褒めて育ててきた小1娘。自己肯定感よりプライドが高くなってしまい…【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

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教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第102回のお悩みはこちら。

【お悩み】

4月から小学生になる娘についてなのですが、最近とてもプライドの高さが目につくようになってきました。自己肯定感を育てるために「よくできたね」と適当に褒めて育て過ぎたせいか、自己肯定感よりもプライドのほうが高くなってしまったように感じています。幼稚園でも、少人数のクラスで、しかも早生まれの子が多いこともあり、7月生まれの娘はお姉さん的ポジション。他の子のお世話を任されるなど、「手のかからないよくできた子」みたいな扱いを受けてしまっていて、本人もなんとなく「自分は他よりもよくできている」と思っている節が見受けられます。

このまま小学校に上がり、大人数のクラスに放り込まれると、おそらく娘は「よくできる子」ではなく標準のポジションに落ち着くと思っています。そこで挫折を感じるという経験も必要だとは思うので、それはいいのですが、問題はそのプライドの高さゆえ、自分ができないことに対しては、認めたくないという気持ちが働いてしまっていること。例えば、家でタブレット学習をしていてわからない問題が出てくると、その問題に立ち向かうのではなく、「これはつまらない問題だからやりたくない」と言って、自分ができないことを認めようとせずに放り投げてしまうのです。困難なことを放り投げるのではなく、解決する努力や、立ち向かう気持ちを持ってもらうにはどうしたらいいでしょうか。

ちなみに、以前ジグソーパズルができずに放り投げていたこともありました。その時は私が手伝ってあげて、完成形に近づいた頃「ここからなら1人でできる」と言って完成させることができました。そうやって何度か繰り返しやっていくうちに、最後は1人でパズルを完成させられるようになったという経験はあります。ただ、タブレット学習では、1回間違えても「AじゃないからB」というように、結局全部押せば正解が出てしまうという性質上、わかっていないのに、できたことにして進めてしまっていることも多々あるようです。ひとつひとつの問題にしっかり取り組んでいない様子も悩ましく思っています。(Aさん・35歳)

【小川先生の回答】

放り投げてしまうのはプライドではなく不安感から


娘さんはプライドが高いというよりも、どうしていいかわからないことに対するイラ立ちや、失敗することに対する不安感が強いのだと思います。やり方がわからないため、できそうになくて不安で、遠ざけてしまうのです。このような状況の子には、できるようになった体験をいかに持たせてあげるかが鍵となります。

実際、できなかったジグソーパズルも、一緒にやってやり方や完成までのプロセスを見せてあげたら、自分でもできるようになったという経験を既にお持ちとのこと。つまり、組み立て方や立て直し方さえわかれば、自分できちんとやれる子なのです。勉強も同じようにして、放り投げそうな時は一緒にやってあげればいいと思います。

子どもの成長に合わせて「一緒にやる」の距離感を変えていく


「一緒にやる」にも様々な段階があります。まず最初は一緒に手を動かして手伝ってあげ、「できた」という経験を重ねてあげましょう。そして「途中まで一緒にやったらできるもんね」「そろそろ自分でもできるんじゃない?」というように、少しずつ手伝う範囲を減らしていきます。その際も、完全に離れてしまうのではなく、「やってみてうまくいかなかったら、また呼んでくれたら一緒にやるよ」という安心を渡してあげましょう。そうやって徐々に手を離していき、「見ているだけで大丈夫」という段階まで導いてあげられれば、あとは「見ていなくても大丈夫」の段階にも移行しやすくなります。

答えを出すことが目的ではなく、答えを導き出すプロセスが重要


また、タブレット学習に関してですが、「わかってないけど〇になればOK」と進めてしまうのは、そもそも娘さんが「学ぶ」ということがどういうことか、まだ理解していないからです。記憶から答えを導き出したり、知らないことであれば推理してみたりなど、本人自身の記憶や判断する力を使いながら回答に辿りつくのが、本来の「学び」の姿。そのプロセスこそが大事なのに、そこをすっ飛ばして〇をもらうのが目的になってしまっていますよね。タブレット学習は確かに便利なのですが、そこで示された情報を読んで理解して、そこから答えを導き出すというプロセスがあやふやになりがちでもあります。本人がそこで何を考えていたかなんて、タブレットは見てくれないし、「今のは当て勘だよね?」など指摘もしてはくれませんからね。

タブレットは利用の仕方次第で便利にも不便にもなる


ですから、まだ学びの力が育っていないうちは、人の目の介在というのが不可欠になります。問題のポイントとなる読み方や、考え方、推理の仕方など、いかに回答に辿り着くかというそのプロセスは手伝ってあげましょう。そうやって学びの力が育ってきたところで、タブレットを使って勉強するのが正しい順番であり、タブレットというツールを通して学びの力を育もうとすると、かなり難しいと思います。学びの力を人間の関わりで育てたうえで、それを効率よく問題を解く機会を増やしていくために、タブレットをツールとして使うのはとても便利。この関係性を勘違いして、「タブレットを与えておいたら一人でやってくれる」という発想にいくと、弊害のほうが強くなる危険性があるので気をつけましょう。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『組み立て方さえわかればやる子なので大丈夫』
上から目線のプライドではなく、やり方がわからなくて混乱しているだけ。ちょっと手伝ってあげて組み立て方さえわかれば、ちゃんとやる子です。パズルの例がある通り、できるようになる体験は既に持っているので、勉強に関しても同じようにやればそんなに難しくないと思いますよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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