65歳からの健康・介護にかかわる相談窓口
「地域包括支援センター」をまず押さえよう
お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんの会話形式でわかりやすく「介護」のリアルと乗り切るコツをお送りします。
CHECK!
・介護の最初の相談窓口
・親でも子どもでも困りごとはすべて相談
・相談は親の住所地にある地域包括支援センターへ
安藤なつ(以下、安藤):親の介護での子どもの役割や、会社が応援してくれることはわかったのですが、いつ何からはじめたらいいのかさっぱりわかりません!
太田差惠子(以下、太田):親について少しでも心配なことがあると感じたら、親が住む地域の「地域包括支援センター」に相談するといいですよ。
安藤:ちいきほうかつとは?
太田:「地域包括支援センター」とは、介護についての総合相談窓口的な役割を担っている施設のこと。中学校の学区に1カ所程度設置されていて、全国で5400カ所以上、支所も含めると7300カ所以上もあります。
安藤:そんなにたくさんあるんですね。じゃあ、自分の家の近所で探してみようかな?
太田:ちょっと待った! 親が住む地域を管轄するセンターのほうがいいですよ。というのも、住んでいる自治体によって行われているサービス内容は異なるからです。センターの管轄は、住所地ごとに決まっています。親の暮らす地域を管轄するセンターがどこかわからなければ、役所に問い合わせれば必ず教えてくれます。電話で相談することもできるので、親の様子で心配なことがあったら、相談してみましょう。
安藤:具体的には何をしてくれるのですか?
太田:相談できることは、下図のように多岐にわたります。もし、地域包括支援センターで対応できないことでも、問い合わせ先を教えてくれるなど何かしらのサポートはしてくれます。
社会福祉士・保健師・主任ケアマネジャーなどの資格を持つ職員が、本人だけじゃなく、その家族の相談にものってくれます。相談は、無料なので気軽に利用してみてください。
安藤:無料なんですか! それなら、相談しやすいですね。
太田:地域包括支援センターの役割を一言でいうと、高齢者の「困った!」をなんでもサポートしてくれる「よろず相談所」というイメージです。
たとえば、介護が必要な段階じゃなくても、「健康のために体を動かしたい」という悩みに、運動教室を紹介してくれたり、「1 人暮らしで話し相手がいないから寂しい」という人には、地域の人と触れ合えるサークル活動や話し相手のボランティアを紹介してくれたりと、生活全般のお手伝いをしてくれます。
「最近、物忘れが多くて困っている」という悩みにも、センターで相談にのってくれます。親の様子が心配だからといきなり「病院へ行こう!」だと、親の抵抗にあうこともありますが、地域包括支援センターにちょっと相談してみるということなら、親も重く受け止めないかもしれません。
安藤:なるほど! 日常の小さい悩みは、離れて暮らしている子どもはなかなかサポートできないから、とてもありがたい存在ですね。
太田:子どもが実家に何度電話をかけても、親が電話に出てくれず、困ってしまって、地域包括支援センターへ相談の電話をしたら、代わりに様子を見に行ってくれたという話もありますよ。
介護保険制度についての相談や、要介護認定の手続きも代理でやってくれます。また、自治体で独自に取り組んでいるサービスもあるので、親の住む地域の地域包括支援センターは、一度チェックしておいてください。
安藤:帰省したついでに、親と一緒に行ってみるというのもいいかもしれませんね。
例えばこんなときに気軽に連絡してみましょう
・最近、物忘れがひどくて…。探し物ばかりしている
・今の健康を保つために体を動かしたい
・親に介護が必要かどうかもわからない
・日々の困りごとをどこに相談したらいいのかわからない
・離れて暮らす親の見守り方法を相談したい
・親に介護保険のサービスを受けさせたい
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介護については「自分が何とかしなければ」と孤独になってしまいがち。
でも実はプロに頼ったり、悩みをシェアすることで最新の情報が得られたり、心や金銭的な負担が軽くなることも。ひとりで抱えこまず、できるだけ周りを頼りたいものですね。
安藤なつ(メイプル超合金)
1981年1月31日生まれ。東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成。ツッコミ担当。2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティを中心に女優としても活躍中。介護職に携わっていた年数はボランティアも含めると約20年。ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を持つ。2023年介護福祉士の国家試験に合格。厚生労働省の補助事業『GO!GO!KAI-GO プロジェクト』の副団長を務める。
太田差惠子(介護・暮らしジャーナリスト)
京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材 。「遠距離介護」「高齢者施設 」「仕事と介護の両立」などをテーマに執筆や講演を行っている。AFP(日本FP協会認定)資格を持ち、「介護とお金」についても詳しい。「Yahoo! ニュース エキスパート」オーサーなどでも活躍中。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)など著書多数。
※本記事の情報は2024年6月現在のものです。法令や条例等の改正などにより、内容が変更になる場合があります。
著=安藤なつ(メイプル超合金)、太田差惠子/『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』