うなぎで「竹」を選んでしまうのはなぜ? 経済学博士が教えるムダづかいの心理

やめようと思っても、ついやってしまうのが「ムダづかい」。お金を使うとき、脳ではどんなふうに考えているのでしょうか。
ムダづかいを防ぐために、お金を使う際の脳の動きを行動経済学の視点からチェックしてみましょう!
「ムダづかいを避けて貯め体質になる方法」今回は、ムダづかいしがちな10の「あるあるシーン」について、そのとき脳内で思っていることを、経済学博士の古川雅一さんに解説していただきました。
たくさん思い当たったら要注意! ムダづかいのあるあるシーンに隠された心理とは
シーン1:
クーポンの有効期限が切れそうになると、無理やりでも何か買おうとしてしまう
▶︎「目の前にある利益を失いたくない!」

クーポン券を使うため、不足分の金額を払ってまで必要のないものを買ってしまう…。冷静になればムダづかいだと分かる行動ですが、人は利得よりも損失を大きく捉える傾向があるため、クーポンを無理やり使ってまでも必要性の低いものを買ってしまうのです。行動経済学では、これを「損失回避性」といいます。
シーン2:
うなぎなどで「松・竹・梅」から選ぶとき、「竹」を選ぶことが多い
▶︎「高いお金は払いたくないけど、安すぎもコワイ」
人には複数の選択肢があると、両端を避けてまん中を選ぶ「極端回避性」という傾向があります。これは「いちばん高い金額を出すのは嫌」「安いと満足度が下がりそう」といった損失を避ける心理が働くためです。
シーン3:
1万5000円のブラウスを買う予定が、3万円から1万9000円に値下げされたブラウスに魅力を感じてしまう
▶︎「予定金額よりオーバーしても割引されていることが大事!」

人は「これはお得!」「損した……」と感じるとき、心の中で無意識に設定している「参照点」を基準にしています。参照点から割引されていればお得に感じ、価値を感じてしまうのです。このケースの場合、基準となるのは元値の3万円。予定より金額がオーバーしてもお得に感じるのは、この「参照点依存性」によるもの。
シーン4:
「数量限定」や「タイムセール」ということばに弱い
▶︎「このチャンスを絶対逃したくない…!」

このときに働いているのも、「損失回避性」という心理。人は無意識のうちに損失を避けようとするため、数量や購入期間が限定されると「これを逃したら買えなくなってしまう」という気持ちが強く働き、より購買意欲が高まるのです。
シーン5:
利用していないサブスクがあるが、「また近いうちに使うかも…」と継続している
▶︎「一度所有したものは一生私のもの!」
ここで作用しているのは、一度自分のものになったものや環境に高い価値を感じ、失うことが惜しくなる「保有効果」と、変化を嫌い、現状維持を好む「現状維持バイアス」。不要なものをメルカリなどで売る際に、相場よりも高い金額をつけてしまうのも同様の心理から。
シーン6:
食べ放題のお店では「元を取らないと損!」と思って食べ過ぎてしまう
▶︎「損は避けたい! 何とか取り戻したい!」
すでに支払いずみで、取り戻すことができないお金のことを「サンクコスト」といい、その分を何とかして取り戻したいという心理から冷静な判断ができなくなってしまうことを「サンクコスト効果」といいます。食べ放題で食べ過ぎてしまい、体調を崩したり、体重が増えたり……などよけいな損をしてしまうのも、まさにこれ。
シーン7:
割引されているが無名のメーカーの商品と、定価だが有名で見たことがある商品なら、後者を選ぶ
▶︎「有名な商品=いい商品に違いない!」

人には思い込みによって偏った判断をしてしまう「確証バイアス」があり、「テレビで見たから」「タレントの〇〇さんがおすすめしていたから」などの理由で先入観を持ち判断しがち。このバイアスが働くと自分の意見と一致する情報しか目に入らなくなるため、マイナスの情報を見落とすことも。
シーン8:
行列ができている店を見つけると、つい並んでしまう
▶︎「みんなが並んでいるんだから間違いない!」

散歩の途中で、行列のできているパン屋さんを発見。「みんなが並んでいるからおいしいはず」と、おなかがすいていないのに行列に並んでしまうのは、〝みんなと同じなら安心〟という、「横並び行動バイアス」が働いているから。
シーン9:
臨時収入があると、ふだん買わない高額な商品を買ってしまう
▶︎「このお金はムダ使いしてOK!」

同じ人であっても、お金の価値はいつも一定ではありません。特に、臨時収入や容易に手に入れたお金の価値は小さく感じ、ムダづかいしてしまう傾向にあります。これを「あぶく銭効果」といいます。
シーン10:
1000円単位の買い物は数百円の差額が気になるのに、リフォームや車の購入など額の大きな買い物は数万円の差でも気にならない
▶︎「数万円の差なんて安いもの!」

損や得、高い、安いという感覚は、金額の母数が小さいほど敏感に、逆に大きくなればなるほど鈍くなります。何百万単位の買い物をするときに数万円の金額を誤差程度に感じてしまうのは、この「感応度逓減性」という心理現象によるものです。
思い当たる節がありありなムダづかいシーンに、こんな感情が隠されていたなんて...。
まずは理由を自覚することが、ムダづかい防止の第一歩。いざお金を使うときにはこれを思い出し、冷静に判断しましょう!
▶︎教えてくれたのは
古川雅一さん
経済学博士。京都大学経済研究所での研究活動を経て、立教大学、東京大学大学院特任准教授を歴任。現在は、テレビや雑誌、講演などを通じて、経済問題を分かりやすく解説している。著書に『ねじれ脳の行動経済学』 (日経BPマーケティング) ほか。
イラスト/平松昭子 取材・文/恩田貴子
【レタスクラブ編集部】
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