バレーボール選手がウイスキーの伝道師に?国内最難関「マスター・オブ・ウイスキー」を取得/ウイスキー1年目の教科書(1)
「ハイボールにしますか?」
今やどこに行ってもウイスキーのハイボールが飲める時代になりました。居酒屋では大きくビールをしのぐほどハイボールが飲まれ、バーではウイスキーをオーダーするとバーテンダーさんが「ハイボールにしますか?」と聞いてくる時代。この30年をお酒と共に過ごしてきた私からすればまったく想像もつかなかったことです。
この数十年では、日本のウイスキーの売り上げのどん底は2008年。今考えると、サ ントリーは当時ずいぶん変わったことをやったものです。それは「ウイスキーをジョッキで飲む」という、とんでもない提案。そしてソーダで割ったウイスキーに「レモン」を搾るというもの。これが大ヒットし、今や乾杯をするのにハイボールで、という光景も目にすることができます。さらにそのジョッキの形は、ウイスキーの瓶の形をあしらったものです。良い時代になったというか、私からすると信じられない時代になりました。
これって俺に向いている仕事なんじゃね?
あと、サントリーのもうひとつの取り組みとして、ウイスキーの語り手をつくる、という考えがありました。 「ウイスキーが売れない底を迎えた今だからこそ、ウイスキーを語っていく人間が必要だ」という理念のもと、社内資格である「ウイスキーアンバサダー制度」というものを立ち上げたのです。内容はというと、「1年をかけて自社のウイスキー蒸溜所をまわり、小さい試験管レベルからウイスキーを学び、クーパレッジでは樽をつくり (といっても実際に機械を使うわけではありませんが)、スコットランドに行き本場の歴史やつくり方を学び、筆記やプレゼンテーションの試験をこなして晴れて認定される」というものです。
私は当時引退をして(私は元々バレーボール選手でサントリーサンバーズに所属、2005年に引退)、営業を志願して業務につき、ちょうど2年が経ったころ。33歳で新入社員に近い業務を始め、自分の向かうべき道を見失ったころでもありました(2007年時点で35歳)。当時の支社長が「おい、太一(私は世間でも会社でも下の名前で呼ばれます)、新しいウイスキーの制度ができるから行ってこい」とのこと。仕事をしていてもいまいち面白さを見いだせなかった私は、こういわれた時、「これ以上仕事が増えるのかよ…勘弁してくれ」というのが率直な感覚でした。ただ、興味はありウイスキーは好きだった ので、まぁ、前向きに研修に臨んだのです。
そして数回の研修をこなしていくうちに、いろいろな技術者やセミナー講師の話を聞いて、ふと思いました。「これって俺に向いている仕事なんじゃね?」。元々おしゃべりでバレーボールの試合の解説者としても活動していた私にとってすこぶる魅力的に感じました。 とにかくウイスキーが「面白くなってきた」のです。普通にお酒の勉強をするのであれば絶対ここまでやっていません。「人に語る」というところに魅力を感じたのでしょう。
「マスター・オブ・ウイスキー」初の合格者に
ウイスキーは人間がつくった蒸溜酒で、そこには「樽で熟成させる」という神秘がありま す。様々なことを調べていくと案の定ズブズブはまっていきました。そしてウイスキーア ンバサダー取得後に意気揚々と営業に出てウイスキーの話をしていくようになりました。 バーテンダーさんともある程度対峙して話ができるようにはなりましたが、ひとつ困ったことがありました。 「他社のウイスキー」の話になるとまったく追い付かないのです。これには参りました。そして、好奇心旺盛な私はすぐさまインターネットで様々な他社ウイス キーのことなどを調べ始めました。
するとひとつのワードが検索で引っかかりました。 「ウイスキーコニサー」という民間の団体による資格制度です。当時のHPの内容はうろ覚えですが、こんな感じのものでした。「ウイスキーコニサーには3段階あって、下からウイスキーエキスパート、ウイスキープロフェッショナル、マスター・オブ・ウイスキーとあり、資格は下から順にしか取得できない。 2008年現在、マスター・オブ・ウイスキーの試験は開催されていない」とのこと。これが何を意味していたかというと、3段階の試験の真ん中が難しすぎてまだ最上位資格の試験が開催されていないということでした。試験が開催されていない、つまり開催された時に受かれば1番になれる(笑)ということです! これが、2008年にエキスパート取得、2009年にプロフェッショナル取得、そして初めて行われたマスター・オブ・ウイスキー の試験で2011年に私が初の合格者となったという経緯です。
著者=佐々木太一/『絵とマンガでわかる ウイスキー1年目の教科書』
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