急な入院から介護になったらどうする?
「在宅」「転院」「施設」の3つの選択肢がある
お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんの会話形式でわかりやすく「介護」のリアルと乗り切るコツをお送りします。
CHECK!
・最初に入院する病院はいつまでもいられない
・入院中に退院後の居場所を考える
・入院中の困りごとは医療ソーシャルワーカーへ相談する
安藤なつ(以下、安藤):緩やかに介護が必要になっていく場合だけじゃなく、突然の病気やケガなどでの入院から介護が必要になるというケースも考えられますよね?
太田差惠子(以下、太田):そうですね。そういうケースは多いと思います。つい最近実家に帰ったときは元気だった親が、急に救急車で運ばれて入院することになった、なんてことは決してめずらしいことではありません。
安藤:退院後は、在宅での介護が難しくなってしまうこともありそう。
太田:そうなんです。突発的にいろいろなことが起こってしまうと、パニックになりますし、何をしたらいいのか途方に暮れるものです。そうならないためにも、ざっくりでいいので、入院した場合の介護になるまでの流れや、やっておくべきことなどを理解しておくことが大切です。
安藤:事前に流れを理解しておけば、いざというときに慌てずに済みますね。
太田:はじめに、入院するのは一般的な治療を行う病院、「急性期病院」と呼ばれる病院です。
安藤:最近の病院ってあまり長く入院できないと聞きますよね。
太田:ここでは、重症度や緊急度の高い患者の治療が中心となりますので、症状が安定して、治療が落ち着くと退院になります。退院後は、「在宅」「転院」「施設」の3つどこへ移るのかを決める必要があります。
安藤:うーん。症状によっては、自宅に戻るのが無理な場合もありそうだし、施設はいきなり入居できないですよね。
太田:そういったケースは、回復期リハビリテーション病院、地域包括ケア病棟などに転院することになります。回復期リハビリテーション病院の場合は、脳血管疾患、急性心筋梗塞など入院可能な疾病や傷病の条件が、厚生労働省によって細かく決められています。
「地域包括ケア病棟」であれば、疾病や傷病の条件がなく、症状が安定したけどもう少し経過観察が必要など、医師の判断があれば最大60日まで入院できます。介護老人保健施設は、在宅復帰を目指す人が、医療ケアやリハビリを受けられる施設です。
安藤:その期間に、介護体制を整えることができそうですね。
太田:また、転院した病院や施設でリハビリなどをしたとしても、自宅への復帰(在宅介護)が難しいケースもあります。その場合は、高齢者施設へ入居することも検討しましょう。
安藤:本人の希望だけを最優先するということでなく、介護する側のケアも大切ということですよね。
太田:はい。家族でよく話し合って決めることをおすすめします。すぐに決められない場合は、一旦、介護老人保健施設に入居する手段もあり。介護保険施設の1つで、3か月ほどを目途に入居してリハビリなどを受けます。
安藤:ところで、退院後、回復期リハビリテーション病院や地域包括ケア病棟へ移る場合、医師の判断が必要になるし、施設を探すのも医療や介護の知識がないと難しいと思うのですが、どうしたらいいですか?
太田:入院中や退院後の不安は、「医療ソーシャルワーカー」に相談するといいでしょう。医療機関などにおける福祉の専門職で、「医療相談室」「総合相談室」などと呼ばれる部署に在籍しています。本人はもちろん、介護をサポートする家族の相談にものってくれます。基本的には、事前に予約が必要になります。
安藤:急な入院で、戸惑うことが多そうだから、相談できる人がいるのは心強いですね。
太田:退院時に、「退院時ケアカンファレンス」という会議を開催して、退院後のケアについて、具体的なプランを立てることも可能です。この会議では、病院側の医師、看護師、医療ソーシャルワーカーとケアマネジャー、本人、家族などで話し合います。
安藤:「退院時ケアカンファレンス」、重要な会議ですね!
太田:ただし、すべての病院で積極的に退院時ケアカンファレンスを開催しているわけではありません。なので、自分から「退院時ケアカンファレンスを希望します」アプローチをするようにしてください。退院後は自宅などでケアを行う必要があるのに、希望する対応が得られない場合は、「地域包括支援センター」へ相談してみましょう。
安藤:ここでも、地域包括支援センターですね。頼りになります!
太田:また、入院中に要介護認定の申請をしておくのもいいでしょう。認定調査員は、病院にも来てくれます。申請のタイミングは、医師や医療ソーシャルワーカーに相談してください。
安藤:要介護認定をしておけば、退院後すぐに介護保険が利用できるし、ケアマネジャーにいろいろサポートしてもらえるから安心ですね。
太田:はい。退院後の介護の体制作りのサポートをケアマネジャーに相談できるのでできるだけ早めに申請することをおすすめします。
~~~
介護については「自分が何とかしなければ」と孤独になってしまいがち。
でも実はプロに頼ったり、悩みをシェアすることで最新の情報が得られたり、心や金銭的な負担が軽くなることも。ひとりで抱えこまず、できるだけ周りを頼りたいものですね。
安藤なつ(メイプル超合金)
1981年1月31日生まれ。東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成。ツッコミ担当。2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティを中心に女優としても活躍中。介護職に携わっていた年数はボランティアも含めると約20年。ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を持つ。2023年介護福祉士の国家試験に合格。厚生労働省の補助事業『GO!GO!KAI-GO プロジェクト』の副団長を務める。
太田差惠子(介護・暮らしジャーナリスト)
京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材 。「遠距離介護」「高齢者施設 」「仕事と介護の両立」などをテーマに執筆や講演を行っている。AFP(日本FP協会認定)資格を持ち、「介護とお金」についても詳しい。「Yahoo! ニュース エキスパート」オーサーなどでも活躍中。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)など著書多数。
※本記事の情報は2024年6月現在のものです。法令や条例等の改正などにより、内容が変更になる場合があります。
著=安藤なつ(メイプル超合金)、太田差惠子/『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』