色覚異常は“異常”じゃない? 「日本遺伝学会」が新たな概念を提唱

#くらし   
色覚異常の“異常”という語句に違和感?


色の見え方は人それぞれ。中には、色の見え方が他とは違う“色覚異常”を持っている人も。しかしこの言葉に含まれる“異常”という語句が引っかかるようで、最近では用語の改定が検討されています。

 

「日本遺伝学会」が導入した新しい概念とは?


今年9月に「日本遺伝学会」が様々な用語の改訂を提案しました。例えば「優性、劣性」という遺伝学用語は、「顕性、潜性」に。「優・劣」という語句を、より中立性の高い言葉に直しています。

そんな今回の用語改定のなかには、過去にもネーミングが議論された「色覚異常」も。「color blindness」という英語を翻訳したため、以前は“色盲”という言葉が当てられていたのですが、最近では様々なメディアで「色覚異常」と統一されています。

しかし日本遺伝学会曰く「一般集団中にごくありふれていて(日本人男性の5%、西欧では9%の地域も)日常生活にとくに不便さがない遺伝形質に対して、『異常』と呼称することに違和感をもつ人は多い」とのこと。そこで新たに「色覚多様性(color vision variation)」という概念の導入を提案しました。

 

小学校で白か黄の“チョーク”を使う理由


日本人男性の5%、女性の0.2%が持つ色覚異常。男性の場合、20人に1人という計算になります。しかし以前までは明確な治療法や矯正する眼鏡もなく、また企業の採用などに影響することも。こういった経緯から、2003年には小学校の“色覚検査”が撤廃されています。

とはいえ、中には「検査をなくしても色覚異常で困っている子がいる事には変わりない! 検査を再開すべき!」との意見も。検査を無くしたことで、色覚異常に対する認識が薄れていったと指摘する人も少なくありません。

その最たる例が、“黒板に使うチョーク”問題。以前とあるTwitterユーザーが「“チョークは白色か黄色を使う”という常識が薄れている」と問題提起して、大きな話題になりました。実際に文部科学省も「色覚に関する指導の資料」に、「白と黄のチョークを主体に使います」と掲載。しかし最近の教育現場では、赤や緑のチョークが使われることも多いようです。

 

アメリカの企業が画期的なサングラスを発明!


現在では、色覚異常の検査を再開させる動きが広がっている模様。日本眼科学会の働き掛けもあり、文部科学省は2014年に検査を“推奨”する方針に転換しました。

これまでは自分が色覚異常だと知っても矯正や治療が出来なかったのですが、最近では色覚を補正してくれるサングラスが登場。アメリカのEnchroma社が開発した「EnChroma」というサングラスなのですが、特殊コーティングが特定の波長の光をカットして、色の見え方を補正します。

この商品が発売されるや、SNS上にはサングラスをかけて初めて“色”を見る人たちの動画が世界中から投稿されました。動画を見た人からは「これこそまさに科学の勝利!」「本当に価値ある商品だと思うし、開発した人は間違いなく天才」「これからもこういうことに最先端技術が使われるべき!」との声が相次ぎました。

以前よりもぐっと当事者が付き合っていきやすくなった色覚異常。“色覚多様性”への改定が受け入れられた際には、新しいネーミングと共に正しい認識も広まってもらいたいものですね。

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