変化……。さまざまな情報が日々、私たちに世界の混乱を感じさせます。

だから、せめて自分の小さな個人的縄張りだけでも整理することは、安らぎや安定、幸福の場を作ることになるのです。片づいた家は落ち着きます。オリヴィエ・ドゥヴィルが言うように(第6回目参照)、片づけることは、結局は外の世界の混乱に侵略されるがままにならないことだということになります。自分を守るに等しいのです。

【歳をとることと、片づけ】

「私の祖母は数年程前から認知症になってしまいました。
元々片づけられない&捨てられない人でしたが、
この頃から物を溜め込むようになり、
たくさんの荷物に囲まれながら家に引きこもるようになってしまいました。」
--ゆるりまい『わたしのウチには、なんにもない。「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至ります』


年をとるにつれて家がどんどん汚くなり、モノであふれていく人がいます。そのような家でモノを見つけようとしても、難しいことでしょう。徐々に彼らの記憶は衰えていきます。モノがあふれかえった家は、ある段階まで来ると、もはや片づけらなくなるのです。モノがあふれていることは、移動が困難な人にとっては障害になり、つまずいたり転んだり怪我をしたりする可能性もあります。歩行器や車椅子は通行することができず、そうした人たちは高齢者の施設に行くことを余儀なくされるのです。

世界でも有数の長寿国である日本。モノがどこにあるのかわからなくなるのが「認知症の始まり」と言う人もいます。一方で、自分の年齢にもっとも上手に順応できるのは心理的にもっとも柔軟な人だということもできます。

いつも私が通うカフェを経営している86歳の女性は、ご主人が8年前に亡くなったので、最近、モノを捨てるサービスを呼んだと語ってくれました。そのサービスでは運び去ったものすべてをなくすことを請け負ってくれるのですが、それを神道の典型的なしきたり、つまり火によって行うのです! このご老人は、彼女の死後、自分の人生に寄り添い、満たしてきたこれらのものすべてをほかの人に「邪険に扱って」ほしくなかったのです。手で自分の周囲を掃くしぐさをしながら、すべてがきちんと完全に燃やされたと説明してくれたとき、彼女の瞳は満足気に輝いていました。彼女はその大きな家よりもずっと小さくて、より彼女の年齢に見合ったマンションに移り住んだのだそうです。

【片づけとは、自分を知る術を学ぶこと】

「自分自身を知ることは、自分の身体や精神、魂を知ることです。」
--B・K・S・アイアンガー(ヨーガの偉大な指導者)


片づけの第一ステップは、考えること。つまり分類し、選択をし、決着をつけることです。そうすることで心は明確に、思考は豊かになり、自分の習慣(いいものも悪いものも)や行為、ニーズや欲望を考え直さざるを得なくなります。すなわち、自分を受け入れ、ニーズと欲望を区別し、時には自分のなかにまだ埋もれている情熱を自覚することにもつながるのです。

もしずっと英国式にお茶を淹れること、つまり英国の昔の家族がそうしていたように、変わることのない作法に則って、同じ場所で同じ時間に同じ飲みものをいつも飲むことを夢見ていたのに、ほかの種類のお茶にも惹かれている自分に気づいたなら、片づけることは、あなたがただ儀式としてお茶を飲みたいのではなく、趣味としても楽しみたいのだということを自覚するきっかけとなります。こうして自覚することで、模様替えして家の一角をこの活動(道具、入れもの、お茶の種類ごとのティーポット、テーブルかトレイ、肘かけ椅子など)に捧げることになるかもしれません。

無意識に育んできた情熱が自分にあることがわかるかもしれないのは、片づけることによってなのです。すると、実際に具体化することができ、人生におけるおまけの小さな喜びを味わうことができます。この意味において、片づけは喜びの源泉となるでしょう。自分のものを整理し直し、集めることで、コレクター魂を発見するかもしれません。

友人の家で手帳について話していたとき、私は彼女が古いものも新しいものもすべて、ていねいにまとめて机の上の棚に保管していることを知りました。その古艶が出た革や金付けが施された縁、それぞれに異なったデザインは、みごとな作品を作りあげていました。つまり、ここで見てきたように、片づけることで情熱が呼び覚まされ、人生を新たな喜びで豊かにすることができるのです!

昔の暮らしは懐かしいかもしれませんが、必ずしも今よりよかったわけではありません。しかしながら、そのいい面を守ること、つまり多くの場合、昔の「良識」を忘れないように努めることは大切なことです。別の言い方をすれば、「いい加減に」生きることをしないで、反対に、私たちの先祖のように、ていねいにゆっくりと、仕事と余暇の時間、自分のための時間と他人(家族や友人)のための時間のバランスを保って、生きることが大切なのです。

著=ドミニック・ローホー、翻訳=笹根 由恵/「モノを元に戻す技術 片づいた部屋があれば、大抵のことはうまくいく」(KADOKAWA)

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