「不穏」「ぞわぞわする」とSNSでも話題!イヤミス漫画の第一人者・野原広子さんの『赤い隣人』はどんな物語?

   『赤い隣人〜小さな泣き声が聞こえる』より

「イヤミス」とは、後味が悪く、嫌な気分になるミステリー作品のこと。小説の世界では湊かなえさんや真梨幸子さんなどがこの「イヤミス」の第一人者としておなじみですが、コミックエッセイ界で「イヤミス」といえば、第25回手塚治虫文化賞を受賞した漫画家の野原広子さんが思い浮かぶ方も少なくないのではないでしょうか。

ある日突然失踪したひとりの母親をめぐって周囲のママ友たちの心の闇があぶり出される『消えたママ友』や、会話が無くなった夫婦の関係性をリアリティたっぷりに描いた『妻が口をきいてくれません』など、どの作品も登場人物はどこにでもいるごく普通の登場人物たち。シンプルなタッチのイラストで、一見「毒のない主婦の日常マンガかな」と思わせるのですが、不穏な空気感の中で描かれる観察眼の鋭さや、ぐいぐいと読ませる語り口、予想外のストーリー展開やラストの切れ味が人気を集めています。


【マンガ本編を読む】『赤い隣人〜小さな泣き声が聞こえる』(画像116枚)
だれかがないてるこえがする

そんな野原広子さんの最新作『赤い隣人』について、SNSでも感想の声が相次いで投稿されています。
「めっちゃ不穏…」
「ぞわぞわが止まらない」
「ぐいぐい引き込まれる」
「子育て中の親なら誰でも思い当たる節がある」
「『消えたママ友』も怖かったけどこれも怖い!」
「野原さんの作品は読み始めたら止まらない」
「すごい伏線があったことに気付かなかった」
「ラストシーンが秀逸」
「最後の最後まですごかった…」
など、さまざまな感想が投稿されています。

この物語は、主人公の小出希が一人息子の健太を連れて、新しい街に引っ越してきたところから始まります。希たちの住むアパートの隣には、赤い屋根の一軒家。そこには健太と同じ保育園のモモちゃん、その両親の千夏と周平、順風満帆の様子に見える3人家族が住んでいました。家族ぐるみで仲良くなった希と千夏でしたが、そのうちに希は千夏と桃花の様子に違和感を抱くようになっていきます。

ときどき隣の家から聞こえてくる泣き声、息子の健太が見知らぬ人にに言われた「おとなりに気をつけて」の言葉、おせっかいなアパートの住人のおばさん、桃花の躾に厳しい千夏……はじめのうちは淡々とした日常の描写の中に、じわじわと不穏な空気が広がっていき、次第にミステリタッチの物語へと発展していきます。そして小出家と長谷川家の物語は、予想外の結末へと向かいます。

  『赤い隣人〜小さな泣き声が聞こえる』より

作品の中では、隣に住む千夏の桃花への躾が厳しすぎて、もしかして虐待のような行為をしているのでは…と思わせる描写があります。そんな様子を心配しながらも、希自身も様々な状況に追い詰められる中で、口もきかず反抗的な態度を取る息子を思わず叩いてしまう場面が…。育児における「躾と虐待の違い」という問題についても考えさせられます。

作者の野原広子さんにこの作品を描いた理由についてうかがいました。
「この『赤い隣人』はお隣に住む希と千夏を中心とした”自覚なき虐待”がテーマです。一生懸命で正しいと思っていたはずのものが、いつしか孤独という穴の中で違うものになってしまっていないか?そして、それに気がついているか?いないか?
自分が正しい、と信じてきたことも、もしかして…。“隣人”という他人から見たら、全く違う形に見えているのかもしれない怖さを描いてみようと思いました」

あなたのやっていることは虐待よ

野原広子さんの作品は、一度読み始めたら、物語からにじみ出る不穏さにページをめくる手がとまらなくなります。ラストの切れ味や衝撃、余韻はいつも予想を超えてきて「えーーーっ」と心の中で叫んでしまうこともしばしばですが……おっと、これ以上のネタバレはここでは書けません。あなたは「イヤミス」コミックエッセイの第一人者が描いた「赤い隣人」のラストについてどのような感想を抱くでしょうか?

文=レタスユキ

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