トイレを座ってしてくれない息子たち。どうしたらキレイに使ってくれるようなる?【小川先生の子育てよろず相談室】

#育児・子育て   

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第105回のお悩みはこちら。

【お悩み】

子どもたちのトイレの使い方に困っています。中1、小4、年少の3人の息子がいるのですが、学校や幼稚園のトイレが立小便器ということもあり、立ってする習慣がついてしまっています。家のトイレでも立ってするため、汚れが本当にひどいことに!!座ってするようお願いしても聞き入れてくれず、「だったら掃除するとか、汚したらちょっと拭くとかしてくれない?」とお願いしても、「掃除は嫌だ」と全く協力してくれません。実際に汚れを見せて、「あなたたちが毎回ちょっと拭いてくれるだけでも、こんなに汚れはたまらないから、汚したところだけでもティッシュで拭くようにしてくれないかな」と言っても、「これは俺じゃない」と、人のせいにする始末です。

今まで幾度となく話しているのですが、特に長男は、その話し合いからもすぐに逃げようとします。引き留めて2~3時間押し問答することもありますが、「嫌だ、やりたくない」の一点張り。とにかくラクな方へ逃げるというか、やりたいことを優先させてしまうところも気になっています。トイレ問題に限らず、片づけなかったり洗濯物を出さなかったりなど、やるべきことをやらないため、毎日バトルしている状態。唯一宿題だけは、中学生になってから、忘れると取りに帰らされて強制的に提出させられるようになったこともあり、自分から進んでやるようにはなりました。でもそれ以外は、やはりやりたいことが最優先。嫌なことや面倒なことから逃げようとする節が見られます。

最近は、男性用トイレも個室が増え、座って用を足される男性も増えているし、汚したものは自分でキレイにするというエチケット的にも、トイレをキレイに使って欲しいと思っています。末っ子はまだ小さいので仕方ないとしても、上の子たちはもうちょっと一緒に使う人たちへ配慮できるようになってもらいたいです。掃除が嫌ならせめて座ってやるというふうに気持ちを持って行けないかと思っているのですが、何度言っても聞き入れてくれず、どうしたものかと悩んでいます。(Iさん・40歳)

【小川先生の回答】

自己防衛に入っている相手には説得は効きにくい


この問題は、「エチケット」や「マナー」という単語で捉えてしまうと、話は前に進みません。息子さんたち(特に長男くん)にとっての一番の課題は、都合の悪いことから目を背けている状況からどう成長させるか。つまり、自分も家族の一員として役割を担う存在なんだということを学び、責任感を育てることです。

時間をかけて話し合うことは、とても大切で良いことですが、長男くんの場合は、理解や納得から入ろうとしても正直難しいと思います。もっと小さい頃であれば、「説得→理解→納得」という方法で通用したかもしれませんが、既にやらない状態で13年育ってきてしまっていますよね。今までずっとやらないできて、「やりたくない」と明確な意思表示をしている相手に対し、いくらエチケットやマナーなどの理屈を説いても、まず聞き入れようとしないでしょう。

また長男くんの場合、「俺じゃない」と否定し、自分を正当化していますよね。おそらく学校などでもトイレ掃除の経験がなく、「わからないから触りたくない」という自己防衛も入っている気がします。自己防衛の状態にある人というのは、都合の悪い話になると逃げてしまうため、説得し納得させるのは難しいもの。ですから、少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、入り口の段階としては強制的にやらせるしかないと思います。そこでバトルになっても、それは必要なことだと心得ましょう。

マストでやるべき基礎訓練なしには成長もない


なぜなら、人間の成長には、「must,can,will」という3段階があり、その土台となるのが「must」=「やらねばならない」というゾーンだからです。やらなかったら強制的にやらせるしかない、言わば基礎訓練のようなもので、それができて初めて「can」=「自分の可能性や自信」を広げるゾーンへと上がることができます。そして「can」が持てるようになって初めて、「will」=「自分の意思」を表明できる段階へと進めるのです。

例えばスポーツも、基礎訓練があるから試合に出られるようになるわけだし、勉強も、計算などの基礎を身につけて初めて問題が解けるようになるのであり。その先に算数オリンピックなどに挑戦したいという思いも湧いてくるのです。このように、何事も「must」から始まります。でも長男くんは、「must」をすっ飛ばして、「can」と「will」だけを欲しがっているように思えます。つまり、人として生きるための基本行動が身についていないということ。ですから、そこは親としてやはり鍛えてあげるべきです。それが本人の成長のために不可欠だという視点を持ち、トイレ掃除についても家族の一員として「must」なことという姿勢で望む方がいいと思います。

できるようになるには「やれた」という事実を作る必要がある


具体的に、どうトイレ掃除をやらせるかですが、家族イベントにしてしまうのがいいと思います。「先週はパパがやったから、今日はあなたたちがやる日です」と宣言し、子どもたちがいくら文句を言ったとしても、「嫌だはなし。家族でいる以上やるんです」と、そこは強制力を働かせましょう。

勉強でも何でも、実行できていないことについては説得が効きにくいものです。とにかくやらせてみて「やれた」という事実を作ってあげることが大事で、やったら次もまたやるようになるというのは、現実としてたくさんあります。長男くんが宿題をやれるようになったのも、最初に先生が強制力を働かせてくれたからですよね。出さざるを得ない状況が続いていくうちに、自ら進んでできるようになったのです。

トイレ掃除もこれと同じ。トイレ掃除という行為自体ができていない以上、まずは掃除ができたという事実を作ることが絶対に必要です。「掃除はやってみたらできるものだ」という成功体験を積ませてあげることで、「わからないからやりたくない」という自己防衛も解けていくと思います。

できるための準備とできた後の振り返りを手伝う


本人は、掃除の仕方もわからないし、トイレの汚れなんて見たくもないから、最初は間違いなく抵抗するでしょう。でも「mustだから、やらないという選択肢は絶対にない」という厳しさを持つこと。そして、「やらない」ではなく「どうであればできそうなのか」を一緒に考えましょう。例えば「汚い、触りたくない」のであれば、手袋を用意してあげたり、「ここまでやってくれたら難しいところはママが手伝うから」というように、本人ができそうなところまで、準備を整えてあげるのです。

そうやって掃除ができたら、実際にやってみてどうだったか、どこが汚れやすいか、キレイにしてみた気分はどうか、どの順番でやると早く終わるかなど、次にやる時のイメージを持てるような振り返りを一緒にしてあげることも大切です。汚れがつきやすい箇所がわかれば、使う度にそこだけ意識的に拭くと掃除もラクになるということにも気づきますよね。また、人が掃除してくれたものだから今は汚しても平気かもしれないけれど、自分で掃除したものは汚すと嫌という心理が働くため、使い方も変わってくるはずです。自分たちで家を良くしていく、清潔さを保つメンバーに長男くんを引き入れることができたら、今度は長男くんが弟たちを導いてくれると思いますよ。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『やってみたらできたという成功体験を持っているから大丈夫』
強制力を働かせることによって宿題ができるようになったように、既に「must,can,will」モデルを実現できています。つまり、やれたらできるようになる子なので、トイレ掃除にしろ何にしろ、まずはやるという事実を作りさえすればできるようになる期待値は高いですよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

この記事に共感したら

Information

▼【動画】「なんで戦争になったの?」と子どもに聞かれたらどう答える?小川大介先生が語る「子どもと戦争の向き合い方」




自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て


『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』

大手進学塾や個別指導塾での経験から、子ども一人ひとりの持ち味を見抜き、強みを生かして短期間で能力を伸ばす独自ノウハウを確立。教育家・小川大介氏が、自分軸を伸ばす子育てのコツを公開した話題の一冊。


■小川先生のTwitter:@Kosodate_Ogawa
■You Tubeチャンネル 小川大介の「見守る子育て研究所」

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

LINEお友だち追加バナー

おすすめ読みもの(PR)