魔法のカードと思ってない⁉電子マネーを勝手に使い込む小5息子【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第100回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小5の息子のお金の使い方についての相談です。塾への交通費のために交通系ICカードを持たせているのですが、それを勝手に使ってしまいます。チャージは1000円ずつにして大金は入れないようにしているものの、2日分もつはずの交通費が、1日でなくなる始末。何に使っているかというと、塾に行く前に本屋で漫画雑誌を買ったり、コンビニで買い食いしたりしているようです。本人はとぼけて言わないのですが、近所のお母さんの目撃証言もあるし、カードの履歴を見れば明白。息子に問いただしたところ、「漫画雑誌の発売日で、早く買わないとなくなっちゃうと思ったから」とのことでした。

息子には、カードに入っているお金は塾に通うための交通費で、好きなものを買えるおこづかいではないこと、欲しいものがあればそれは別途相談するように伝えました。息子は「わかったー!今度からそうする」と言っていたのですが、まだ勝手に使っています。本人には悪いことをしているという自覚があまりないようだったので、お金を稼ぐのはとても大変なことで、お父さんとお母さんが一生懸命働いて稼いだお金を、好き勝手に使うのは非常識だということも話しました。でもイマイチ本人には響いていません。どこか魔法のカードのように思っていて、つい使ってしまうようです。どう伝えたらうまくわかってもらえるのでしょうか?(Sさん・44歳)

【小川先生の回答】

お金を使わないという制御能力を育てる

電子マネーの普及により、こういったお金のトラブルが今とても増えています。トラブル回避のためには、お金について前もって親子で話し合っておくことが大事。お金の価値や稼ぎ方については話されていたようですが、まず取り組みたいことは、「使う、使わないについての制御能力」を育てることです。大人でもそうですよね。浪費による借金が膨らんだ人、遊びのお金欲しさに横領で捕まる人、いずれも「欲しい」が先に来てしまい、制御能力がないことが根本原因。「今はこのお金を使わない」という自分の欲望欲求を制御する力が、お金の教育においてはものすごく重要なのです。

息子さんにしても、「欲しい」という欲求を止められなかったことが一番の問題です。多分頭では「使ってはいけないお金」だということはわかってはいたはず。でも「漫画が売切れちゃいそうだから」という勝手な理屈で簡単に乗り越えてしまっていますよね。そのことについて本人はどんな自覚をしているのかを、まず聞く必要があります。そして、気持ちをコントロールして欲望を制する力を身につけるにはどうすればいいのか、どういう形なら我慢できそうかを相談していきましょう。

形を伴う現金にして、金銭感覚を身につける

カードに入っていると、どうしても簡単に使ってしまうようであれば、1回カードをやめて現金に戻したほうがいいかもしれません。券売機で切符を買うという行為をとることによって、実際にお金に触れそれが減っていくのを実感できます。まだお金を使うことの実感が育っていない未成熟な子どもにとっては、やはりカードだと制御するのが難しいもの。形を伴う現金にすることで、1回立ち止まれる工夫を作るのもひとつの方法です。

現金に換えることは、実は他にもメリットがあります。現金で支払うことで金銭感覚が身につくし、お釣りの計算など暗算も早くなります。実際、今電子マネーを使っている子たちは、算数の力がどんどん低下していることが問題になっています。そういった観点からも、現金にするという方法はとても有効です。

短いスパンからおこづかいを自己管理させる

また、交通費も含めておこづかいにしてしまい、すべてを自己管理させるというのも手。おこづかいに交通費分の金額を上乗せした額を渡し、交通費も買い食いも漫画もすべてその範囲内でやりくりさせるのです。欲しい物、必要なものを、それぞれ何にいくら使っていいかを判断すると共に、欲しいという気持ちを抑える力を育みます。その際、1か月分の金額を一気に渡すのが心配であれば、1週間単位で渡してあげるのがおすすめ。少額で短いスパンから始めたほうが、本人も管理しやすいと思います。

履歴チェックを習慣にして、気持ちに歯止めをかける

電子マネーの利便性が捨てがたい場合は、毎日帰宅後に履歴チェックを習慣にしましょう。後で必ず、何にどう使ったかのチェックが待っていることが意識にあれば、変な使い方も止めやすくなります。その際に大事なことは、「これはあなたを信用してないということではなく、あなた自身のコントロール力がどう育っていくかを一緒に確認するためだよ」という目的を共有すること。今まで、欲望を我慢できなかったのは、「あなた任せにして手伝ってあげなかったママ(パパ)が悪かったね」と、あえて親の側が謝った上で、「これからトレーニングして、コントロールする力を鍛えていこう」と一緒に取り組んでいきましょう。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『素直で親に対して心を開いている子なので大丈夫』
バレる嘘を堂々とつけるというのは、親に対して心を開いているからこそできること。5年生くらいになると、親に対して壁を作ってしまい、あまり内面に触れられたくないという反応が出る子もいますが、息子さんはまだまだ素直で聞く耳を持っています。親子で向き合い取り組んでいけるので、トレーニングの成果も必ず出ますよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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