小学生~大学生がつくる短編映画プロジェクト「KAZE FILMS」。子どもたちの無限の可能性に感動が止まらない!

#育児・子育て   
大学生「13reeze」の 制作風景

小学生や中学生が、自分の力で、映画を撮る。と聞いて、どう思いますか?「そんなの、ウチの子には絶対にムリ!」と思うかたは、ぜひこの記事を読んでください。
NTTドコモが主催し、2022年3月に立ち上がった「KAZEFILMS docomo future project」という、次世代を担う子どもたちの応援プロジェクトがあります。このなかで、小学生から大学生までの28チームが、オリジナルの短編映画作りに挑戦しました。まずは、どういうプロジェクトなのか、学生たちはどう映画と向き合ったのかをご紹介します。でも、何よりもぜひ完成した映像作品をその目でご覧になってみてください。きっと、子どもたちの溢れる才能と無限の可能性に、感動が止まらくなるはずです!


企業は子どもの未来に何ができるか?が出発点

「KAZEFILMS docomo future project」は、何かに挑戦したいと思いながら、きっかけや手段が見つからなくて一歩踏み出せずにいる学生が、自らの可能性に挑戦できるよう応援したい、という企業の思いから始まりました。「すべてのひとに、才能がある」という言葉を掲げて始まったこのプロジェクトは、コンセプトに深い共感を寄せてくれた人気アーティスト藤井風さんの「grace」という曲をモチーフに、公募で選ばれた小学生~大学生が、夏休みを使ってオリジナルのショートフィルムを作る、というものです。映像制作のプロにアドバイスを受けながら、シナリオ作り、撮影、編集を、ひとりで、あるいは仲間と担当し、ひとつの「作品」を作り上げる。大人でも難しいこの挑戦に挑んだ学生の全28チームが見事に、個性的で熱のこもった映像作品を完成させることができました。
その過程について、プロジェクトリーダーであるNTTドコモ ブランドコミュニケーション部長 坂本秀治さんにうかがいます。

NTT 坂本修治さん


―――通信事業者であるNTTドコモが、なぜショートフィルムを作るプロジェクトを?
「もともとは弊社の創立30周年記念として、何か形に残ることをしたい、という思いからでした。『残す』というからには、次世代を対象にしよう。そして、コミュニケーションに携わる企業として、次の世代を担う子どもたちの声を伝えられるような企画、彼らの背中を押せるような企画にしたい、と考えたのです。今の子どもたちは、スマホでYouTubeの動画を見たり、TikTokに動画を投稿したりすることに慣れています。では、弊社の事業に欠かせないスマホと親和性が高く、これからのコミュニケーションの中心となる『映像』の制作にチャレンジしてもらうのはどうだろう?という結論に至りました」

―――たいへんな数の応募があったそうですね
「400件くらい応募してくれたらうれしいな、と考えていたのですが、約2000件もの応募がありました。しかも、みなさんの応募書類はどれも熱量が非常に高い! 藤井風さんのセカンドアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』から好きな1曲を選んで、浮かんだ物語や映像のアイデアをまとめて送ってほしい、と呼びかけたのですが、70ページもの脚本を送ってきた子もいれば、美しい絵コンテを描いてきた子、内容を1枚の絵で表現した子もいました。下記は中学生のアイデアノートです。

中学生のアイデアノート

正直、子どもたちの豊かな感性に圧倒されましたね。その曲のミュージックビデオを作るのではなく、曲にインスピレーションを受けたオリジナルストーリーを作ること、という条件だったので、曲から自分のアイデアへの転換がうまくできているか、内容に作り手の思いが表れているかを基準に、こちらも呻吟しながら参加チームを選ばせていただきました」


―――選ばれた学生たちは、このプロジェクトのために藤井風さんが書き下ろした曲「grace」をモチーフに映像作品を作りましたが、ひとつの曲をテーマにしたのはなぜですか?
「具体的なフレーズを決めると、想像力の幅が狭まってしまうのでは、と考えました。楽曲であれば、歌詞や曲調から子どもたちそれぞれが自由に何かを感じ取って、自分らしい発想へとつなげられる。実際、子どもたちは『grace』の『あなたはわたし わたしはあなた』『僕らはみな等しく光ってる』『愛に従うのならば出来ないことなど何もないさ』といった歌詞から、大きなインスピレーションを得たようです」

中学生「LEMONADE」制作中の風景


―――参加チームのうち、小学生がふたりいますね。彼女たちは、グループではなく個人参加です。実際のところ、小学生がひとりで映像作品を制作できるものですか?
「最初に、全員に向けてオンラインの映像制作オリエンテーションを行い、1組ごとにチューターとして制作ディレクターをつけました。でも、彼らは週に1回のオンラインミーティングでアドバイスをするだけで、現場には行かないし、編集も手伝いません。ですから、彼女たちは、自分でアイデアを考え、セリフを書いたり絵コンテを作ったりして、スマホで撮影し、編集も自分でしています。家族や友人が映像に参加したり手伝ったりはしていますが、メインで制作したのはあくまで子どもたちです。小学生でもできる、と信じたからこそ彼女たちを選んだわけですが、正直言ってあそこまでレベルの高い作品を作ってくれるとは思いませんでしたね!」

なつみかん「丘の上のともだち」制作風景

「遠い世界だった映像表現が、自分たちと地続きだと知り、子どもたちは『自分にできるはずがない』から『面白いことをやってみたい』へと気持ちが変化し、成長していきました。でも、このプロジェクトを通じて、むしろわれわれのほうがたくさんのことを学ばせてもらったような気がします」

小学生が作ったショートフィルム「丘の上のともだち」を観てみよう!

では、プロジェクトを代表して、小学生チーム「なつみかん」が制作した作品をご紹介しましょう。

彼女は「離ればなれで会えない人、映画を作ってみたい人に見てもらいたいと思って作りました。『grace』を初めて聴いたとき、『ただいま朝日 おかえり夕日』という歌詞が好きだなと感じ、大切な場所があることを思い出して、ふたりの主人公が心に浮かびました」と話しています。

小学生「なつみかん」作品タイトルの画像

あらすじ:のんびりと過ごしていた小学生あんずちゃんのもとに、突然、お隣に越してきたなつみかんちゃんがやってきます。いきなり遊びに行こうと誘われ、とまどうあんずちゃんでしたが、偶然見つけた”風の子丘”というすてきな場所をきっかけに、心を開いていきます。風の子丘で遊ぶうちに親友になったふたりですが、やがてなつみかんちゃんは、あんずちゃんの様子がおかしいことに気づき・・・。

なつみかん「丘の上のともだち」制作風景

特に工夫したのは、缶が転がるシーンだそうです。動画制作は初めてのなつみかんさん。映画を作るのはたいへんだったけれど、完成したものを見たら、みんなに見てもらうのが楽しみになったとか。「将来はCMを作ってみたい!」と夢を語っています。

もうひとりの小学生チーム「あるある」は、自信をなくしていた女の子のもとに、しゃべるクマのぬいぐるみが現われる、という不思議な物語を制作。「お話を考えたり、演技をしたり、自分で一から作品を作るのはとっても楽しかったけど、思っていたより大変でした。作品を見てくれた人も、どこかに忘れたままになっている大切なものを思い出すかも…という思いを込めました」と話します。

小学生「けだまちゃん 」作品タイトルの画像


ほかにも、内にこもっていた少年が、小人の「grace」に導かれ、自分の光を見出す物語を描いた中学生チーム「LEMONADE」、ある音楽との出会いによって、恋人の死から一歩踏み出せるようになる青年を描いた大学生チームなど、同じ曲がモチーフのはずなのに、映像に表現された世界は本当に多様で多彩です。

中学生「LEMONADE」 制作中の風景

大学生「13reeze」 作品タイトルの画像


学生たちが制作した全映像作品は、公式サイトで公開中です。また、公式Twitterではプロジェクトに関する情報を投稿していますが、たくさんの人が熱のこもったコメントを寄せていて、「KAZE FILMS」を愛する人々による一種のコミュニティができているそうです。
「最初から映像制作に情熱を持っていた子もいれば、最初はオドオドしていた子もいます。でも、作っているときの彼らは、とにかくのびのびして楽しそうでした。コロナ禍を生きる今の子どもたちは、みんなと一緒に何かをした経験が少ないはず。このプロジェクトへの応募がきっかけで仲間を作ったり、仲間と一緒にひとつのものを作り上げる達成感を味わったりしてもらえたなら、これ以上の喜びはありません。さらに、手段と場所さえ与えられれば誰だって輝くことができるんだ、難しいと思ったことでも、チャンレンジしてみれば案外できてしまうもんだ、と気づいてほしい。ここで成功体験を味わった彼らは、また別のステージでもきっとその才能を発揮してくれると私は思っています」

子どもの才能を発掘するために親にできることとは?

11月に開催されたプロジェクトの修了式には、参加チームの学生たちが全国から参加。学生たちからは「人生でこんなにうれしいことがあるのかな」「いろいろな人の夢が叶った。その場所にいられてよかった」「『これをお前が作ったのか』とお父さんが涙ぐんでました」「協力してくれた人に感謝」「みんながいたからひとつのものができた」「我ながら感動で涙が出た」といった、さまざまな声が聞かれました。
この修了式にはサプライズゲストとして藤井風さんも駆けつけています。

KAZE FILMS で語る藤井風さん

「みんなに会えて本当にうれしい。みんなには愛おしさしかないし、尊敬しています。みんなの中にも自分の中にも、光っている完璧な存在があることを信じてほしい。忘れないでほしい。わしもみんなから元気をもらい、一緒に輝きながら、これからも成長していきたい」と語った藤井さん。大忙しのスケジュールのなか、すべての作品を2度3度と鑑賞し、すべての参加チームに感想を伝えてくれたそうです。

KAZE FILMS を観る藤井風さん


NTTドコモでは、今後も人と人とのコミュニケーションに近い分野で、子どもの可能性を広げ、やりたいことを後押しする環境を用意していきたいとのこと。最後に、坂本さんから子育て中のかたへのアドバイスをいただきました。
「子どもは自分の可能性を知らないし、何がやりたいのかもわからないものです。だから、親であるみなさんが、わが子の才能や可能性を信じ、彼らが能力を発揮できる機会や場所をたくさん作ってあげてください。世界を広げてあげてください。子どもに、何かにチャレンジして成功する経験をさせてあげましょう。すると、子どもはこちらが想像もしないほど成長します。きっとみなさん、驚きますよ!」

「すべてのひとに、才能がある」という言葉は本当だった。それを誰よりも教えられたのは、坂本さんご自身だったそうです。


取材・文=春日あずさ

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