夫が一日中寝てばかり。内心イライラしていたら、甲状腺異常のバセドウ病だった!

#美容・健康   
『夫がバセドウ病にかかったら…』より

パートナーが思わぬ病気で、しかも身体的だけではなく、精神的にもその影響が出る病気だった衝撃を記した桜木きぬさんの『夫がバセドウ病にかかったら…』がTwitterで話題です。バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが異常に分泌される病気。芸能人で公表している人もいるため、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?しかし、どんな症状が出るのか、側にいる家族はどんな風に感じるのかについては知らない人もいるでしょう。桜木きぬさんの漫画は患者本人の症状と、家族だからこそ気付いたエピソードがわかりやすく描かれています。桜木きぬさんに漫画を描いたきっかけや、症状が出ている夫のどんなところに困ったかなどを伺いました。

作者・桜木きぬさんインタビュー

――イラストレーター、漫画家として活動されていますが、ご自身や家族をテーマにした漫画を描くようになったきっかけを教えて下さい。

桜木きぬさん「以前からコミックエッセイが好きでイラストの仕事の傍らで時々描いていました。コロナ禍以降人と雑談することが減ったタイミングがあり、日々の『ちょっと聞いて~』と思った事を人に話す代わりに描くことが増えました」

――2018年に夫がバセドウ病とわかったとのこと。このタイミングで漫画にされたのにはどうしてでしょうか?

桜木きぬさん「どんな出来事も渦中にいる時は、客観的に描けないと思っています。交通事故で内臓破裂した体験のマンガも描いているのですが、それについては20年経ってから描きました。ある程度消化してからの方が描きやすいと感じています。」

『夫がバセドウ病にかかったら…』より

――最初、かかりつけの先生からは「風邪」と診断されたそうですが、そこからバセドウ病とわかるまでどれくらいかかりましたか?

桜木きぬさん「初めに病院にかかった日には若先生に風邪薬を1週間分もらいました。それを1週間飲んでも一向に体調が良くならず、再び通院した時に大先生が『甲状腺悪いんじゃないか?』と疑ってくれて血液検査をしました。その数日後に検査結果がでて発覚しました」

――バセドウ病と発覚するまでの半年、「思えば半年くらいずっとしんどかった」「まるでいつもプールの授業の後の5時間目だった」のことですが、そこまで我慢してしまったのはなぜでしょう。

桜木きぬさん「30代後半だったということもあり、まずは『年齢のせいかなぁ』と思っていたようです。仕事も忙しかったので、そのせいかなとも思っているうちに半年くらい経っていました」

――桜木さんの夫はなかなか病院に行かないタイプだったのでしょうか?

桜木きぬさん「そうですね。夫はもともとすごく健康で、あまり病院にかかる機会がありませんでした。一度高熱がでて、病院で点滴をしてもらったことがあるのですが、点滴の針が怖かったらしく過呼吸をおこしました。その時にこの人病院苦手なんだなと気づきました。そんな感じで余程じゃないと病院に行かない人でしたね。バセドウ病とわかってからは、市販薬がほとんど飲めないということもあり、割とスムーズに病院にかかるようになりました」

――病気が発覚する前、桜木さんが夫に対して「だらだらすんな」と思っていたそうですが、どんなところにイライラしていたのか具体的に教えて下さい

桜木きぬさん「一番イライラしたのは朝起きないところでした。うちの子どもは朝早いタイプで6時前から相手をする必要があったのですが、ずっと私だけが早起きして対応していたので、たまには起きてくれ~と思っていましたね。また、休みの日でも目を離すとすぐ寝てしまって、数時間起きないということが多くて、ちょっとは子どもの相手をしてくれと思いました。子どもがいなかったらあまりイライラしなかったかもしれません。ずっと寝ているので寂しいとは思ったかもしれませんね」

『夫がバセドウ病にかかったら…』より

――バセドウ病の症状のせいで「せっかちになる」「なんでも食い気味に答える」「忘れっぽい」「注意力が散漫になる」とあり、病気のせいだとはいえ、ご家族も対応が難しかったでしょうね。家族で衝突してしまうことはあったのでしょうか?

桜木きぬさん「精神的な症状については当時小学校3年生の子どもにわかってもらうのが難しかったです。心配をさせたくなくて軽めに伝えると『命に関わる病気じゃないならいいじゃん』と症状を軽視するし、それならばと重めに伝えると『お父さんが病気だから自分はお出かけとか外遊びを我慢しなくちゃいけない』と落ち込んだりしてました。私自身は、それまでイライラしていた夫の状態が病気のせいだとわかってホッとした部分が大きかったです。だけど一日に同じ話を3回されたりするとさすがに不安になりました。もしずっとこのままだったらどうしようかと悩んだりもしました」

――日常生活を送るのがギリギリ…それでも会社通勤はある、とのことでヘルプマークをもらったというエピソードがありました。実際にこれが役に立ったということはありましたか?

『夫がバセドウ病にかかったら…』より

桜木きぬさん「ヘルプマークはもっと重大な症状の人が使うものかもしれないと遠慮の気持ちもあったのですが、発症当時は毎日の通勤も“命からがら”という感じだったので思いきってもらってきました。実際ヘルプマークが役に立ったという経験はないのですが、マークの裏に緊急連絡先や病名などが書いてあるのでもしもの時の安心材料になりました」

――バセドウ病の治療を開始して、状態が落ち着くまでどれくらいの期間がかかりましたか?

桜木きぬさん「薬を飲み始めて、2週間くらいでひどい動悸は落ち着きました。せっかちだったりする精神的なものも1カ月くらいするとすっかりよくなりました」

ーー現在のご体調はいかがでしょうか?

桜木きぬさん「現在は薬の量もだいぶ減って(1日4錠飲んでいた薬が最近1錠になりました)運動の制限などもありませんので通常の暮らしを送れています。ただなかなか薬を飲まなくてもいいところまでいかず、医師からアイソトープ治療(放射性ヨウ素を内服し、甲状腺を被爆させることで甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑える治療法)の説明を受けたりはしています。強く勧められたりしているわけではないので、今後様子をみながら検討していきたいと思います」

――今回はバセドウ病という病気に関してのレポート漫画について取り上げさせていただきましたが、日常のささやかな出来事を描いた漫画も印象的です。今後、どのような作品を描いていきたいですか?

桜木きぬさん「毎日のささやかな出来事は絶えず描けたらいいなと思っているのですが、それとは別に、年子の姉との40年にわたる思い出マンガ『わたしのすごいお姉ちゃん』をTwitterで週一回連載しています。あと、数年前に夫が『しゃがんだだけで骨折』したのでその話も描きたいなと思っています。Twitterでは週2〜3回なんらかの漫画を更新しているので、良かったらのぞいてみてください!」

バセドウ病は治療を続けることで症状がなくなる「寛解(かんかい)」の状態にはなりますが、治療を止めても症状が出なくなる「完治」はしない病気です。病気との付き合いが長くなるため、患者本人のみならず周囲にいる人も病気に対しての適切な理解が必須だと言えます。この漫画はあくまでも桜木きぬさんの夫の場合で、同じバセドウ病でも人によって症状や治療法に違いはありますが、漫画を通じて病気への理解が深まっていくといいですね。

取材・文=西連寺くらら

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