「静観」が招いた悲劇。ご近所トラブルの意外な結末を描いた『犯人は私だけが知っている』著者・ゆむいさんに聞きました

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 『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

身近で何かが起こっていることは分かっていても、積極的には関わらずに「静観するしかない」。そんな状況は日常的によくありますが、そんな「静観」があるコミュニティの崩壊を招くことも……。

「ページをめくる手が止まらない」「ココに行き着くのか…と不意をつかれた」とSNSでも話題の、ゆむいさんの新刊『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』。同じ園に子どもを通わせる4人のママ友の関係が、ある事件をきっかけに崩れていく様子を、リアルかつミステリタッチで描いた作品です。

まずは詳しいあらすじをご紹介しましょう。

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』あらすじ


『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

同じ幼稚園に子どもたちを通わせている4人のママ友たち。いつも登降園で顔をあわせていました。
そんなある日、帰ってきた子どもたちが社宅の駐車場で遊ぶうちに一台の車に傷をつけてしまいます。

 『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

「この傷は誰が…?」
誰が傷をつけたのかはわからないものの、おしゃべりに夢中になるうちに子どもたちから目を離してしまった責任から、4人は協力して対応しようと話し合います。

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

車の持ち主は大切な車に傷がついたことにショックを受けつつも、保険で対応してもらえればいいと理解を示します。翌日、警察がやってきて調書を取っているところを近所の人に見られ、4人は肩身の狭い思いをします。

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

ディーラーで修理の見積もりを取ってもらうと、外車のため60万円という額が提示されました。一方で保険会社からは車両の時価が下がっていると20万円しか保険金が降りないと言われます。4世帯で割って1世帯あたり10万円を負担することになりました。

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

翌日、警察の現場検証の様子を人に見られたことで近所には噂が広まっていました。
さらに4世帯のうち、雪田さん親子は園バスの利用を辞め、集合場所に現れなくなります。高見さんによると「車を傷つけたのは息子だから賠償は全て引き受けます」と雪田さんが話したとのことでしたが、月村さん・西井さんのふたりはその話を聞いて信じられない思いでいました。

 『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

そんなある日、近所のゴミ捨て場ではボヤ騒ぎが起こり、月村さんの自転車のサドルに穴が開けられるなど、不穏な事件が次々と起こります。立て続けに発生するご近所トラブル、犯人の意図は一体どこにあるのでしょうか。

この作品について、著者のゆむいさんにお話を伺いました。

サブタイトルの「静観」に込められた思いは


──サスペンス風のゆむい作品はとても新鮮でした。“静観”の結末がこんなことに…と驚きがありつつも納得感もありました。サブタイトルにもなった“母たちは静観する”。差し支えない範囲で、この言葉に込められた意味・思いを教えていただけますでしょうか。

ゆむいさん:
「静観する」は「距離を置いて深く関わらない」というような、なんだかちょっと冷たい印象がありますが、子育てにおいての「静観」は「我が子を守る」ということに繋がります。自分のことだけだったらド派手に行動できる人でも、親となり、無防備な子供がいると守りの体制になるしかなくなります。そういうもどかしさをタイトルに持ってきました。

 『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

──確かに、子どもがいると極力トラブルには巻き込まれたくないですよね……。この作品では、不穏な状況の中で登場人物たちがそれぞれ「誰を信じていいかわからない」「みんなから犯人扱いされてる?」と疑心暗鬼になっていきます。このあたりの心情を描かれるにあたり、気を付けた点や込めた思いなどあれば教えてください。

ゆむいさん:
昨日まで普通に仲良く接していた人を疑わなければいけない状況は、ものすごいストレスだと思います。
それぞれ一人で考えを巡らせる時に「本当はあの人のああいうところが嫌いだった」など愚痴が出てきますが、その描写も「子供が第一」であることを大前提に表現しました。

『犯人は私だけが知っている~母たちは静観する~』より

──今作の中で、ゆむいさんの印象に残っているシーン、お好きなシーンを教えていただけますでしょうか。

ゆむいさん:
後半の、謝恩会で答え合わせがされるシーンです。「今日が最後だから」ということでみんなが「実は…」と一斉に語り出す場面を背景を真っ黒にして表現しました。

──この謝恩会の場面はとてもスリリングでしたね! 読んでいて思わず「うわぁ…」と声が出そうでした。

ゆむいさん:
「静観」の脆さと面白さがこの瞬間に詰まっていると思います。

    *     *     *

ゆむいさんが語るように、「静観」していた人々が一斉に口を開く場面で、畳み掛けるように明かされる「真実」は圧巻です。だけど、本当の事件の真相は……。
サスペンスタッチで描かれるご近所トラブルの数々。それはいつ自分の身にふりかかるかわからないだけに、リアルさに胸がザワつく物語です。

著者プロフィール

著者:ゆむいさん

ゆむい:イラストレーター・ブロガー。育児や日々の出来事を中心とした4コマ漫画で3学年差兄弟の成長を記録しているブログ「ゆむいhPa」を運営。著書に『夫の扶養からぬけだしたい』、『親になったの私だけ!?』『ママはパパがこわいの?』『夫婦を続ける自信がない』など。

取材=ナツメヤシ子/文=レタスユキ

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