子どもが性被害に遭う「オンライングルーミング」を描いた衝撃作。『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』著者が作品に込めた思い

SNSがきっかけとなり、子どもが性的な犯罪に巻き込まれるケースが後をたちません。
「ネット上の知り合いに裸の画像を送った」「ネットで知り合った人に実際に会いに行ってしまった」といった子どもの行動は、大人からみれば理解の範ちゅうを超えたものですが、子どもたちは「オンライングルーミング」によって、加害者からの要求を断れない状態にさせられているケースが多いそうです。
グルーミングとは、手なづけること。つまりオンライングルーミングとは、SNSなどを通じてじょじょに子どもとの信頼関係を築いていくことを指します。
きむらかずよさんが、新作コミック『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』で描いたのは、中学生3人が巻き込まれた親の知らないネットの闇。どこにでもいるごく普通の女の子が、犯罪者に誘導されるまま、顔も知らない相手と実際に会おうとしたり、自分の裸の写真を相手に送信してしまったりなど、大人からは信じられないような行動に至る様子を丁寧に描いています。
まずはあらすじをご紹介しつつ、この作品にこめた思いを作者のきむらさんに伺います。
あらすじ

主人公のひかりは、中学2年生。最近、親からスマホを買ってもらい、大喜びです。
ひかりの母親は、スマホの使いすぎやオンラインでの交流に釘をさしつつ、娘を見守っているつもりでしたが、娘の付き合いを完全に把握できているわけではありません。

学校外の友人たちとも連絡先を次々と交換し、「ネッ友」と呼ばれるネット上の友人との付き合いもはじめたひかり。母親の心配をよそに「ネッ友ぐらいがなんでも打ち合けられる」とひかりは言います。

ちょっとしたことでクラスのグループから孤立するようになっていたひかりは、スマホの中に自分の居場所を求め始めていました。「ひな」と名乗るネット上の友だちに嫌われることを恐れた彼女は、求められるままに自撮りの写真を送ってしまいます……。
さて、ひかりにはかつて同じ保育園に通っていて塾で再会した友人がいました。そのひとりがなつです。

なつは、クラスカーストでも上位にいる自分を誇らしく思っていましたが、母親にオンラインゲームでの課金を禁止されていることにいら立っていました。

しかし、なつの母親にも言い分があります。なつの母はシングルマザーですが、元夫のゲーム依存による借金がもとで離婚した経緯があったのです。

オンラインゲームを辞めようとしない娘を心配しつつも、母親は娘の交友関係に踏み込むことにためらっています。彼女は難しい年ごろを迎えた娘との距離感に悩んでいました。

そんな中、なつはオンラインゲームで知り合った男性と少しずつ親しくなっていき、DMで会う約束をしてしまいます……。

そして、ひかりとなつの塾の友人がもう一人。名前は「その」。彼女は、両親が経営する居酒屋の2階に家族で住んでいます。

昔からおとなしく、授業中に手を挙げることもしないような恥ずかしがり屋だったのですが、ある日、そのの母は、そのの部屋で派手なウィッグや大量の化粧品を見つけます。

さらに、居酒屋の客から、そのらしき女の子がダンスするショート動画を見せられ驚愕します。

その真偽を確かめるべくそのを問い詰める母親。しかし動画の人物は「自分ではない」と言い張るそのを前に、それ以上何かを言うことはできませんでした。

母親には否定したものの、動画でダンスをしていたのは、間違いなくその本人でした。臆病そうに見えるリアルの自分から、まったく別人になれる動画投稿サイトに、そのは没入しつつありました。

いつも優しいコメントを付けて応援してくれる、あるフォロワーの存在に彼女は励まされていましたが、実はその人物は彼女のことをよく知る意外な人でした……。
3人の心のすき間に、オンライングルーミングの魔の手は巧妙な手段で忍び寄っていきます。そしてある日、それぞれに決定的な事件がおきてしまいます。その時、親たちは……?

インタビュー
――今回の作品で「オンライングルーミング」をテーマに選んだ理由を教えてください。
きむらかずよさん:編集さんからいただいた提案だったのですが、自身にも当時中学3年生の娘がおり、リアルな声を参考にしながら描けるのではないかと思いました。実際、娘にはこの作品を描くにあたり、中学生の子どもたちが普段どんなゲームをしているのか、ゲームやネットに対しての価値観など大変参考になりました。普段の会話からも、キャラクターたちの何気ない言葉のヒントをもらえたりもしたので、大変ありがたかったです。
女の子たちのそれぞれのトラブルは、実際にあったスマホやゲームトラブルに関する書籍を調べたり、10代の女の子が呟いているネットの掲示板なども参考にしました。

――3人の女の子とその親、そしてその周辺の人物が複雑にからみあい、葛藤するさまが描かれた物語です。本作をこうした構成にした理由は何ですか?
きむらかずよさん:オンライングルーミングというテーマを通して、子どもの視点、親の視点、加害者の視点、といろんな視点から描きたいと思いました。

――「オンライングルーミング」との闘いを通して、自分たちの子育てに向き合った親の姿が描かれていると感じました。この作品を通して読者に伝えたいことがあればお教えください。
きむらかずよさん:そうなんです。オンライングルーミングを通して伝えたかったのは「親と子の関係を今一度、見直してみませんか」というメッセージです。大切なことはやはり、学校ではなく、家庭の中にあるのではないかと思います。これは、自身の子どもにも起きるかもしれない物語だと思っていただければ嬉しいです。
* * *
大切なのは親と子の向き合い方、と作品にこめた思いを語るきむらさん。子どもを恐ろしい犯罪の被害者にしないためにも、この作品を通して、親子のコミュニケーションについていま一度見つめなおしてみてはいかがでしょうか。
取材・文=山上由利子
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