タチウオが立ち泳ぎをする理由は「深海で生き残る」ため? 考え抜かれたスタイルの秘密/すごすぎる海の生物の図鑑(6)
人間から見ると不思議がいっぱいな水の生き物たち。大きな海の秘密、教えます!
多様でユニークな生態が面白い、水の中を生きる生物。思わずびっくりしてしまうような生存戦略の数々は、非常に興味深く、子どもはもちろん大人の知的好奇心も満たしてくれるはずです。
水の世界のトリビアをぜひお楽しみください!
※本記事は鈴木香里武著の書籍『水の世界のひみつがわかる! すごすぎる海の生物の図鑑』から一部抜粋・編集しました。
タチウオが立ち泳ぎをするワケ
タチウオの名前の由来は、太刀に似ていることと、立ち泳ぎをすることからきていますが、これには深海で生き残る秘訣があるのです。
光が少ない深海では、周りを見回してもなかなか獲物を見つけられません。そこで捕食者たちは上を見上げます。すると、わずかに届く日光の中に通りがかった生き物のシルエットが浮き出て、影で獲物を見つけることができるのです。ならば上向きに立って泳げば見つけやすく、さらに下から襲いかかれば素早い魚も簡単に逃げられないので捕食もしやすい! 賢い戦略です。
もっと深い所にはタチウオを見上げて狙う捕食者が潜んでいます。細長い体を横にして泳いでいたら、下から見たときの自分の影は線として敵の目に映り、簡単に見つかります。でも体を直立させていれば影は点になって、見つかる可能性を減らせます。獲物を狙いながら身を守る意識も忘れない。タチウオの立ち泳ぎは、シンプルなようで実に考え抜かれたスタイルなのです
銀色に光り、立って泳ぐ姿はまさに太刀(長くて大きな刀)のよう! 触れただけで切れるほど鋭い歯を持っているので、ある意味名前の通り。
タチウオの立ち泳ぎの秘密
腹鰭や尾鰭はなく、長く連なる背鰭を波打たせて移動するという、立ち泳ぎに特化した体型。泳ぎはあまり速くない分、鋭い歯が並ぶ大きな口で真下から襲い掛かることで獲物を逃さないようにしている。
豆知識
銀ピカに輝くタチウオの体表は、かつてマニキュアのラメに使われていたほど。深海で目立ちそうですが、ギラギラ度合いを極限まで磨いているため、光のない世界では周りの闇を映す鏡となり、背景に溶け込むことができるのです。
【著者プロフィール】
鈴木 香里武(すずき かりぶ)
幼少期から魚に親しみ、専門家との交流や様々な体験を通して魚の知識を蓄える。学習院大学大学院で観賞魚の癒し効果を研究した後、現在は北里大学大学院にて稚魚の生活史を研究。海好きコミュニティ「海あそび塾」の塾長を務め、岸壁幼魚採集家として漁港に現れる稚・幼魚を観察する。メディア・イベント出演、執筆、資料提供等の発信活動をする傍ら、水族館のイベント・展示企画等、魚の見せ方に関するプロデュースも行う。2022年7月、静岡県に幼魚水族館をオープン、館長を務める。著書に『海でギリギリ生き残ったらこうなりました。進化のふしぎがいっぱい!海のいきもの図鑑』、『海でギリギリあきらめない生きざま。知恵と工夫で生き残れ!海のいきもの図鑑』(KADOKAWA)など多数。
著=鈴木香里武/『水の世界のひみつがわかる! すごすぎる海の生物の図鑑』
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