「発泡スチロールで遊びたいけど…やめとく」子どもの探究心を削いでしまう大人のひと言/大人になってもできないことだらけです(2)

風がなくてもいいんじゃないかな

保育にも子育てにも方法論はある。僕の描いている漫画もその一つだ。けれど、子育てに絶対の形はない。わからないことだらけで、何度も間違えては立ち止まって、それでも悩むことをやめずに学び直して。

唯一正解があるとすれば、それをずっと繰り返していくことだけなんだろうと思う。

前に進んでいると思えたら安心できるけれど、育ちとは前に進むことではない。できなくなることも、サボることを覚えることも、立派な育ちなんだよね。

子どもたちは、僕たちの気づかぬうちに見えないところで育っていく。長い目で見守っていけたらいいなと思う。


誰かに喜んでもらえると、また喜んでほしくてそれをなぞりたくなる。

あるエピソードをWEBに掲載した際、想像以上の反響をいただいた。思いがけない反響に驚き、喜んだ。けれど同時に今回の筆が止まった。「ここがいいね」と言われるとそれを意識してしまう。期待に応えたくて同じようなものを書こうとしてしまっている。いかんいかん、力んではパフォーマンスが下がるのだ、「読めたらええねん」と自分に言い聞かせて書いた。
 
正解を見つけてそれを目指して書こうとしなくたっていい。僕が今思っていることを、そのときの僕の言葉で綴ればいいのだと。ご飯を食べて排泄して寝て起きて、好きな映画を観て仕事してうまい酒を飲んで、そんな普段の生活のように肩の力を抜いて。

余談ですが

僕は髪の毛が少ない。

イラストにもしているようにキャラとして定着しているのでコンプレックスではないんだけれど、外で走ったりすると少ない髪が風で乱れるので、さすがにそれは恥ずかしかったりする。

そんな中、先日初めてジムに行ってランニングマシンに乗って気づいたんだけど、髪、乱れないのね。そう、ランニングマシンの上では向かい風がないの。なんて素晴らしいんだろうって。

なにかを目指すとき、逆境に立ち向かえという文脈で、向かい風も追い風にしよう、と励まされることがあるけれど、風がなくてもいいんじゃないかな。どこかに向かうためではなく、どこかにたどり着くためではなく、たんたんと流れる日々を生きているのだ。

そんな風に思ってもいいんじゃないかなって。人生はランニングマシンってなんかダサいけど、それも僕らしいかもなと思ったので書いておきます。生まれたときはみんな最高傑作やもんね。

積み重ねて 塗り重ねて


著=きしもと たかひろ/『大人になってもできないことだらけです』(KADOKAWA)

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