指示が一発で通らない!小5息子の聞き取り能力の低さが心配です【小川大介先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第99回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小5の息子の聞き取り力に不安を感じています。私が何か指示しても一発で通ることはなく、何回も大きな声で説明する必要があるような子なのですが、それが学習面では特に英語に大きく関わってきています。

小1からネイティブの先生が教えてくれる英語教室に通っているのですが、先生の後に続いて同じ言葉を言うということが苦手。他の子はなんとなくでも言えているのに、息子はもたもたしてちゃんと言えません。学校でも小4の時に英語が始まったのですが、初めはやってない子よりは理解していたものの、5年になって聞き取りのテストなどが始まると成績は急降下。

本人は「僕、英語が苦手なんだよねー」と言うのですが、英語に限らず話を聞いてそれを自分の中にインプットしてからアウトプットするという、そもそもの聞き取り能力が低いように感じています。これは今後中学などに上がったときに、英語面に関わらず多方面で響いてくるように思うので、どうにか改善させたいのですが、何か良い対処法はありますでしょうか。(Kさん・44歳)

【小川先生の回答】

「聞く」ためには「聞こう」という意志が不可欠

聞き取り能力が低いという以前に、そもそも「聞く」ということがどういうことかわかっていないのではないでしょうか。「音が聞こえる」のと「内容を聞く」のとでは全然意味が違います。「聞く」というのは、「伝えられている内容をつかもう」という意志を持って耳を傾けて初めてできること。息子さんはその「意志を持って」という部分が抜けているような気がします。耳には入っているけど、「聞こう」と思って聞いていないから頭に入らないのです。それこそ1回聞き逃しても何回も言ってもらえるから、「いつかわかればいいや」くらいの感覚で今までやってきたのではないでしょうか。

授業の受け方の上手い下手は「聞く技術」で決まる

英語に限らず勉強のできる子というのは、「聞こう」と思って聞く準備をしてから聞き始めます。今から問題の解説が始まると思ったら、「解説を聞くぞ」という聞き方をするから授業中に覚えられるのです。授業の受け方が上手いか下手かが分かれるポイントは、まさにそこ。ちゃんと「聞く」には、準備や集中力が不可欠なのです。この「聞く技術」は自然と育つものではなく、教わらないとできません。聞ける子というのは、「今から大事なポイントだから聞くんだよ」など、どこかで聞き方というのを意識する機会があったからそのスキルを身につけられたのです。

しかし最近は、この「聞く技術」を習えていない子がとても多い気がします。本来なら小学校1~2年までに学んでおきたいことですが、今の小学校は英語やプログラミングなどカリキュラムが増え過ぎて、先生もそこまで手が回っていないのが実情。その結果、話の聞き方、板書の取り方、集中を継続する力など、学ぶための土台となる基本技術がすっぽり抜けてしまっている子が増えているのです。小学校まではなんとかやれても、中学に上がると口頭での指示が増えるため、「聞く技術」は必須。同じ授業を受けても「聞く技術」のある子とない子とでは大差がついてしまうため、今のうちに聞く練習をしておいたほうがいいでしょう。

口述筆記で「聞く能力」を上げる

「聞く能力」を培ううえで肝となるのは、音として聞いたものを頭の中で漢字を交えた文章に変換できるかどうかです。聞いてるだけでわかる子と、聞いてるだけではわからない子の違いは、この変換能力の差。漢字に変換できるか否かで記憶の残り方も大分違ってきます。ですから、「聞く能力」を上げるには、口述筆記が有効。読み上げられた文章を、漢字を交えて書くという訓練を毎日少しずつ行いましょう。「1回だけしか言わないから、絶対に全部覚えてね」というようにすると、「聞く」ということがいかに集中力が必要で、準備をしなければ聞けないんだということも身に染みてわかるはず。それを意識するだけでも大分変わってきます。

文章の長さはその子のキャパによるため、まずは何文字くらい聞けるのか点検してから行いましょう。もしかしたら8文字とか短い文章しか聞けないかもしれませんね。でも、徐々に伸ばしていけば大丈夫。今まで使っていなかった回路なので、使い始めたら大分変わっていきます。毎日訓練を積み重ねれば、必ず長い文章も聞けるようになるので、焦らず一歩ずつ進めていってください。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『今までやってこなかっただけだから、今からやればいいだけ』
「聞く力」というのはそもそもの能力よりも、技術のほうがよっぽど大きい問題。やり方を正して練習すれば、間違いなく成果は現れます。今まで「聞く」ことを意識せずとも生きながらえてきたほどの能力の持ち主だから、「聞く技術」を身につけたら鬼に金棒。とても優秀になる予感がします。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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