学校の授業は集中できず、塾からも撤退…。勉強のモチベーションを上げるには?【小川先生の子育てよろず相談室】

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学校の授業は集中できず、塾からも撤退…。勉強のモチベーションを上げるには?【小川先生の子育てよろず相談室】

「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」子育ての悩みは尽きません。でもそのお悩みも、教育のプロの目を通すと、お子さんの個性や魅力を再発見するきっかけになるかも!?
教育家の小川大介先生が、子育てに関する悩みに対してアドバイス。回答文最後の「大丈夫!フレーズ」が、頑張っているあなたの心をスーッとラクにしてくれますよ。連載第112 回のお悩みはこちら。

【お悩み】

小4の息子についての相談です。中学受験をしようかと塾に入ってみたのですが、親子共々つらくて早々に撤退してしまいました。3年生の時にお試しで受けた冬期講習の授業はとても面白くて、本人の希望で通い始めたのですが、実際に塾に入ってみたら上位クラスには行けず、先生の授業のレベルも面白いと思えなかったようです。

もともと息子は、人の話を聞くのが苦手なタイプで、学校で先生の授業を聞くのも負担に感じていたくらいでした。それが、学校から疲れて帰って来て、また夜に塾であまり面白いと思えないような授業を聞き続けるというのが、本人にとっては相当しんどかったようです。また、塾が遠方で通うのも大変、家族と一緒に夕飯も食べられない、毎週末にテストがあるという状況に、親子共々疲弊してしまったというのもあります。

「受験についてはもう一度考えよう」ということで、早めに脱退しましたが、幼稚園の頃から続けている通信教育は、本人もやりたいということでやり続けています。勉強するにも何か目標があったほうがいいかと思い、本人の了解を得て算数検定に挑戦することにしました。でも、過去問をやらせようとしても、ものすごく嫌がって全然やってくれません。勉強するという気持ちが全然起きないようです。

学校でも同じ感じで、「授業にあまり集中できていないようで、ずっと消しゴムで遊んでいます」と先日先生から連絡がありました。勉強のモチベーションというか、がんばる目標みたいなものができればいいと思うのですが、どのようにしたらいいでしょう。(Nさん・41歳)

【小川先生の回答】

学習サイクルのどこに問題があるのか、つまづきの原因を特定する


なぜ勉強のモチベーションが下がってしまったのか、その根本原因は本人に合った勉強の仕方を見つけられていないところにあります。勉強には、授業を受ける、授業の内容を復習する、復習した内容をふまえて宿題で問題トレーニングする、わからなかった問題については調べたり、元に戻ったりするというサイクルがあります。そしてその学習がどのくらい身についているのかを確認するのがテストです。テストでうまくいかなかったところは再度検証し、次の勉強に活かしていくというこの学習サイクルを繰り返していくことで、学力は伸びていきます。今の息子さんは、このサイクルのどこかでつまずいており、うまく回っていない状況。各ステップにおいて、どこがうまくいっていないのかを検証し、本人に合った勉強の仕方を早急に見つけてあげる必要があります。

まずは、授業を受ける際、本人に何が起こっているのかを検証しましょう。例えば、黒板を見ている間に先生の話が素通りするのか、話を聞こうと意識すると他のことができなくなるのか、気分があちこちに飛んでしまい途中で話がわからなくなって諦めてしまうのかなど、つまずきの原因がどこにあるのかを正確に把握することが大切です。

YouTubeなどで一緒に授業を受けてみる


本人にヒアリングしてもよくわからないようであれば、YouTubeの授業などを一緒に受けてみるのもおすすめ。本人が授業を受ける様子を、実際に横で見ることで、気づくこともあるはずです。また、同じ授業を受けて、それぞれにノートを取り、できあがったノートを見比べてみることで、発見できることもあると思います。そうやって本人がどう授業を受けているのかを把握したうえで、本人に合ったノートの取り方や、どうすればうまく聞けるようになるのかなどを、大人の知恵を使って、やり方を助けてあげましょう。

復習についても同様で、何をやったのか、何がポイントなのか、そのポイントを意識したらどういうことができるようになるのかというのを細かく声かけしていきます。そして、本人自身がどこまでわかって、どこまでできるようになっているかを可視化してあげましょう。すると、本人はわかった気分でいたけど、実は用語をはっきり覚えていないなど、問題点も浮かび上がってくると思うので、その対処法を一緒に考えていきます。例えば「次からは授業の時に、用語をノートに書き写したり、テキストに丸をつけたり、見直ししやすい工夫をしておこうね」など、復習を手伝うことで授業の受け方を修正していくのです。

そのようにして勉強の一個一個について、丁寧に何が起きているのかを検証したうえで、本人が実行可能な手を探してあげる必要があります。大変に思われるかもしれませんが、本来勉強というのはそのくらいのレベルで見てあげないといけないもの。しかし、それを知っている親御さんはほとんどいないため、息子さんのように勉強の仕方がわからずに困っているお子さんが実は多いのです。勉強の仕方を助けてもらうことなく、塾だけポーンと入れたところで、うまくいかないのは当たり前。うまくいかなかった結果、本人としても「勉強というもの自体がわからない」と大きく括ってしまっているのが現状です。親から見ると、「うちの子は勉強が嫌いだから」とか、「目標がないからやってない」と思われるかもしれませんが、そうではなく、やり方がわからないまま失敗の経験だけさせられたから遠ざかっているだけ。そこを理解しないと本質的な問題解決にはなりません。

「やり方がわかればできる」という体験を多く積ませてあげる


具体的な勉強の手伝い方については、親も勉強する必要があります。子ども自身が自分で勉強ができるようになるためのノウハウ本などを探して、どの方法が合うのかいろいろ試してみるとよいでしょう。拙著『5歳からはじめる最高の中学受験』(青春出版社)にも詳しく書いてありますので、よろしかったら参考にしてください。この本には、幼少期からの学びの階段を示しているため、教えそびれたまま高学年になってしまった方にとっても、使えることがたくさん見つかると思います。

親の手助けとしては、どこでつまづいているかを特定し、それを意識した新たな望ましい行動を試して、本人を「わかった」というところまで導いてあげること。やり方がわかればできるんだという体験をいかにたくさん渡すかが、ここからの勝負です。勉強の仕方というのは一生もの。中学受験するしないに関わらず、今のうちに育んでおいたほうが絶対にいいのでがんばってください。

小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『勉強の仕組みさえわかれば伸びやすい子なので大丈夫』
通信教育はやるということは、パターン化された取り組み自体はやってもいいと思っているということ。勉強自体を嫌がってはいるわけではないので、本人が取り組みやすい勉強の仕組みさえわかれば、自然とがんばれるようになりますよ。

回答者Profile

小川大介先生
小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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