【16歳で帰らなくなった弟】衣服も身につけず身元不明のまま亡くなった弟に何が?苦しみと絶望の中で家族が見たもの【全真相(ネタバレ注意)】

【ネタバレ】事件の真相

※ここからネタバレを含みます。ご注意ください。


弟のお葬式が終わって1週間後のこと。
「事故の本当のことが知りたい」――そんな思いがきむらさんの心の中でどんどん大きくなっていました。
そんなとき、家に訪ねてきてくれたのが、弟が小学校のときに入っていたクラブの先輩、ケンタくんでした。実は彼は、事故の現場に居合わせたというのです!

あの日、事故現場の目と鼻の先にあるファミレスの前で談笑していたというケンタくん。事故を目撃し、慌てて公衆電話に走り、救急車を2台呼びました。バイクの運転手が孝であることに気づいたケンタくんが呼びかけると、孝は返答したそうです。

その時点では、孝は生きていて、呼びかけに応えることもできたのです。

しかし運悪くその日は事故が多く、やってきた救急車は1台だけでした。その最初の1台に女の子を乗せるように頼んだのは、孝本人でした。
「もしあのとき、救急車が2台来ていて、すぐに孝も運ばれていたら、孝も助かったんじゃないか…」
と悔しそうに話すケンタくん。続けて、「孝は信号を守っていて、青になったからアクセルを全開にしたこと」「警察が来たときには、バイクがなくなっていたこと」「免許証や所持品があたりに散らばっていたこと」を話してくれました。

事故当日、孝の身元が判明するのに時間がかかってしまったのは、バイクが盗まれたうえに、免許証も周辺に飛んでいってしまっていたからだったのです…! 事故の騒動でバイクがどこに行ったのか、周囲の人はまったく見ていなかったため、警察は相当焦り、近所の住宅街を探し回っていたこともわかりました。盗まれたバイクはいろいろな部品が盗まれた状態で見つかったようだ、とも…。

また、別の日のこと。
母ときむらかずよさんは検察庁にいました。孝の事故に関する調書を見るためです。取り調べ調書には赤裸々な事実がつづってありました。
事故直後にきむらさんの家に来て、自分が全部悪いと言って土下座した加害者の青年は、「バイクが信号を守らず直進してきた」と嘘の証言をしていました。さらに、加害者に右折するよう指示した同乗者も、同じくバイクが赤信号なのに無視していたと虚偽の発言をしていたのです。

調書を読み終えた母はすぐ加害者の青年を家に呼びました。すると、加害者の青年は真っ青になって謝罪しました。

同乗者は直進してくる孝のバイクを確認することなく、信号が青に変わったから右折しろとせきたてた。そして加害者もその同乗者に言われるがまま、前方をよく見もせず慌ててハンドルを切ってしまった。

これが事故の真相でした。

事故が起こって数年、家族にとっては寂しくむなしい時間が過ぎていくだけでしたが、それでも少しずつ少しずつ、家族は長い年月をかけて現実を受け止めていくのでした。改めて周囲の方の心遣いや優しさに気づくことも多かったといいます。

作者インタビュー

この漫画を描いたきむらかずよさんにお話しを伺いました。

――読者からはどのような反応がありましたか?

きむらかずよさん:この話をブログに描き始めてから読んでくださる方が爆発的に増えました。たくさんのコメントを頂いたのですが、その中で私と同じように家族を亡くした経験のある人が、「自分を重ねて涙が止まりません」とか「抱えていたものをはじめて打ち明けました」とか、自分の辛い思いを吐き出してくれるんです。
大切な人を亡くして悲しみにくれている方は、少しでも救いを求めてブログで自分と同じ立場の人を探しているのだと知って、「自分の経験が誰かの役に立つのならちゃんと描かかなくちゃいけない」という気持ちになりました。そういう人たちに私自身も励まされましたし、一緒に走っているような感覚で描ききることができました。

――きむらさん自身も事故のことを描くのは勇気がいったことだと思います。

きむらかずよさん:そうですね。悩みに悩んで、描いてみてしんどくなったらいつでもやめようと思っていました。とくに一緒に亡くなった女の子のことは辛すぎるので触れないでおこうかなと思っていたくらいです。でもいろんな方からのメッセージを読んで、「私も向かい合わなくちゃいけない」「もしかしたらこれを描くことで救われる人がいるかもしれない」というのが頭をよぎりました。描き終えた今、自分を削れば削るほど人に届くんだなということを実感しています。

最後に

ケンカや反抗ばっかりしていた家族との毎日。
きむらかずよさんがずっと続くと思っていたそんな日々は、突然終わってしまいました。その何気ない日々がいかに貴重かは、なくなって初めて気づくのかもしれません。

弟の死という壮絶な経験を通して人間の汚さ、弱さ、醜さを見てしまった17歳のきむらさんが、また前を向いて歩きだすことができたのは、周囲の人の温かさ、優しさだったという事実に救われます。

大切なものを失った経験のある方に読んでいただきたい作品です。


文=山上由利子

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