「夜逃げ屋」に就職して実体験を描く異色の漫画家・宮野シンイチさんインタビュー「この人を漫画に描いてみたい」



漫画の連載を勝ち取るべく、編集部へ持ち込みを繰り返していた漫画家の宮野シンイチさん。しかしまるで手応えがなく、もはや自分が何を描きたいのかもわからない状態に陥っていました。
そんなある時、テレビ番組で偶然見かけたのが「夜逃げ屋」という仕事でした。


その会社を取り仕切るパワフルな女社長に感銘を受け、なんとか漫画のネタにできないかと、思い切って取材を申し込むことに。
そして、電話で指定された待ち合わせ場所に颯爽と現れたのは、テレビで見たあの女社長でした。

その日は話を聞くだけのつもりの宮野さんでしたが、その日にいきなり夜逃げの現場作業を手伝うことになったのです……。
著者・宮野シンイチさんインタビュー
――宮野さんが漫画家を目指したきっかけを教えてください。
宮野シンイチさん:自分は勉強ができるわけでもスポーツが得意なわけでもない、特に取り柄のない少年だったので、夢という夢を持っていませんでした。ただ、本や漫画は子どもの頃からずっと好きで、ジャンルを問わずいろんなものを読んでいたんです。
それで、高校生の頃に「クローズ」という不良漫画を読んだのですが、その中で作者さんが漫画家を目指して奮闘する話を書いていらっしゃったんです。その話に感銘を受けて、自分も何か描いてみようと漫画家を目指し始めました。

――漫画の持ち込みがなかなかうまくいかず落ち込んでいた頃に「夜逃げ屋」という職業に出あったのですね。
宮野シンイチさん:そうなんです。たまたまテレビを観ていた時に、「夜逃げ屋の現場に潜入!」というドキュメンタリー番組が流れていたんです。それを観て「すごい!」と衝撃を受けたのが全ての始まりでした。
夜逃げと聞くと「借金取りから逃げる」というのを連想するのが普通ですよね。でも実はその多くがDVやストーカーから逃げるための「夜逃げ」なんです。しかも夜逃げ屋の社長が女性というのにものすごく興味が湧きました。この人を漫画に描いてみたい!と思ったんです。
それで、思い切って夜逃げ屋の会社に電話して、実際に現場に入って勉強させていただくことになりました。

――漫画のネタを探すために身一つで現場に飛び込んでいく度胸がすごいですね! 漫画の内容は“ほぼ実話”とのことですが、どの程度フィクションを交えて描かれているのでしょうか?
宮野シンイチさん:漫画の表現ではとにかくわかりやすさを優先しています。例えば、第二話で初めて夜逃げの現場に入るシーン。制服警官が2人いるんですが、実際はスーツ姿の刑事でした。ただ、スーツ姿にするとパッと見た読者の方が、警官なのか誰なのか伝わらないなと思ってわかりやすく制服姿の警察官に変更しました。
というように、読者の方がわかりやすいと思える表現を心がけていますので、ところどころそういった変更はあります。

動いて動いて動きまくる!夜逃げ屋の現場で心がけていること
――夜逃げ屋では具体的にどんな仕事をされているのですか?
宮野シンイチさん:もう僕は思いっきり下っ端でして、年齢も経験も何もかも1番下なので、ひたすら荷物を運んだり、まとめたりです。ちなみにトラックの運転は、免許を持っているのに下手くそなのでやりません。横に座ってます(笑)。

――夜逃げ屋の仕事をする中で心がけていることはありますか?
宮野シンイチさん:搬出の時、とにかく早く動くことです。加害者が予定より早く帰ってくることなんてザラにあるので動いて動いて動きまくります! 遅くていいことなんて基本的に何もないので。
それでも社長に「遅い!」と叱られるんですけどね(笑)
***
「夜逃げ屋」という特殊な仕事を漫画に描いてみたい。そんな思い付きから実際に過酷な仕事現場へ飛び込んだ宮野シンイチさん。現在も漫画家と夜逃げ屋という二足の草鞋を履きながら、夜逃げしたい人々の手助けをしています。
取材・文=宇都宮薫
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