「胸がつまる」「つらい」「怖い」とTwitterでも話題騒然!しろやぎ秋吾さんの衝撃作『娘がいじめをしていました』

#育児・子育て   
 『娘がいじめをしていました』より

「胸がつまる」
「つらい展開だった」
「すごい作品」
「リアルすぎる」
「難しい問題だと思う」
「下手なホラーより怖い」
「いじめられてた時のことを思い出した」
「何が正解なのかわからなくなった」

など、SNSで多くの感想コメントが投稿されている作品をご存知ですか?
これは、しろやぎ秋吾さんがTwitterに投稿した『娘がいじめをしていました』に寄せられた感想です。リプライや引用リツイートだけでも合計で1000件をはるかに超えるコメントがついていて、『#娘がいじめをしていました』のハッシュタグにも多くの感想が投稿されています。

中でも特に多いのが「考えさせられる」というコメント。いじめ問題を加害者と被害者の双方の親の視点から描いたこの作品は、読んだ人は誰しも「自分がもしこの立場だったら」と考えさせられ、どう行動するのが正しいのかを問われる内容となっています。

この作品のあらすじをご紹介しましょう。

『娘がいじめをしていました』あらすじ


『娘がいじめをしていました』より

娘の愛がいじめをしているなど考えたこともなかった母親の赤木加奈子と夫の祐介。ある日、愛と仲良しだったはずの小春の母親・千春から、いじめ被害を訴える電話をうけ、加奈子の日常は一変します。

 『娘がいじめをしていました』より

動揺しながらも加奈子と祐介は娘の言い分を聞きますが、涙を浮かべながら「そんなの誰でも言う」「ぶつかっただけ」と言い訳する愛に、加奈子は「相手が傷ついたらそれはもういじめ」と激怒します。
中学時代にいじめられた経験のある加奈子は、娘に寄り添うべきだと頭ではわかっていても、いじめを許せない気持ちが先に立ってしまうのでした。

翌日、赤木家は親子三人で馬場家を訪れて頭を下げ、謝罪をします。

『娘がいじめをしていました』より


いじめられていた小春はこの一件から不登校になってしまいます。千春は部屋から出ようとしない小春にやきもきしながら、フリースクールへの登校も視野に入れ始めます。
ある日、一度は学校に行く意欲を見せた小春に千春は希望を抱きますが、翌朝になるとやはり小春は布団から出てきません。期待を裏切られた千春は思わず「いい加減にしなさいよ」と声を荒げてしまいます。

『娘がいじめをしていました』より


夏休みが終わって学校が始まると同時に、加奈子はSNSに「いじめ加害者」として愛の写真と実名が晒されていることに気づきます。愛から学校でいじめられていることを告白された加奈子でしたが、娘の気持ちに寄り添うことができず「自業自得」と突き放してしまいます。

そして、加奈子も千春もそれぞれに苦しみを抱えたまま、周囲を巻き込んで事態はさらに悪化していくのでした……。


親の視点から見た「いじめ」

  『娘がいじめをしていました』より


いじめられた実体験は経験者の口から語られることが多いですが、この作品は加害者と被害者の双方の親の視点で描かれています。いじめというテーマを取り扱うにあたって、著者のしろやぎ秋吾さんが「親たち」の心情を描いた理由は何だったのでしょうか。

「親として、子どものことを第一に考えて、子どもの心に寄り添って、状況を俯瞰して見て冷静に正しい選択を取るなんて、そうしないといけないのはわかるけど、そんな簡単にできる人なんているか?という思いがありました」

時に娘へのいらだちを押さえきれなくなる瞬間があったり、それでも娘に寄り添おうと努力したり、夫の言動にモヤモヤしたり……と、加奈子と千春はそれぞれの立場で葛藤します。「親」だからといって、常に百点満点の行動ができるわけではなく、どうしてもその時の感情で動いてしまう様子が作中ではリアルに描かれています。

「赤木さんも馬場さんもその時の感情で、自分の中では正しい選択をしたつもりだと思います」としろやぎ秋吾さんも語る通り、加奈子と千春それぞれの行動は「自分もこの状況なら同じような行動をするかもしれない」と思える描写が続きます。

SNSでの反響について


   『娘がいじめをしていました』より

また、しろやぎ秋吾さんに、SNSでの反響について伺いました。どの場面へのコメントが多かったのでしょうか。

「反響が特に多かったと感じたのは、加奈子が愛に声を荒げて怒るシーンです。威圧的な態度で子どもに対して気持ち悪いとまで言ってしまう、いかにも問題がありそうなシーンで、読者は加奈子を批難していましたが、気持ちはわかる、自分もそうしてしまうかもしれないという声もたくさん見られました」

この場面で加奈子は、「バレなきゃいいと思って気持ち悪い」「そんな子に育てた覚えないわよ」と、険しい表情、激しい言葉で愛を怒鳴りつけています。親として決して正しい行動とは言えないかもしれませんが、感情的になってしまう加奈子の気持ちも理解できる……そう感じた読者も少なくなかったようです。

作品は気持ちよく大団円を迎える展開ではなく、誰もが納得するようなわかりやすい「正解」がある物語でもありません。しかし、子どもへの向き合い方に戸惑い、葛藤する親たちの姿を通して、私たちに「いじめ」についてじっくり考える機会を与えてくれます。加奈子や千春の視点に立って、「親としてどうすべきか」を一緒に考えてみてはいかがでしょうか。


取材・文=レタスユキ

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