気に入った物件は今購入すべき?不動産のプロに聞く、2022年後半以降の不動産・住宅市況

#くらし   


長引くコロナ禍の中で、住宅をいつ購入すればよいか、悩んでいる人も多いのでは?
マイホームを買うならいつが最適なのか、エリアはどこが人気なのか。
2022年以降の最新の住宅市場の状況を、不動産コンサルタントの畑中学氏に寄稿いただき、詳しく解説していただきました。


コロナにより街選びは本当に変わったのか?

最近の不動産・住宅市況の中でも顕著なのが、不動産価格の上昇傾向。それに消費者が追いついていけなくなってきている状況がうかがえる。たとえば以前は5000万円台後半くらいだった杉並区内の新築一戸建て住宅ならば、現在は6000万円台後半から7000万円ほどになっている。

理由は複数あるが、大きいのはコロナ禍で人の移動が少なくなり、売却物件の供給が減少したこと。そのため土地の仕入れ価格が高くなり、新築のみならず中古物件の価格も上昇。一方で、住まいを見直す傾向が強くなっていることで需要は増加しており、結果、数少ない物件に人気が集まり、価格もさらに上昇しているというわけだ。

もう一つ、大きな影響をあたえているのが建材費の上昇。2021年のアメリカの住宅建設需要などを起因とする、世界的な建築用木材価格の高騰「ウッドショック」の影響はいまだに大きい。さらに、もともとコロナ禍で滞り気味だった物流が、ロシア軍のウクライナ侵攻によってさらに先行き不透明な状況になってしまったこと。ちなみに建材費の高騰や不透明な物流は、住宅の建築に要する時間にも関係してくると思われる。今までは一戸建てなら着工から入居まで、半年くらいを見積もっていたかもしれないが、もう少し余裕をもって検討するのがいいだろう。

コロナ禍でテレワークの普及など、働き方に変化が起きたことで、住まいを首都圏の郊外や地方に移してもいいのでは、という気運も生まれている。しかし、緊急事態宣言が解除され、感染対策をしつつ徐々に日常を取り戻していく、という現在の状況になってみるとその動きは限定的で、住まいを郊外や地方に求める層が極端に増えているわけではない。結果、人気のある首都圏の住宅街は従来とそれほど変わっておらず、価格も下がるどころか上がっている。特に都心に近いJR中央線沿線の武蔵小金井あたりまでのエリアは顕著。だからといって埼玉、千葉、神奈川の郊外に目が行くこともなく、需要があるのは川口や船橋、横浜など都心に近いエリアだ。さらに円安が進んでいることで、今後は都心のタワーマンションなどは海外投資家の購入意欲がより一層高まることも予想される。

こうした状況を背景に、現在の首都圏の住宅市場は、マンション、一戸建てを問わず、良い物件では争奪戦が非常に激しい。少しでも良い要素があれば、今買わないと次にいつ出るかがわからない。待てる人はいいが、購入の必要がある人は即決した方がいい。「少し待てば安い物件が出てくるか?」と問われても、そんな空気は感じられず、しばらくは可能性が低いと言わざるをえない印象というのが正直なところだ。

間取りの好みも多様化


立地や間取りに求めるものも住む人によって多様化

先ほどテレワークの普及などによる郊外・地方移住の動きは限定的、と書いたが、求められる物件には明確な変化が出てきている。それは利便性と広さだろう。コロナ禍以前は駅徒歩5分以内など、駅近物件の強さが目立っており、通勤・通学がしやすい、商業施設が豊富など、駅前の利便性が評価されていた。それがコロナ禍以降、「駅から多少離れてもいいから、広い住宅がいい」という要望が増えてきている。コロナ禍以降、ステイホーム、テレワークの普及などを背景に自宅で過ごす時間が増えたのは確か。人混みを避けたいという意識も広がった。そこで駅から少し離れた閑静な場所の広い家で、より快適に過ごしたいという欲求が出てきたのだと思われる。

その影響は住宅の間取り・プランにも多少、表れてきており、以前は区切りと個室の少ない広いワンルームのようなプランが人気だったが、最近は細かく空間を区切った個室が多いプランも、以前より増えてきている印象。家族がくつろぐ広いLDKが相変わらず人気がある一方、それに加えてコロナ禍以降、仕事部屋など個室のニーズも上がった。それも「駅近よりも広さ」を求める傾向に反映されている。買い物という面でも宅配ビジネスの普及と拡大で、それほど不便を感じなくなったことも影響しているのだろう。

だからといって駅近物件の人気が急落したわけではない。どちらかといえば徒歩10分、15分の物件が、駅からの距離によって敬遠されるケースが減った、という感覚。住宅の好みや暮らし方の多様化を表しているともいえる。その意味では、コロナ禍が収束したとしても、こうした好みの変化は定着する可能性が高い。見方を変えると、現在の物件の品薄状況を考えれば、駅から多少遠い物件の競争率は激しくなっている、ともいえる。駅から遠い物件だからといって価格的なメリットは以前よりなくなっており、やはり「良い物件の決断は急げ」という点では同じだろう。

住宅ローンについては、長期固定金利はしばらく上がっていくと思われる。長期固定金利の指標となる10年物国債利回りが今年に入って上昇。それに合わせるように上昇している。世の中の不安感が強まると上がるものなので、コロナ禍やウクライナ侵攻など、先行きが見えない事象が多い今は致し方ない状況だ。

変動金利については、正直、読めない部分が多い。海外では金利を上げているケースも見受けられるし、市場が不安定な今は上がる可能性もある。以前は変動金利もそうそう上がるケースはないと見られていたが、これから変動金利で住宅ローンを組む人は、少し余裕をもって資金計画を立てておいた方がいいだろう。

住宅ローン金利の推移


住宅購入は迷うよりも早めの決断を!

以上のような状況をまとめると、今、家が欲しいという人は、条件に見合う物件が見つかったら、なるべく早めに購入の決断をしたほうがいいと思う。「もっといい物件が出るかも」と考えても、好みにピッリ合った物件が次々と出るような市場ではないし、待っている間にさらに価格や金利が上がるケースもあり得る。私の顧客で好立地にこだわって10年近く物件を探しているうちに、同じエリアの価格相場が1000万円近く上がり、予算オーバーになってしまった人もいるくらいだ。

そう考えると、どうしても今、家が欲しいという人は、探すエリアの範囲を広げてみてもよいかもしれない。オフィスや学校の事情が絡むケースもあるので一概には言えないが、自分にとって、現在の希望エリアは本当に絶対条件なのか? よく考え直してみたら他のエリアでもいいのでは、という人もいるのではないかと思う。場合によっては子どもの学区だって変える選択もゼロではないだろう。一度、家族全員でよく話し合ってみてはいかがだろうか?

●畑中 学(不動産コンサルタント)
武蔵野不動産相談室株式会社 代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士などの資格も持つ。「2時間で丸わかり 不動産の基本を学ぶ」、「家を売る人・買う人の手続きがわかる本」(共にかんき出版)など著書多数。

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