「年を取ったらどうする?」「独り身だし」適度な距離感で居心地がいい大人世代のシェアハウスが話題!
年齢を重ねるほど「1人になったらどうする……?」と将来への不安が募ります。その解決策の一つが、最近話題の大人のシェアハウス。今回は、友人4人と60代でシェアハウス生活を始めて7年になる村本さんに、「大人のシェアハウス」について話を聞いてみました。
お話を伺ったのは▷村本理恵子さん
シェアリングサービス「アリススタイル」を運営するピーステックラボ代表取締役。7年前から独り身の友人4人で、シェアハウス生活を始めている。
50歳オーバーのシェアハウス生活が注目されています
以前は40歳を越えると入居できる物件がほとんどないといわれたシェアハウス。最近は50歳オーバーでも入居できるところが増え、大人世代のシェアハウスが注目されています。でも、いざ入居を考えるとうまく生活していけるのか不安も……。
「興味があるなら恐れずにやってみましょう。合わなければ出ればいいんですから」と、60代で友人とシェアハウス生活を始めた村本さん。興味津々のシェアハウス生活について教えてもらいました!
シェアハウスを始めたきっかけは?
年を取るほど、新しいことに挑戦することがおっくうになります。それでも一念発起して、村本さんがシェアハウスを始めるきっかけになった出来事とは?
「これからどうする?」で始まった4人の共同生活
村本さんが友人4人でシェアハウス生活をしようと思ったきっかけは、「年を取ったらどうする?」という会話からでした。
「今は人生100年時代ですから、60歳を過ぎてもあと20年以上、人生は続きます。でも年を取ると物を片づけるのはたいへんになるし、1人暮らしで具合が悪くなったらどうしよう……と、心配も増えてきます。そんなことを考えていたとき、独り身で自由に生きてきた友人4人で『この先どうする?』という話になったんです。偶然その中に自宅の建て替えを考えている友人がいて『みんなで住むのもいいよね』という話に。そんな偶然のきっかけから1年後、シェアハウス生活が始まりました」
1人1室と共有スペースを自由に使え、月々、定額の家賃を払うシステム。加えて大人のシェアハウスならではのよさも。
「上手に距離を取れる大人が集まっているので、これまでの生活スタイルや好みを合わせる必要はありません。でも1人では得られない安心感も。住んで7年ですが、この先もずっとここに住みたいと思っています」
シェアハウスの皆さんについてQUESTION!
つきあいはどれくらい?
20~30年来のつきあい
「ベタベタした関係ではないけれど、つきあいはもう20~30年くらいになります。仲はいいけど、お互いに密に連絡を取らない、干渉しない関係だったので年に数回食事に行くくらいでした」
どんな仲間?
仕事を通じて親しくなった友人
「仕事を通じて親しくなったので、一緒に行動するような関係ではありません。でも会って話せば共感し合えます。中には友人の友人もいますが、その人の友人ならという安心感がありました」
もともと人好きのさみしがり屋さん?
いいえ、むしろ人づきあいは苦手です
「人づきあいが苦手で、人の家に遊びに行ったり、招いたりすることはほとんどありませんでした。でもそのおかげでちょうどよい距離を取りながら共同生活ができているのかもしれません」
皆さんの共通点は?
サバサバしているところ
「性格も好きなことも、みんな違うのですが、共通しているのはサバサバしているところ。だから、ほかの誰かが何をしているのかが気にならないし、お互いに干渉しないのだと思います」
シェアハウスの5大ルール
1.互いの生活に干渉せず、相手をリスペクトする
「違う価値観で暮らしてきた4人の生活スタイルが異なるのは当然。例えば私は夜型ですが、早起きの人もいます。それについて干渉しないし、お互いをリスペクトしていれば相手は相手、自分は自分と分けて考えられます」
2.自分の得意なことを提供する
「それぞれ自分の得意なことを提供します。デジタル系が得意な私はスマホやパソコンの設定などを担当。掃除や洗濯は苦手で、それは得意な人がやってくれます。帰宅して洗濯物が畳まれていると、感謝しかありません(笑)」
3.共有スペースに私物は置かない
「リビングなどの共有スペースには、私物を置きっぱなしにしないこと。会社の会議室に私物を置かないことと同じです。でもお菓子などをいただいてみんなでシェアするときには、ひと言メモを添えてテーブルに置いておきます」
4.困っていたら相談に乗るけど、おせっかいはしない
「何か困っていて話をされたら相談には乗りますが、こちらから聞き出すことはしません。考え事をしていて放っておいてほしい場合もありますよね。相手の気持ちをくんで、おせっかいはしないようにしています」
5.思ったことはためずに素直にいう
「気になることがあればいうようにし、ため込まないことも大切です。伝えるときには相手を責めるのではなく、普通のトーンで話すこと。こうすればお互いにわだかまりが残らずに、いつも心地よい生活を続けられます」
大公開! 大人のシェアハウスの間取り
村本さんと友人のシェアハウスの間取りをイラストで再現! 将来を見据えたバリアフリー設計と共有スペースには汚しづらい仕掛けがあるなど、工夫が随所に隠されています。
【廊下】おしゃれなギャラリー風に
「廊下は飾り棚があり、絵などが展示できるおしゃれなギャラリーに。家も美術館やホテルのようだと、常にキレイにしようと思えます」
【クローゼット】洋服・靴・バッグは共有クローゼットへ。みんなでシェア
「共有クローゼットには、シェアしてもいい洋服、靴、バッグが置いてあります。自分があした着る予定の服は自分の部屋へキープ」
【玄関】将来を見据えてバリアフリーな設計に
「玄関、廊下は車いすでも入れる広さで、階段は1段ずつが低めに。エレベーターもあり、どの場所も将来を見据えたバリアフリーの設計に」
【リビング】自分の物は置かないホテルライクなリビング
「ホテルのロビーに私物は置かないですよね。リビングはホテルのようにいつもキレイに整えて、あえて物を置きづらい雰囲気に」
【サンルーム】植物をめでるサンルーム
「最初はみんなで犬を飼おうと用意したペットルーム。でも結局飼わずに、今は植物を育てて、憩いのサンルームになっています」
【トイレ】トイレは2つ
「トイレは自分のペースでゆったりと使えるように、1階と2階に1つずつあります」
【プライベートルーム】壁面収納つきのプライベートルーム
「部屋には充分な壁面収納スペースがあります。そのため、1人暮らしのときの家具は、ベッドと机以外、全部処分しました」
細かいけど知りたい!シェアハウスの疑問集
お金のことやこの先のことなど、実際にシェアハウスに入ることを考えたときに気になる、いろいろな疑問を集めました!
Q.お風呂の時間は重なったりしない?
A.お風呂シフト表に1週間分の時間を記入します
「入居当初から、1週間分のお風呂シフト表に何時ごろ、何分入浴するのかを週の初めに記入しています。時間は短くても長くても自由です。これを守れば時間が重なることもなく、ゆっくりバスタイムを満喫できます」
Q.トラブルはあるの?
A.そのつど解決するから大きなトラブルはナシ
「シェアハウス生活も7年になりましたが、これといったトラブルは本当にないんです。気になることがあれば、その場で相手に伝えて解決しているので、引きずることもありません」
Q.家賃や光熱費はどうしているの?
家賃は毎月定額、光熱費は4人で割っています
「毎月決まった額の家賃と、かかった光熱費を4等分して払っています。備品はないことに気づいた人が買い足しますが、みんなよく気づくので、もめ事はありません」
Q.この先はどうするの?
4人で長く暮らしていきたい
「7年たちますが、ここの居心地のよさは何も変わりません。この先それぞれが年を取ってできないことが増えていくかもしれません。4人は一緒に住んで支え合う家族のような存在です。バリアフリーの設計ですし、できるだけ長く一緒に暮らしたいと思っています」
Q.みんなで集まってパーティーをすることは?
たまたま一緒のときにごはんを気軽に食べる
「予定を組むと負担になることが多いのでパーティーなどはしません。たまたまリビングに一緒にいるからごはんを食べようとか、決め事をせず気軽に生活しています」
家電類はどうやって揃えたの?
おのおのの家電の中でいちばん新しいものを残した
「掃除機も電子レンジもいちばん新しい製品を持っている人が持ってきて、それをシェアして使っています。今は家電が使えなくなると私の会社の家電シェアを活用して、できるだけ物を持たない生活を実践中です」
シェアハウスに向いている人は?
サバサバしていて気持ちをくみ取れる人
大人のシェアハウスには、向き不向きがあるようです。
「向いているのは人が何をしても気にしないサバサバした性格の人。また、相手の気持ちをくみ取った行動を取れる人ですね。大人の共同生活は相手と距離を取りながら、自分の生活を大切にする人が集まればうまくいくと思います」
向かないのはこんな人
・「〇〇さんがね~」など、噂話が多い人
・「〇〇すべき」と"べき論"が多い人
・いつも誰かの注目を集めたい、かまってちゃん
・何事もシェアするのが苦手な人
* * *
人生100年時代。年を重ねると不安なことも増えてきますが、こんなルームシェアもあるんだと知ることで未来が少し明るくなりますよね。生活する中で自然に生まれた暗黙のルールを守る村本さんたちの住まい方には、みんなが気持ちよく暮らせるためのヒントがたくさん詰まっています。
撮影/布川航太 イラスト/SHOKO TAKAHASHI 編集協力/山本美和
文=レタスクラブ編集部Y
Information
<レタスクラブ ’24 3月号より>
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