空いてるレジに猛ダッシュ!? 高齢の実母がせっかちでハラハラします/まいにちが、あっけらかん。(2)

いつもハラハラさせられます

高齢になると記憶力が衰えます。高齢者本人もそれをどこかで自覚しているため、「次にやるべきことを忘れる前に、目の前にあることを早く終えなければ」という気持ちのあせりをいつも抱えています。お母さんも買い物をしながら「次に薬局へ行く」と言っていますから、「薬局に行くことを忘れてしまう前に、早く会計を済ませて安心したい」と思っているところに、あいているレジがあったので、一目散に突進したのです。

また、高齢者はやらなければならない複数の物事に対して、同時に注意を向け、順序よく処理することが難しくなっていることも要因として考えられます。

人が情報を得てから脳が処理する能力には限界があり、一般的に40~50代くらいまでの人であれば、同時に3つ程度の事を処理できます。ところが、高齢になると処理能力が低下し、同時に2つの事しかできなくなります。おそらく、お母さんは「あそこのレジがあいている!」と判断し、「レジに進む」という行動を起こした時点で処理能力が尽きてしまい、まわりへの注意力がおろそかになり、配慮のできない行動になってしまったのでしょう。

記憶力と情報処理能力の衰え

さらに、高齢者の「判断に時間がかかる」という現象も関係しています。近年の研究から、脳の「白質」という部分の血流が悪くなると、神経から神経への伝達と反応がにぶくなるなどのさまざまな問題が起こることが解明されてきました。

お母さんが「レジに進む」ことを決めて行動を始めてしまうと、たとえ「目の前に人がいる」ことに気がついたとしても、脳から体への神経伝達が悪くなっているので、途中で行動を止めるのが難しいのです。

せっかちな行動によって人にぶつかったり、他人に迷惑をかけてしまう高齢者はめずらしくありませんが、外出先のまわりに人がいる状況で注意してもプライドを傷つけてしまうだけなので、「あせらなくてもいいよ」「少しくらい遅れても大丈夫」などと声をかけて安心させてあげるだけで、落ち着いて行動できるようになるでしょう。

監修/佐藤眞一
大阪大学大学院人間科学研究科臨床死生学・老年行動学研究分野教授、放送大学客員教授。博士(医学)。主な著書に『ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす』(光文社新書)、『マンガで笑ってほっこり 老いた親のきもちがわかる本』(朝日新聞出版)など。

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