5.1万人が「いいね」した話題作。「わたしたちは結婚しないと生きていけないの?」と10歳の少女が思った瞬間

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 『女の子がいる場所は』より

サウジアラビアに暮らす10歳の女の子の日常を描き、Twitterで話題になった、漫画家・やまじえびね(@ebine_comix)さんの作品をご存知ですか?
「泣きました」「考えさせられる」「なんとも言えない…」「すごく良い作品」など多数のコメントが寄せられ、この投稿には現在5.1万を超える「いいね」がついています。

ツイートの作品は、モロッコやインドなど世界各国の女の子たちの日常を描いた短編集「女の子がいる場所は」に収録されたもの。国も宗教も文化も違うそれぞれの国で、「女の子だから」という男女格差に直面しはじめた10歳の女の子たちの姿を描いています。Twitterに投稿された作品が話題となり、書籍は発売3日にして重版が決まったということです。

Twitterで話題になった「サウジアラビア編」のあらすじをご紹介しましょう。

 『女の子がいる場所は』より

サウジアラビアに暮らす少女・サルマは、週末しか家に帰らない父親と、母親の三人暮らし。ミサンガ作りが得意なサルマは、父が「遠い親戚」と紹介してくれた女性・アミーラの元へ、ミサンガ作りを習いにいくようになりました。
車の運転ができて、留学経験もある聡明なアミーラは、ミサンガ作りの名人。ほどなく、サルマはアミーラが「パパの第一夫人」であり、ママが「パパの第二夫人」であることに気づきます。

  『女の子がいる場所は』より

サウジアラビアは一夫多妻制。結婚は親同士が決めるのが当たり前、結婚式まで顔を合わせないことも多く、花婿が花嫁を気に入らなかったら、式の当日に結婚がダメになることも……。

同級生ファイの姉の結婚や、アミーラと母がそれぞれ父と結婚した時の話を聞くうち、サルマは「わたしたちは結婚しないと生きていけないの?」「結婚する前に外の世界を見てみたい」という気持ちを抱くようになります…。

  『女の子がいる場所は』より

  『女の子がいる場所は』より

この作品について、作者のやまじえびねさんと、編集担当の青木さんにお話を伺いました。

──「世界各国の少女たちの日常でのジェンダーギャップ」をテーマにしようと思ったきっかけを教えて下さい。

やまじえびねさん ちょうど担当編集者が交代したところで、わたしも新たな気持ちで取り組もうと、 新担当にアイデアを出してもらいました。ふたつのうちのひとつが今回選んだ「女性差別を受けている海外の少女たちの日常を描く」というお題です。選ばなかった方も新鮮で面白いものでしたが、こちらの方がよりわたし向きだと感じました。

──編集ご担当の青木さんは、なぜこのテーマを提案されたのでしょう?

編集担当・青木さん やまじさんに合うテーマを探して、自分の本棚を端から眺めていたところ、かつて女性が自転車に乗ることを禁じられていたサウジアラビアが舞台の映画『少女は自転車にのって』のDVDが目に留まりました。"女の子だから"という理由で自由を奪われている少女たちを描くことは、これまでに多くの作品で「生きづらさを抱えた女性」を描き続けてきた著者に合うのではないかと思い、提案しました。 
  

 『女の子がいる場所は』より

──女性差別やジェンダーギャップについての各国の状況を描くのに、共通して「10歳の女の子」を主人公に選んだ理由をお聞かせいただけますか?
 
やまじえびねさん 進路や恋愛や趣味など、自分のことで忙しくなる年齢ではなく、まだ子供っぽくて、自分の世界を固めていく少し手前にいるけれど、大人の世界を理解できなくはない年頃がよいと思いました。好奇心があり、見たもの聞いたものをまっさらな気持ちで受け止め「それってどういうこと?」と問うことができる主人公が必要でした。

 『女の子がいる場所は』より

──今回題材にした国以外にも、様々な国の資料に目を通されたようですが、資料を調べていく中で感じたことなどがあれば教えて下さい。
 
やまじえびねさん 資料をあたっている時は「こんなひどい国があるのか」「こんなことがまかり通っているのか」と驚いたり憤ったりしましたが、作品を描き出すと「日本だっていろいろあるじゃないか。根っこは全部いっしょだぞ」「すべてよそ事じゃないんだ」という思いが湧きました。

     *    *    *

  『女の子がいる場所は』より


ほんの100年前までは女性に参政権がない国も数多くありました。程度の差はあれ、ジェンダーギャップは多くの国に様々な形で存在します。このやまじえびねさんの作品集『女の子がいる場所は』は、世界の少女たちに優しく寄り添いながら、それぞれの感じる戸惑いや困惑を丁寧に描いていきます。

サウジアラビアから始まってモロッコ、インド、アフガニスタンの少女たちの日常を描き、日本の少女も登場します。そこにあるのは誰もが感じたことのある「女の子なんだから」という抑圧について描かれたエピソード。私たちのすぐ身近にもある根深いジェンダーギャップについて、考えさせられる物語です。


【レタスクラブ編集部E】

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