膨大な遺品整理にため息…「物をためこんだ親」の死後問題【人生で一番素敵な片づけ】(2)

#くらし   
人生のエンディングに向けて真っ先に手をつけていただきたい「部屋の片づけ(持ち物の整理)」

『人生で一番素敵な片づけ』2話【全4話】


「もう何年も手に取っていないけど、思い出の物だから捨てられない…」片づけをしていて、そんな気持ちになる方は多いでしょう。しかし、何もしなければ物は増えていく一方です。片づけをしてスッキリきれいな空間にするのは、日々の暮らしやすさのためはもちろんのこと、急な病気など自分の身に何かあった時に家族の負担を減らすことにもつながります。

それでは、セカンドライフ世代の片づけに長年向き合ってきた、小野めぐみさんに手元に残すべき物の基準や考え方が明確にわかる、「人生で一番素敵な片づけ」メソッドを教えてもらいましょう。

“自分の持ち物は、いつ誰に見られてもいいように”自分のためにも、家族のためにも、片づけを始めてみませんか?

※本記事は小野めぐみ著の書籍『人生で一番素敵な片づけ』から一部抜粋・編集しました


なぜ先に「片づけ」なの?「誰が大切か」「何が大切か」ハッキリ見えるから!

「人生のエンディングに向けてやっておくほうがいいこと」として、いくつ思い浮かびますか?その範囲は多岐にわたります。

・部屋の片づけ(持ち物の整理)
・相続対策
・お墓問題の検討
・エンディングノートの記載
・遺言書作成
・終(つい)の住処(すみか)選び

などなど……課題は山積み。
そして、この中でぜひ、真っ先に手をつけていただきたいと強くおすすめするのが「人生で一番素敵な片づけ」による、「部屋の片づけ(持ち物の整理)」です。

部屋を片づけないうちに、いきなりエンディングノートを書きはじめたり、遺言書を作成したりしたら、もしかしたらやり直すことになるかもしれず、もったいないのです。
なぜでしょうか。
それは、ため込んでいた日用品やたくさんの思い出の品を、「そのまま持っておく物」と「お別れする物」に選別する過程で、自分の人生において何が大切なのか、誰が本当に大切な存在なのか、ハッキリ見えてくるからです。
「これからどう生きることが、自分にとって幸せなのか」を教えてくれるヒントがたくさん見つかり、そうした自分の人生に新たな意味を見出したあとは、遺言書やお墓、終の棲家に対する考え方も、全然違うものに変わります。

私の場合は、もし自分が死んだら、夫の家のお墓ではなく大好きな両親が眠る実家のお墓に入れてほしいと安易に思っていましたが、あらためました。
将来、実家の墓守(はかもり)をすることになる甥っ子に、余計な負担をかけるのは本意ではないと気がついたからです。

また、60代後半の知人は、なんと「遺産配分を変えよう!」と思ったとか。しかも、頭がスッキリ整理されて解決しておくべきポイントが見えたおかげで、それまで面倒に感じていた手続きも、前向きな気持ちで進められたそうです。

50代からは「立つ鳥跡を濁さず」の精神がいい

50代以上の女性が集まると、高齢になった親の話題になり、笑いを交えながらも苦労話で盛りあがることが増えてきます。
若かったころには想像もできなかった、老いた親との付き合いは、キレイごととはいかず、なかなか大変です。すでに親が他界した人も、そうでない人も、共感し合い、励まし合い、ストレスを解消します。私の場合、この友人たちとのおしゃべりの時間がなかったら、親子の関係は悪くなっていたと思っています。

ほとんどの人は、どんなに大変でも、老いや病で弱っていく親の面倒を見ることは「子の務め」だと考えています。ところが、「実家の片づけ」の話となると、子の務めだからと納得するよりも、別の思い──そう、怒りが湧いてくるのです。
「どうして元気なうちに、ある程度、片づけておいてくれなかったのか?」
「なんで、あんなに物をため込んでいたのか?」
普段から片づけておいてくれれば、何度も大掃除(そうじ)に足を運ばずにすんだし、遺品整理で膨大な時間を費やすことも、親の物を大量に捨てるという心の重荷を背負うこともなかった……そんな不満が頭をもたげてくるのです。

親世代に悪気があったわけではないことも十分に承知しています。もしかしたら持ち物の整理をしようと考えたころに急に老いが進んで、やりたくてもできなかったのかもしれません。でもどんな事情があるにせよ、残された立場としては怒りが残ります。
もし、私たちが自分の持ち物を片づけずに旅立ってしまったら、まわりにまったく同じ思いをさせることになるでしょう。

若くして突然の事故や病などで無念の死を遂げる人も多いのに、この年まで生きてこられたこと自体が、ありがたく幸せなことです。そして、多くの人は、家族関係、子育て、仕事……いろいろな悩みを抱え、ときには「ああ、生きるって大変……」と涙しながらも頑張って生きて今にたどり着いたのではないでしょうか。
せっかくここまで頑張ってきたのに、自分の持ち物を片づけなかったばかりに、次の世代から「まったくもう!」なんて疎(うと)ましく思われたら、あまりにも残念すぎます。それだけは避けたい!

自分の持ち物を片づけなかったばかりに、次の世代から疎ましく思われたら、あまりにも残念すぎます


「親の持ち物の多さ」に悩まされた初めての世代だからこそ

戦前と戦後では、教育の在り方、男女の意識の差、親との距離感も大きく違います。
親世代は物がない時代に育っているので、物に対する執着も大きく違います。
物は大切にする(それはいいことではありますが)、簡単に捨てては罰が当たる。そんな意識が根深くあります。
私自身、親から何度「もったいない」という言葉を聞いたことか……。
二世代の間でここまで価値観が大きく違うのは、日本の歴史上「初」かもしれません。
私たちは、親の持ち物を整理する大変さを体験した、日本で初めての世代ということになります。
共働き世帯が増える一方の現代の日本では、親のことに時間を使う余裕がなかなかなく、次の世代が私たちのような年代になるころに、また同じような問題が繰り返されることが目に見えています。
だからこそ、私たち世代で「持ち物問題」に終止符を打ちたい、次の世代に同じ思いをさせたくない、と強く思うのです。
自分の持ち物は自分で片づけること。それは大人の責務ではないでしょうか。
「立つ鳥跡(あと)を濁(にご)さず」の精神で、スッキリした気持ちで人生を離陸していけたらいいですね。

著=小野めぐみ/『人生で一番素敵な片づけ』(三笠書房)

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