授乳時、唐突に感じる不安や不快感…ママも周囲も知っておいて欲しい「D-MER(不快性射乳反射)」という症状<医師監修あり>

#育児・子育て   
つんさんの授乳時に起こっていたD-MER(不快性射乳反射)

愛おしくてたまらないベビーなのに、おっぱいをあげているとき、急に不安や不穏な思いが浮かんでしまった──。
言葉にしにくいモヤモヤした感覚、ネガティブな感情からなんとなく相談することができなかったり、自分を責めてしまったりしていませんか?
レタスフレンズのつんさんは、一人目のときも二人目のときも、授乳中に起こる不快感に悩まされていました。そして、原因がはっきりしないこの体験を発信すると、実は「D-MER(不快性射乳反射)」という症状だと知ったそうです。
授乳中に起こる「D-MER」とは、どういうものなのでしょうか?

今回の経験をつんさんに共有していただき、女性医療クリニックLUNA横浜元町の副院長である小野寺真奈美先生に「D-MER(不快性射乳反射)」についてお話を伺いました。


なぜ? 授乳をしていると理由もなく不安な思いでいっぱいに


つんD-MER(不快性射乳反射)11

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ヤンちゃんとムギくんふたりの姉弟を育てる、つんさん。
ふたりがまだ乳児だった頃、授乳をしていると突然不安な感情に襲われていたそうです。
「しにたい」「もうお終いだ」「何もかも嫌」「気持ち悪い」…それが起こるのは最初の数十秒で、その数十秒を乗り越えると何事もなかったようにいつも通りの感覚に戻っていきます。
「最初の数十秒なので<少し頑張れば>とも思いますが、授乳は一日に何回もありますし、とにかく一気に気分が悪くなるのでその数十秒だけでもとにかくとてもつらかったです。なので授乳する前は、不快感に備えてから挑んでいました。一生懸命飲んでる娘や息子の可愛い顔を見て癒されながら授乳していました」。

必ずやってくる重苦しい不快感を受け止めなくてはいけない授乳。毎回、つんさんは相当な覚悟をもって授乳に臨んでいたのではないでしょうか。

病院の先生やママ友も分からない…苦しい思いを理解してもらえない辛さ


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授乳時にネガティブな感情に襲われてしまうことを、病院の先生に相談したつんさん。しかし、その状況に対する理解は得られず、病気や産後鬱ではないかと心配されてしまい、深く相談することができませんでした。また、1人目の時は周りのママたちにも知っている人はいなかったそうです。
「初めて同じ症状の友人に出会えた時は、自分だけじゃなかったんだ、変じゃなかったんだと本当に安心しました」。

その後、インターネットで情報を発信すると、実は同じ症状で悩んでいる方がいたこと、そして、この症状が「D-MER(不快性射乳反射)」であるということを知ります。


「我慢しているだけで、実はたくさん同じ症状で悩んでいる方たちがいることを知って、これは広めなければいけないと思いました。2人目の時に助産師さんたちに自分からこういう症状があると伝えたり、友人に広めたりしました」。

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「1人目の娘のとき、D-MERはとても辛かったのですが、娘がとにかく乳が大好きだったので2歳半まで授乳していました。友人はつらすぎて自分を守るためにすぐ授乳やめたそうです。自分を守ることもとても大事だと思います」。


約9%の母親が感じている!専門医に聞く「D-MER(不快性射乳反射)」


つんさんを思い悩ませた「D-MER」。一人目の授乳時は専門家であっても知らなかったというこの症状について、女性医療クリニックLUNA横浜元町の副院長であり、2児の母でもある小野寺真奈美先生にお話をお伺いしました。

女性医療クリニックLUNA横浜元町小野寺真奈美副院長


つんさんが経験されたD-MER(不快性射乳反射)とは、具体的にどのような症状なのでしょうか?

「不快性射乳反射(D-MER)」とは、「Dysphoric milk ejection reflex」と言われている現象のことで、2010年ごろから徐々に浸透してきた概念です。
授乳中、特に母乳排出直前に不快な症状が起きる概念のことで、具体的には、突然起こる不快な気分、何とも言えないぞわぞわした感じ、吐き気、イライラ、中にはパニックなどといった症状が起きることがあります。授乳は幸せなものだという印象がありますが、このように不快になることもあります。大体9%程度の母親にD-MERの症状が生じているとの報告もありました。


症状としてはどれくらい続くものなのでしょう?

授乳をし始めて大体30秒から数分以内(多くは5分以内)に、症状は治まることが多いといわれています。
産後3カ月ごろまでには落ち着くとの報告もありますが、断乳時期まで続く人もいて様々ですし、この症状が不快で断乳を選択される方もいます。
一人目のお子さんから出ることもあれば、二人目以降に症状が発症することもあり、また、途中から症状が出るなど、そのメカニズムはまだわかっていません。

D-MERへの対処方法はないのでしょうか?

メカニズムの多くがわかっておらず、治療法などは確立されていないのが現状です。
ただ、D-MERの概念を知っておくことで「このような症状が起きることがある」といったん自身で受け止めることができることになり、現在できる対処法になるかと考えます。「いつ・どのような症状が起きる」ということをメモしておくこともいいかと思います。
また、自身が負担に感じるようであればミルクに変更することも選択のひとつです。母乳でもミルクでもどちらでも愛情の形は変わりませんし、なによりもお母さんが笑顔で元気に育児をすることが大切だと思います。

なぜD-MERはあまり知られていないのでしょう?

2010年ごろから定義された概念の「D-MER」は、まだ広く知られていないかもしれません。「授乳することが不快だった」と聞くことはあっても、「たまにいるのよね」で流されてしまったり、そして現在でもそのようなことは多いかと思います。
実際、当事者の方々は授乳に対しての恐怖や、愛着形成への不安などあるかと思います。現在のところ、授乳の際に出るプロラクチンというホルモンとそれに関係するドーパミンの関与が示唆されています。そのため母親の精神的ものでもなければ、子どもへの愛着形成ができていないということでもないのです。今後は研究が進み、もっと広く認知されることを期待しています。


まだ広く知られていないという「D-MER(不快性射乳反射)」。もし、授乳の際にネガティブな感情に陥ってしまっても、決してご自身を責める必要はありません。そういった症状があるということをご自身はもちろん、周りの方にも知ってもらい、少しでも心の負担が少なく過ごせる方法を探していきましょう。


つん
2人の子どもと猫とのエピソードを中心に日常漫画を描いています。おっとりシャイガールのヤンちゃん&思い出が大好きなムギくんの子ども2人と、17年にヤンちゃんが迎えたオス猫のジョルノとのエピソードを中心に、日常漫画を描いています。


取材・文=伊藤延枝
医療監修=女性医療クリニックLUNA横浜元町 副院長 小野寺真奈美先生

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