【育児中の就活】離職後の「ブランク期間」が長い女性のキャリアパスとは?

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育児中の求職活動

結婚や出産を機に仕事を辞めたけれど、子育てが落ち着いたタイミングで働きたい…と考える方も多いのでは?しかし、「ブランク(=離職期間)が長いので、再就職できる自信がない」という声もよく聞かれます。そこで、"仕事"の専門家に「ブランクのある女性の再就職とキャリア形成」についてインタビュー。しゅふJOB総研 研究顧問/ワークスタイル研究家の川上敬太郎さんにお話を伺いました。

しゅふJOB総研 研究顧問/ワークスタイル研究家 川上敬太郎さん

しゅふJOB総研 研究顧問/ワークスタイル研究家 川上敬太郎さん

離職期間である「ブランク」が長いと、再就職は難しい?

―子育てによるブランクがあると、再就職には不利なのでしょうか?

川上さん「以前は、1年の離職期間でも再就職の足かせになってしまった…という話をよく聞きました。しかし、最近は1~3年程度であれば、他の条件が合致すれば採用したいという企業が増えてきているように感じます。ただ、離職10年以上となると、特別な理由がない限りマイナスの評価をされてしまうケースが多いのも事実ですね。

とはいえ、『ブランクがあるから再就職できない』と悲観的に捉えすぎないでください。そもそも、職に就いていない期間を『ブランク(=空白)』と表現することがありますが、空白期間ではなく単なる離職期間です。職場で働いていないだけであって、家事や育児・地域との関わりなど大切な仕事を担っていたのですから、決して"空白"ではありません。家まわりの仕事のオペレーションで磨かれるスキルは山ほどありますよね。また、学校や地域との関わりで培われた能力も、キャリア形成に大きく役立つと私は考えています。

実際に、私の知人に10年以上の専業主婦期間を経て復職し、第一線で活躍している優秀な女性がいます。その方は、採用面接でアピールした"PTA会長として改革を起こしたエピソード"が買われて採用が決まったそう。特殊な事例だと感じるかもしれませんが、家庭や地域活動で磨いたスキルは、"コスト改善"や"段取り力"など職場で転用できるものも多く、本来は採用場面でもっと評価されても良いはずです。離職期間を『ブランクという空白期間』と捉えるのではなく、『家庭や地域で、スキルを磨いている期間』と捉え直してみませんか。その経験は、再就職時にプラスに働く大きな武器になる可能性があるのです。

―離職期間は、就職活動で不利に働くこともありますが、『スキル磨きの場』であることに着目すれば強みになる可能性を秘めているということですね。

子育て中の女性に人気の働き方、「短時間正社員」

―子育て中だったり、離職期間がある女性にオススメの働き方はありますか?

川上さん「家庭内での家事分担の状況など人それぞれに状況が違うため一概には言えないのですが、子育て中の女性に人気の"短時間正社員"という雇用形態があります。9~16時勤務など、フルタイム正社員より1週間の所定労働時間が短い正規型の社員のことです。時間の融通が利くため、子育て中の女性で希望される方が非常に多いですね。
ただ、"短時間正社員"は専門職と呼ばれる職種に多いため、未経験からのスタートだと狭き門でもあります。ここで言う専門職とは、人事・法務・広報・マーケティング・経理・IT系などです。中には未経験歓迎の求人もありますが、即戦力となり得る実務経験を持つ方への募集が多いです。」

―「未経験職種でのキャリア形成」で、子育て中の女性に多い事例を教えてください。

川上さん飲食業や販売職は、離職期間のある方や未経験の方でも採用される可能性が比較的高いですね。もともと学生アルバイトなど未経験者を多く採用してきましたし、求職者1人に対して求人が2件以上ある“売り手市場”でもあるためです。生活圏に職場があることが多く、出勤日や時間の融通も利きやすいため、育児中でも働きやすいという声もよく聞きますね。実際に、飲食・販売未経験の育児中の方がパートやアルバイトで働くケースも多いようです。

飲食業・販売職と一口に言っても、様々な仕事がありキャリアパスも多様です。飲食業であれば、皿洗いから始まって調理補助、メイン料理の調理担当とステップアップしていくようなルートもありますし、ホールスタッフだと接客でコミュニケーションスキルを磨き、そのスキルを活かして営業職へ転職などというケースもあります。同様に販売職から営業職に転職することもありますし、店長になってマネジメントを担うようなキャリアも。また、仕入れ担当だったり、大きな組織であれば出店先を開拓する店舗開発など可能性は様々です。」

条件だけで求人を選ぶ前に、自分が「本当にやりたいこと」を見つめてみよう

―専門職経験者なら時短正社員、専門職未経験なら飲食業や販売職というキャリアパスが多いのですね。

川上さん「事例としては確かに多いですが、就職活動の初めから『家庭の制約がある私にできる仕事は、この職種しかない』と選択肢を狭めないで欲しいですね。子育て中の条件に合う仕事を見つけるのは大変ですし、収入確保に切羽詰まった場合など、“とにかく短時間勤務で採用してくれそうな職場”の求人を探してしまいがちです。しかし、子育てにはいずれ終わりがきます。また、仕事は収入だけでなく、生きがいをもたらしてくれるものでもあります。まずは、現在の制約条件は一度ないものとして、本当にやりたい仕事や理想の働き方をイメージしてみてください。自分の本当の希望を確認した上で求人を探してみると、これまで気づかなかった新たな可能性や選択肢が見えてくることがあります。」

―「いま何ができるか」だけでなく「これから何がしたいか」、自分の希望を棚卸することも大切なのですね。

川上さん自分にとっての"最高の働き方"を明確にイメージしておくことは、とても大事なポイントです。なぜなら、自分の希望というのは、実は二重構造になっていることがあるから。例えば、"家庭を優先したいから短時間勤務。仕事内容はこだわらない"という方でも、自分ですら気付かない『ホンネ』には"フルタイムで裁量の大きい業務を任されたい"なんていう想いが隠れていたりします。
弊社の『希望する働き方』のアンケートでも、何も条件を付けずに希望を尋ねると『短時間勤務が希望』と回答する方が7割です。しかし、『もし家庭の制約がなく、仕事に100パーセントの時間を使えるなら…どんな働き方が良い?』と聞き直すと、6割近い方が『フルタイム正社員』と答えたのです。」

主婦が希望する雇用形態1位は「短時間正社員」


家庭の制約がなければ、「フルタイム正社員」を希望する人が過半数

※出典:しゅふJOB総研『本当に望む雇用形態アンケート』

川上さん「同じように、何も条件を付けずに管理職の希望を尋ねると『希望する』と回答する方は3割にも届きません。しかし、『仕事に100パーセントの時間を使えるなら…』と聞くと、6割強の方が『管理職を希望する』と答えています。つまり、現在の制約ありきで考えるクセがついてしまい、『どうせ無理だから』と気づかぬうちに本当の願望を押さえつけているケースがあるのです。」

家庭の制約がなければ、6割強の人が管理職を希望

※出典:しゅふJOB総研『女性管理職アンケート』

川上さん「まずは制約をないものとして、自分の本当の願望を突き詰めて考えてみましょう。『ベビーシッターを雇ってでもフルタイムで働きたい』とか『料理のレシピを考えるのが好きだから、商品開発をやってみたい』など、自分にとっての理想で構いませんよ。考えた結果、『この仕事に就きたいけれど、子育て中の今はムリ…』と思ってしまうかもしれません。でも、子どもが大きくなった2年後には、仕事に割ける時間が増えているかもしれない。さらに、通勤時間を削ることができるテレワークなら、在宅にてフルタイムで働ける可能性だってあるかもしれない。自分の本当の願望を深掘りしてから、現在できることを逆引きすると、新たなキャリアの可能性も見えてくると思いますよ。」

離職期間が長いと、つい「今の自分でも採用してもらえそうな職場」という観点だけで求人を選んでしまいがち。でも、制約をないものとして「人と話すことが得意だから接客業」「成果が目に見えてわかるのが好きなので営業職」など、自分の「好きなこと」から仕事を選んでみるという、就職活動の原点に立ち返ってみては?また、離職期間を「ブランク」ではなく「家庭や地域でスキルを磨いている期間」と捉え直して過ごすことで、採用時に大きなアピールポイントになることも。何気ない毎日の中でも、これからの自分のキャリアパスを練り上げるチャンスは沢山ありそうですね。

【取材協力】
しゅふJOB総研 研究顧問/ワークスタイル研究家 川上敬太郎さん
大手人材サービス企業管理職、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼編集委員などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総合研究所』を起ち上げ所長就任。現在は独立し、『ワークスタイル』をメインテーマにした研究・執筆・講演・企業の事業支援などに携わる。NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディア出演も多数。自身も4児の父親で兼業主夫。

取材・文=酒詰明子

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