巧妙化するオンライン上の犯罪から逃れるために知っておきたいこと『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』著者インタビュー

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

昨年発表されたデータによると、SNS起因で犯罪被害にあった子どもは年間約1,700人にものぼるそうです。

本来なら守られる立場にある子どもを狙う卑劣な犯罪。その手口は年々巧妙化し、時間をかけて子どもとの間に信頼関係を築き、子どもが加害者からの要求を断れないような心理状態にする「オンライングルーミング」と呼ばれる卑劣な手法も広がりを見せています。

被害を食い止めるためには何が必要なのか。

オンライングルーミングをテーマとした新作コミック『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』を読み解きつつ、作者であるきむらかずよさんのインタビューもまじえて考えてみたいと思います。

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あらすじ


  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

中学2年生のひかりは、ほしかったスマホを手に入れたばかり。その発端は、ひかりが塾の帰り道に、変質者に遭遇したからというものでした。近辺では能面をつけた変質者が塾帰りの子どもを狙って追いかけてくる事案が多発していました。そのため、心配した親が仕方なくひかりにスマホを買い与えたのでした。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より


スマホをゲットしたことで、自分の世界を広げていくひかり。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

保育園時代の友達に塾で再会したことを機に、すぐさま連絡先を交換します。学校外の友達とLINEでつながることにひかりの母親は難色を示しますが、ひかりは意に介しません。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

そればかりか、ひかりは、学校の友人グループのトラブルもあり、SNS上だけの関係「ネッ友」たちとの交流に熱中していきます。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

ひかりが塾で再会した友達が、そのとなつ。彼女たちもオンライン上だけでつながる人間関係がありました。

そのは、現実には授業中に挙手することさえ苦手なおとなしい性格ですが、動画投稿サイト上ではコスプレしてダンスを披露することに夢中です。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

なつには、オンラインゲーム上で、彼女に課金アイテムをプレゼントしてくれる男・レオがいました。
もちろん顔も本名も知りませんが、親にネット課金を禁止されている彼女にとっては、感謝すべき存在。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

さらに、友人トラブルによって学校に行けなくなったなつの心に、レオは入り込んでいきます。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

オンライン上でしか知らない人物に会いに行くことのリスクを、知らないわけではない、なつ。しかし、自分を救ってくれた恩人でもあるレオに誘われて、断る選択肢は彼女には思い浮かびませんでした。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

そうして、レオと呼ばれる人物に乞われるまま、会いに行ってしまうなつとその。その先には、信じられないトラブルが待ち受けていたのです…。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より


著者・きむらかずよさんインタビュー


――中学2年生の女子3人が登場しますが、それぞれに降りかかるトラブルが本当に起こりそうなものばかりで考えさせられました。作中に出てくるエピソードはどのような観点で選ばれたのでしょうか。

きむらかずよさん:そう言っていただけると、とてもうれしいです。
この作品を描くにあたって一番最初に浮かんだエピソードは、能面の男が、女の子たちを追いかける、という場面でした。私が中学生の時、実際に身近で似た事件があり、追いかけられる詳細なエピソードは当時友達に聞いたことをもとに描きました。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

――きむらさんご自身も大学生から中学生まで3人のお子さんがいらっしゃるそうですね。本作に登場する親がした言動は、ご自分と重なる部分はありましたか?

きむらかずよさん:3人の親が出てきましたが、3人とも、あまり重ならないです(笑)。むしろ、自分が出会った人たちを参考にして、この人ならどういう言葉を使うだろう、この人ならどんな行動に出るだろう、と考えました。


――きむらさんご自身のお子さんとスマホやSNSとの向き合い方についてどのように考えていますか?

きむらかずよさん:SNSは基本、鍵アカウントにするように伝えています。また、普段から子どもがどのようにSNSと向き合っているか、子どもとの会話にも、アンテナを立てています。ただ、それぐらいしかできていない…というのが実際のところです。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

――「オンライングルーミング」をはじめ、SNSやオンラインゲームなどを通じて犯罪被害にあってしまう子どもは増え続けています。そうしたトラブルに子どもが巻き込まれるのを防ぐために、親ができることは何だと思いますか? 

きむらかずよさん:これは本当に難しい…。
でもやはり、普段から親子のコミュニケーションを大切にする。話しにくいことも話せるような関係を築いておくことは大切なのかなと感じます。色々な書籍を調べていると、実際に「見知らぬ人とコンタクトをとって会う」といった、大人から見て、「ボーダーライン」を越えてしまう子どもたちは、普段から居場所がなく孤独を感じている子どもが多いという印象を受けました。

でも、本当に今は難しいですよね。
いろんなアプリやゲームが出ていて、同じリビングで過ごしながら、どんな形で、画面の向こうで誰と繋がっているかわからない。スマホ契約時に、子どものスマホに簡単になんでもアプリを入れられないなど、セキュリティシステムの契約もしていますが、万全ではないのではと感じています。

  『娘がスマホで知らない男とやりとりしてました』より

    *      *     *

子どもとスマホとの付き合い方は、正解のない、難しい問題だと思います。

ただ、居場所がなく、孤独感を感じている子どもが「ボーダーライン」を超えてしまいやすい、というきむらさんの実感からは、親が子どもと向き合うことの大切さを教えてくれます。

取材・文=山上由利子

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