76歳YouTuber、「田舎そば川原」流の”がんばりすぎない”料理道

■世間さまのおかげという気持ちを忘れずに
「人間はね、がんばりすぎは続かないんです。だから、私はよく弱音を吐くんです。
すると、周りの人たちから、”もう死んでしまうと言うて、死なんのがあんたやな”と言われるんです。”つらい、つらい”と言いながら、笑っている。みんなに私という人間を見抜かれているんですね」
料理研究歴40年以上、チャンネル登録者数47万人越え(2022年8月現在)を誇る76歳の人気YouTuber、川原恵美子さん。2020年8月にスタートした彼女のチャンネル「田舎そば川原」は、「そうめんゆでるな!」「激ウマ煮卵」などの動画が次々とバズり、大きな話題を呼びました。以降、NHK「あさイチ」やTBS「週刊さんまとマツコ」にも複数回出演。香川県まんのう町にあるお店には、今では日本全国からファンが訪れます。「メールでも電話でもうれしい言葉をかけられて、毎日が夢の中にいるよう」と語ります。
そんな恵美子さんのモットーは「世間さまのおかげ」という気持ちを持ち続けること。
「つらいときはつらいと言うたらいいんです。私にも晩ごはんをつくりたくないという日があります。そんな日はつくりません! 迷わずお茶漬け! 梅干しとお漬物があれば十分おいしく食べられますから。人間は本音と建前があるけど、私生活に建前なんていりません。いい子になんてならなくていい。間違ってはいけないと思うのをやめて、いっぱい間違えたら、不思議と周りの人が救ってくれます。世間さまのおかげで今日がある。その気持ちを忘れないように暮らしています」
■身近な人たちの笑顔が料理の原動力
昭和21年生まれ。数あるレシピの中でも、一番思い入れの強い料理は「卵焼き」。終戦直後、家では苦しい家計を支えるため、縁の下で鶏を飼っていました。その貴重な卵を親の留守中に1つだけ盗んでは、黄金色になるように焼き、それを4、5切れに分けて、幼い弟たちの口に運んでやるのが「ロマンでした」と語る恵美子さん。「親に叱られるということを考えたら、なにもできない。とはいえ、できることなら叱られたくはないでしょう。だから、卵焼きをつくったあとは、その痕跡が残らないように必死で隠していました。でも、すぐにバレるんです。だって、匂いが家じゅうに充満しているんですから!」と笑います。「見つかったときはとても叱られました。親だって、命をつなぐために貴重な卵を売っていたのですから当然です。でも、私は懲りませんでした。弟たちが湯気の立った黄金色の卵焼きを頬張ってうれしそうにしているのを見ると、”やったぁ”と喜んでいました」
身近な人たちの喜ぶ笑顔。それが当時から変わることのない恵美子さんの料理への原動力です。

■生きる喜びは自分でつくる
21歳で結婚し、2人の息子を出産。10人の大家族を支えるにあたり、決して家計も楽ではありませんでした。学校の先生が家庭訪問に来る際、よそのお宅はケーキやお茶菓子を出していても、恵美子さん宅では経済的な事情からそれが叶わず、その代わりに長男と次男の先生にそれぞれ1本ずつ、巻き寿司をつくってもてなすことにしていました。巻きすに海苔を置き、その上に酢飯を広げて、色とりどりの具を乗せたら、しっかりと巻いていきます。形を整えてから巻きすを外して、両端の具が飛び出した部分を切っては、その様子をおもしろそうに眺めていた子どもたちの口にポイッと放り込んであげていました。そんなこととはつゆ知らず、先生が切り分けた巻き寿司をいくつか口に運んだのち、「一緒に食べる?」と息子たちに聞くと、「クズもろうて食べた!」と元気よく答えるものだから、先生も家族も揃って大笑い。つらい状況をつらいと捉えず、いかにその状況を楽しむか。生きる喜びは自分でつくる。それは息子たちの教育のためにも良かったと振り返ります。
「精一杯しても追いつかないかもしれないけど、せめてここまではしようと決めてやってみる。それが生きがいだったんです」と恵美子さん。料理のレシピをコツコツと残したのも、一番は子どもたちのため。「地位も名誉も財産もないですけど、日常から生まれたレシピには、わたしの人生の”精一杯”が詰まっていますから」
■毎日の献立は人を頼る
献立を考えるのがしんどいときは、つくってくれた人やそれを分けてくれた人の顔を思い浮かべます。
「私の場合は、自分で田畑を耕して、ご近所さんから野菜をもらうことが多いので、人が与えてくれたという気持ちでいると、そもそも捨てるのが嫌なんです。そこでじっと素材と向き合っていると、そのうち素材がモノを言うんですよ(笑)」
半分は塩もみにして、半分はサラダにしようとか、素材を眺めていると、次から次にアイデアが湧いてくるそう。中でもお気に入りのアイデアの出し方が、少ししかないものをたくさんのものと混ぜること。冷蔵庫を開けては混ぜられるものを探して、みんなで分け合えるメニューを考えます。
また、誰かが野菜を分けてくれたときは「これはどうするん?」と必ず聞きます。そうすることで日々のレパートリーはどんどん増えていくのだとか。そうした会話を大切にするのはYouTubeでも同じこと。「恵美子さんはこうしてましたけど、私はこうしました」という声を聞くのは大歓迎。料理は芸術品だからこそ、自由でいい。「あまり深く考えないほうがいいと思います。深く考えると固まるでしょ、人間」

プロフィール
川原 恵美子
1946年生まれ。香川県まんのう町でそば店を営み15年。独自に料理研究を40年以上続ける著者のYouTubeチャンネル「田舎そば川原」は、「そうめん ゆでるな!」で注目を浴び、またたくまに登録者数が47万人越え(2022年8月現在)。目からウロコの料理の知恵で、旬の食材を生かしておいしい漬物やおかずが家庭でつくれると大人気に。地元の生産者との絆や、がんばり続けている生き方や人柄に憧れる人も多い。
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