毒親から逃れ、理不尽な状況を乗り越えて…『親ガチャにはずれたけど普通に生きてます』著者・上村秀子さんインタビュー

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 ママって何?気持ち悪い


暴力や過干渉で子どもを支配したり、あるいは子育てを放棄したりして、子どもに悪影響を与える『毒親』。
大人になってもその影響に苦しむ人は少なくありません。自己肯定感が異常に低かったり、劣等感が強かったり。あるいは他人に依存しがちになったり、人間関係をうまく構築できなかったり……。
そんな毒親からのサバイバーが描く実体験のコミックエッセイも、近年増えてきました。

『母は美しかった。それと同時に、恐ろしくもあった──』
美しい母親が暴力を振るう機能不全家族に育った上村秀子さん。そんな中で実父は浮気し、両親は離婚。母親は新しい父と結婚したものの、経済的に苦しく、母親の暴力はひどくなる一方で……。

 バカにしてんの!?


母との葛藤、やがて訪れる母の自死、自らも精神のバランスを崩して転落したところから、友人の助けを得て再生し、今は『普通の生活』を手に入れるまでの経緯を、コミックエッセイ『親ガチャにハズれたけど普通に生きてます』に綴った上村さん。そんな彼女に、今の心境を伺ってみました。

ママって呼んでもいい?

気持ち悪い


──『親ガチャにハズれたけど普通に生きてます』は衝撃的なエピソードも多く、心が痛みました。作中では幼い頃~大人になっても、お母さまとの関係からくる違和感や辛さ寂しさを描かれています。その当時の心境はどのようなものだったのでしょうか。

上村さん「幼い頃から、母親の理不尽な振る舞いには怒りや悲しみを覚えていましたが、『親は子どもを愛すもの』という一般的な固定観念を捨てる事ができませんでした。親が自分につらくあたるのは、愛情の裏返しなのではないかという期待をしていたのだと思います。大人になるにつれて、その期待は諦めに変わっていきました」

 お給料もらったらうちに8万よこしなさい


幼少期は暴力に怯えながら育ち、働き始めてからも給料のほとんどを家にいれるように言われた上村さん。残りわずかのお金をコツコツ貯めて、どうにか家を出ることに成功しました。しばらくは円満な距離を保っていたものの、あるきっかけで母と絶縁してしまいます。そしてある日、妹からの電話で母親の自死を知ることになりました……。


私がメールを返さなかったから


──壮絶な現実ですよね。ここから前を向くことができたのは、どのような過程があったのでしょうか。

上村さん「辛い時にどんなにあがいても、何かに助けを求めても、瞬時に暗い気持ちを消すことはできないと思っています。現在、この本を描くにあたって、当時の事を思い出し、寄り添ってくれた友人たちの優しさを、初めて心から感じる事が出来ていると思うので、いろんな過程があって前を向くことができたのだとは思いますが、やはり立ち直るためには休息の時間が必要だと思っています」

 本当は誰でも良かった

 「幸せに見える人間」になりたかった


──お母様の死後、努力して名のある企業に転職し、年下の恋人も出来て、都内にマンションも購入。そんな日々を送っていた時も決して幸せだったわけではなく、『「幸せにみえる人間」になりたかった』と当時の心境を作品中で綴っています。お母さまの影が色濃く残るシーンですが、当時の心境と現在の想いを教えてください。

上村さん「親からの虐待の末に、母親を自死で失った自分が、不幸な人間だと思われたくなかったし、思いたくありませんでした。機能不全家庭で育った自分が、幸せな家庭に育った人たちより幸せになることで、妬ましく思う気持ちを打ち消したかったのだと思います。
今は、『他人に見せるための幸せ』よりも、自分自身がいかに楽しく人生を過ごせるかを考えています」


 とりあえずでいいから


──ご友人の尽力を得て多くのことを乗り越え、最後は前向きな上村さんが描かれることで一読者として勇気をもらいました。つらい状況から前を向くのは大変なことだと思います。ご自身の中で心境の変化やきっかけなどがあれば教えてください。また前を向くためのアドバイスがあればぜひ。

上村さん「前を向くために必要なのは、やはり『休息』なのかな、と思います。心が深く傷ついている時に、それを瞬時に治す手立てはないと思っているので、辛い時はぜひ、辛いことから逃げて欲しいと思います。他人からどう見えたとしても、自分がふがいない人間だと思っても、全部許して休んで頂きたいです。人生は恐ろしいほど長いので、そんな休息は長い目でみたら一瞬の事ですから」

 私の心は少しずつ回復していった


──親子関係に悩みながら大人になった方など、いろいろな皆さまが手に取られると思います。メッセージをお願いいたします。

上村さん「無責任な言い方かもしれませんが、どんな親から生まれたとしても、生まれてしまったものは仕方ないので、全部諦めてしまった方が楽になれるのかな、と思います。親と子どもはそれぞれ別の人間ですから。
他人は自分の期待通りに動いてくれませんが、自分は自分の幸せのために動くことができます。
本書には、周囲にとらわれず、自分自身の幸せのために生きて欲しいというメッセージをこめたつもりです。親との関係に悩んでいる方々の一助になればと思っています」

【レタスクラブ編集部】

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