厄払いしたはずなのに! 父に呼び戻され家に帰ると、窓が割られていた話

父が家の窓を

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『猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました』 4回【全8回】


日常に転がるちょっとしたトラブルを、ドライブ感あふれる筆致でユーモアたっぷりに書きSNSで人気を博しているやーこさん。その文章で日々ファンを集めています。

そんなやーこさんが綴る、真偽は定かではない(!?)エピソードをお届けします。

帰宅したら窓が割られていてまさかと思う物が家具から発見された話

友人と厄祓いに行く事となった。
集団を一度に祈祷する為、神主が三人がかりで名前を読み上げ、私は己の聴力の限界を試してみたくなり名前を聞き分けようと尽力していた。

しかし、途中で鼻腔が痒くなり、くしゃみの兆候が表れた。
皆が微動だにせず静かに祈祷を受けている中、くしゃみなどしようものなら大変な顰蹙(ひんしゅく)を買う事であろう。

友人に気がつかれぬよう、顔を背け顔の筋肉のみでくしゃみを抑え込もうとしていたところ、隣のオヤジが気配を察したのかこちらに顔を向けた。
ここからオヤジの厄が始まった。
オヤジの視界に凄まじい形相でくしゃみと格闘している私の顔が直撃した。

その様は厄の化身が苦悶の表情を浮かべ、今まさに祓われようとしている瞬間のようであったに違いない。
突如横に現れた具現化された厄に、オヤジは声を出してはならぬと耐えるはめとなった。
厄年半端ねぇと思った事だろう。
祈祷中である為弁解する事もできず、そのままオヤジと私の孤独な戦いが始まった。
オヤジは私という厄に耐え、私はくしゃみに耐えている。もはや祈祷どころではなかった。

その後、祈祷が終わり我々は解放された。
オヤジは疲れた顔をしていたが、私と目が合うと足早に去っていった。
私は祓われる厄の気持ちを知った。
これで今年は万全であると、明るい未来を祝して友人と明太子かけ放題という夢のような食事をする事となった。

しかし、食べ始め数分経った頃、私のスマホに着信が入った。
父が家の窓をぶち破ったという報告であった。
気合いの入った父である。
ハリウッド映画のように両腕を交差させ窓に飛び込んだのかと期待したが、どうやらたんすを窓から家に入れようとした際にバランスを崩し、悪役レスラーの大技の様に窓に投げ込んだらしい。
早急に帰ってきてほしいという旨であった。

凄まじい形相


私は明太子と別れを告げる事となった。
友人は着信が来たあたりで既に嫌な予感がしていたと、私との付き合いの長さから第六感を開花させていた。

帰宅し、件の部屋の襖を開けると、外からの吹き荒れる風に髪を乱される父が仁王立ちし、その背後の窓にたんすが刺さっていた。
なかなかの衝撃映像であった。

話を聞けば、中に物を入れたまま動かした為にバランスが崩れたようであったので、私は一先ず中身を出そうとたんすの開き戸を開けた。
すると中から瞬きをするタイプの迫力溢れる人形と、パニックに陥ると四次元のポケットから大量のガラクタを放出する猫型ロボの頭部が転がり落ちてきた。
猫型ロボが重傷である。

一瞬呪いかと思ったが、幼き日に一緒に遊んだ物達であったので、とりあえず自室に置いた後に父と協力したんすを室内へ入れた。
帰宅してものの数分でこの重労働である。
もう既に明太子が恋しい。
私は明太子と友人を置いてきた事に思いを馳せた。

翌日、私は高熱を出した。
検査をしたところインフルエンザであった。
熱にうかされる私を、枕元の開眼した人形とロボの頭部が見守っている。
インフルエンザになった事を友人に話すと

「厄祓いとは……」

と、言葉を漏らしていた。
しかし、その後は健康そのもので過ごした為、効果があったと言えよう。

開眼した人形


【著者プロフィール】
日常に転がるちょっとしたトラブルを、ドライブ感あふれる筆致でユーモアたっぷりに書き、SNS等で配信中。抱腹絶倒の展開と劇的なオチの真偽は定かでなく、謎多き存在だが、その世界観に魅了されるファンが増え続けている。

※本記事はやーこ(著)、栖 周(イラスト)の書籍『猫の診察で思いがけないすれ違いの末、みんな小刻みに震えました』から一部抜粋・編集しました

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