「ブランクがあるから…」とあきらめないで! 育児中の就活に必要なこと
再就職の準備は資格取得だけじゃない。家事育児で磨かれるスキルにも注目
― ブランク(離職期間)が長い人ほど、再就職に不安を感じてしまうようです。数年後の再就職を見越して、準備しておくべきことはありますか?
川上さん「まずはじめに、離職期間のことを『ブランク(=空白)』と呼んで何もなかったと捉えるより、そこで得られたものに目を向けてみませんか?職場で働いていないだけであって、家事や育児・地域との関わりなど大切な仕事を担っていたのですから、決して"空白"ではありません。育児や地域での活動は、"職場では得られない経験を積むことができる成長の機会"でもあります。そこで磨いたスキルは、再就職に役立つ可能性だってあるんですよ。」
―再就職に役立つスキルというと、簿記や医療事務など資格取得のイメージがありました。
川上さん「もちろん、資格はあるほうが有利なケースもあるのでチャレンジすることは良いでしょう。でも、絶対に資格を取っておかなければ採用されない、というわけではありません。
そもそも、仕事に役立つ能力には"ハードスキル"と"ソフトスキル"の2種類があるんです。ハードスキルというのは、資格や語学力など客観的に評価しやすいスキルのこと。身につけるには、専門的な学習や実務経験が必要なので、子育てで忙しい方にとってはハードルが高く感じられてしまいますよね。
対して、ソフトスキルというのは、コミュニケーション力や情報整理力など、個人の内面に備わっている基礎的能力を指しています。ハードスキルに比べて、どんな職場でも使えるスキルなので、持ち運びができる"ポータブルスキル"とも呼ばれているんですよ。このソフトスキルは、家事や育児をはじめとした家周りの仕事のオペレーション(=家オペ)を通して鍛えられるものが多数あります。毎日の何気ない"家オペ"を、ソフトスキルを磨くという意識をもって行うと、再就職に向けた大きな武器になる可能性があるんです。」
家事育児で磨いた能力を「仕事で使えるスキル」に転換させるには
―"家オペ"によって磨かれるソフトスキルには、具体的にどのようなものがありますか?
川上さん「例えば、育児では忍耐力や危険察知能力が培われるし、炊事なら段取り力やコスト改善などのスキルが磨かれます。でも、せっかくのスキルも意識しなければ、採用面接でのアピールポイントとして語ることはできません。毎日当たり前に"家オペ"を切り盛りしていることは、たくさんのスキルが駆使されている証拠なのに、その能力を仕事に活かすための転換の仕方を知らないのはもったいない。
そこでオススメなのが、"家オペ"で培われたスキルを可視化することです。家仕事が発生する『シーン』と、そこで磨かれる『スキル』の2つの軸で整理することができます。一例として、『シーン』はPTAや自治会、『スキル』はコミュニケーション力やコスト改善などが挙げられます。」

川上さん「『シーン』と『スキル』を掛け合わせて、思いつく限りのエピソードを書き出してみてください。例えば、記入時のポイントは、数字などを交え、できるだけ具体的なエピソードを書くこと。自分が行ったことだけで終わるのではなく、その取り組みによってもたらされた成果まで書くようにしましょう。この内容を元に、採用面接での自分のアピールポイントを練ることが出来ます。
例えば、私の職場の女性もPTA会長として改革を起こしたエピソードが買われて採用を勝ち取ることが出来たんですよ。PTA役員として企画した緑化運動で民生委員にプレゼンをして予算を確保し、無事成功まで導いたという話が面接で高評価を得ました。この1つのエピソードだけでも、コミュニケーション力にリーダーシップ、マネジメント、企画推進力など、多数のソフトスキルをお持ちの方だということが伝わりますよね。」



―コミュニケーション力にリーダーシップ、マネジメント、企画推進力…PTA活動ひとつをとっても、こんなに多くのスキルが磨かれるんですね!
川上さん「そうなんです!実際に、PTAで書類整理を任されていた方が、紙ではなくサーバーでのファイル管理能力を身につけ、その後に再就職して社長秘書として活躍した事例もあるんですよ。」
PTAや地域活動…様々な経験が『本当にやってみたい仕事』に出会わせてくれるかも?
―敬遠しがちなPTA活動も、自分のスキルを磨く機会だと捉えれば「やってみようかな」という気になります。
川上さん「PTAに限らず、マンションの自治会や町内会などの地域活動に参加したり、子どもやママ友とのパーティで企画や幹事に挑戦してみたり、日々の暮らしの中の活動でいいんですよ。
また、時間に少し余裕が持てる方なら、短時間や単発の仕事で社会に触れておくのもオススメです。今は、単発の仕事をインターネット上で受発注できる仕組みも整っており、時間や場所に縛られない働き方も増えてきています。また、空き時間に単発でできるアルバイトも探してみては。
そのように、普段の生活の中で積極的に色々な機会に触れておくことが大切です。その経験を通して『この作業をしている時は楽しい』『気付かない強みがあった』など、多くの気付きがあります。その気付きが積み重なると、徐々に『自分が本当にやってみたい仕事』が明確になってきます。すると、その仕事に関する情報をキャッチするアンテナが高くなり、無意識に『本当にやってみたい仕事』との素敵な出会いを引き寄せることだってあるかもしれませんよ。」
家計のやりくり、子どものスケジュール管理、ママ友との集まり企画…意識をして過ごせば、何気ない毎日がソフトスキルを磨く機会になりそうですね。離職期間を「家オペでスキルを磨く時間」として成長するか、「何もしなかったブランク」と捉えてしまうか。再就職への準備、すぐに出来ることは意外に身近なところにあるのかもしれません。
【取材協力】
しゅふJOB総研 研究顧問/ワークスタイル研究家 川上敬太郎さん
大手人材サービス企業管理職、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼編集委員などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総合研究所』を起ち上げ所長就任。現在は独立し、『ワークスタイル』をメインテーマにした研究・執筆・講演・企業の事業支援などに携わる。NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディア出演も多数。自身も4児の父親で兼業主夫。
取材・文=酒詰明子
Information
おすすめ読みもの(PR)
プレゼント応募

「「ノザキのコンビーフ(80g×6 個)」」
そのままでも調理してもおいしいから、ローリングストックに最適!
メルマガ登録で毎週プレゼント情報が届く!
新規会員登録する
読みものランキング
読みものランキングをもっと見る
レシピランキング
レシピランキングをもっと見る
レタスクラブ最新号
レタスクラブ最新号詳細