「子どもたちや夫はどうなるんだろう?」突然、ガン宣告を受けた主婦がとった行動とは?【鼻腔ガンになった話】


夫と小学生の2人の子どもの4人で暮らす、主婦のやよいかめさん。長引く鼻の不調で病院を受診したところ、なんと「鼻腔ガン」と診断されてしまいます。

これからどうする? 子どもにはどう話す? 手術は? 費用は?
突然ガンが発覚してしまい、不安なことはたくさん…。だけど、家族や周りの人に助けられながら闘病生活を乗り越えていきます。

これまで、自分の体調管理は子どもたちの二の次で、それが当たり前だったというやよいかめさん。ガンの経験を通して、「自分のことも大事にしないと、結果的に子どもたちや夫が大変な目にあう」ということに気づいたと語ります。
『鼻腔がんになった話』『続・鼻腔ガンになった話』では、そんな彼女の実体験がコミカルな要素を交えながら丁寧に描かれています。
恐怖心をはねのけて、生きるためにできることを!
――ガンであると診断を受けた時の、ご自身の率直なお気持ちを聞かせてください。
やよいかめさん:聞き間違いかと思いました。ガンの可能性なんて1ミリも考えてなかったので、告知された時の衝撃は大きかったです。思わず「はっ? ガンってことですか?」と聞き返してしまいました。

――ガン宣告を受けたら、悲観的になったり、落ち込んだりして、何も考えられなくなる人が多いと思います。でもやよいかめさんは、家族のことを考えてすぐに次の行動に移していましたね。
やよいかめさん:作中でも描いているのですが、私は父と叔母をガンで亡くした経験があったので、治療のためにすぐ行動しなければと思えました。父はステージ4の肺ガンだと診断されてから治療を続けて4年間生きることができたのですが、ガンによって父の身体がどうなっていくかを間近で見て、やはり告知を受けた直後が、一番時間があって動ける時だと思ったので…。
――とても冷静な判断ですね。恐怖や不安はなかったのでしょうか?
やよいかめさん:もちろん、ガンになってしまった恐怖はとても大きかったし、寛解した今も身体にちょっとでも痛みや異常があると怖くなって、すぐ病院に行ってしまいます。
でもガンになった当時は、自分の不安よりも母親が死んでしまって残される夫と子どものことを考える方が怖かったです。まだ小学生の子どもたちにとって、母親の存在は大きいだろうし、これからゆっくり教えてあげたいと思っていたことや、体験させてあげたいと思っていたことができなくなると思うと、心配でたまりませんでした。

手術で体の一部がなくなったとしても、衰弱してベッドから出られなくなったとしても、子どもたちにとって母親が生きているという事が大きい意味を持つと思うんです。だから、「生き残るために今できることを精一杯やろう」「使える時間を家族のために全部使おう」と思って動くことができました。きっと精神的な火事場の馬鹿力みたいなものだと思います。
病棟で共に過ごした患者さんたちに感謝


――本作では、二度の入院生活が描かれていますが、ガン病棟で入院されている他の方々も明るく前向きな方が多い印象を受けました。
やよいかめさん:私がいた病棟はたまたまかもしれませんが、精神的にも大人で優しい人が多かったんだと思います。自分もしんどいだろうに、落ち込んでいる人がいたら優しく励ましたりしている姿を見かけました。また作中にも描きましたが、調子が悪そうな時は、あえてそっとしておいてくれました。

登場人物のむーさんは、入院や手術の時期がほぼ同じで仲良くしてもらっていたのですが、日数が進むにつれておそらく体調が悪くなっていたんだと思います…。私がそれに気づけたのは自分が退院する時で、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。でも最後まで笑って見送ってくれたむーさんには、感謝しかありません。
――入院中に最も印象に残っているエピソードは何ですか?
やよいかめさん:動注化学療法という手術のあと、アレルギーで吐きまくったことです。まさか自分が、こんなに大きなアレルギー反応を起こすなんて予想していなかったのでびっくりしました。しかも、身体にあまり負担をかけずに抗がん剤を投与できる方法だと聞いていたので、術後は安心して眠っていたんです。思いっきり油断していた分、衝撃が大きかったです。

鼻の手術の後も息ができなくなったり、処置中に非常ベルが鳴ったりしたこともありました。いろいろとアクシデントに合いやすいのかもしれません。


恐怖心にとらわれすぎないで

――ガンの治療を行う中で、もっともつらかったことはどんなことですか?
やよいかめさん:術後の痛みが一番つらかったです。ずーっと痛くて、一晩中苦しみました。そこまで痛かったら看護師さんに言えばよかったんですが、もらった鎮痛剤でなんとかしないといけないのかなと思って、ずっと我慢していました…。
――恐怖心を感じることもあったのではないでしょうか。
やよいかめさん:闘病中だけでなく、ガンに対する恐怖心は常にあります。つい先日の出来事なのですが、足をぶつけてしばらくしたら爪の内出血した部分が赤黒くなっていて…。その時は仕方がないなと思ったのですが、1週間経っても2週間経っても、その箇所はずっと赤黒いままだったんです。そうしたら、どんどん「これって皮膚がんかも」「メラノーマかも…」と、ぶつけたという記憶まで曖昧になって、「本当にぶつけたから赤黒くなったのか?」「本当はガンなんじゃないか」と心配になってしまいました。こんなことを退院してから7年間、毎年数回繰り返して、その度に病院に駆け込んでいます。
――そういった怖い・不安という気持ちの時は、どうやって乗り越えているのですか?
やよいかめさん:怖いものはどうやっても怖いです。いくら前向きにがんばろうと思っていても、ふとした瞬間恐怖に心がとらわれてしまいます。なので、私の中の恐怖心を取り除くことは多分無理だと思います。でも共存しつつ、恐怖にとらわれすぎないで、怖い時は「ガン怖いねん!」って言える環境を作っておくことが大事だと思います。身近な人にとっては迷惑かもしれませんが…。

また、退院後に漫画を描き始めたことは、恐怖に対する一番の対抗策だったように思います。もともと陶芸をしていたのですが、転勤族の夫と結婚して子どもができてからは窯を持てなくなり、作業する時間もなくなりました。陶芸はとにかく時間がかかるので…。子どもたちがもうちょっと大きくなったら、近くの陶芸教室や窯元を探して作品作りを再開できたらいいなぁ、くらいに漠然と考えていました。でもガンになって、自分に残された時間を考えるようになり、今すぐ何かを生み出す“制作活動”を再開させようと思いました。
そこで、自宅の中でもできる制作はなんだろうと考えてデジタルで絵を描き出したのです。漫画を描くことができるようになって、「まだまだ人のために役立つことができる」「作品を生み出すことができる」という喜びを感じました。制作活動が自分にとって一番の薬だったと思います。
***
とてつもない恐怖心を抱えながらも、「生きたい!」という強い想いから、夫や子どもたちのために行動に移してきたやよいかめさん。現在もガンの恐怖と闘っている様子から、ガン治療の大変さが伺えます。
やよいかめさんのメッセージから、家族やパートナーなど大事な人のためにも、まずは自分のことを大切にする、不調を感じたらしっかり病院で検査を受ける、こうしたことが本当に大切なのだと感じました。
取材・文=松田支信
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