お金欲しさにスピリチュアル商法で荒稼ぎ、思わぬ大金を得た主婦が落ちた承認欲求の罠。

  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

スーパーのパートタイマーとして働く主婦が、ちょっとしたきっかけで知人の相談に乗るうちにカウンセリングの才能に目覚め、あれよあれよという間にスピリチュアルな力を持つカウンセラーとして祭り上げられて……。

ぐいぐいと続きを読ませる小咲ももさんのnote小説が注目を集めて、漫画家・稲美杉さんによってコミカライズされたのが『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』。ごく普通の主婦がちょっとしたきっかけからスピリチュアルビジネスに手を染め、人生が少しずつ狂っていく様子を、テンポよく描いています。

原作者の小咲さんは「スピリチュアル自体は信じている」と語るものの、「ビジネスとしてのスピリチュアル」が信者からお金を巻き上げていく仕組みに対しては作品を通して注意を促しています。まずは、そんな作品のあらすじをご紹介しましょう。

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『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』あらすじ


  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

主人公のミカは、夫の転勤で実家から遠い街に引っ越し、パート先にも馴染めずにいました。子どもが欲しいのに夫が乗り気ではなく、モヤモヤとした気持ちを抱える日々を過ごしています。

 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

そんな中、気晴らしのために参加した手芸サークルで、参加者のエリの悩みを聞いて手作りのハンカチを渡してあげたことをきっかけに、スピリチュアル好きのエリから「ミカさんには天使の力がある」と持ち上げられます。

 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

エリから「スピリチュアル会」に誘われたミカは、そこでスピリチュアルに興味を持つ様々な職種の人に出会います。「ミカさん手作りの天使の刺繍のハンカチのおかげで運が開けた」というエリの話を聞いて「自分もミカにカウンセリングして欲しい」という人々が現れます。


 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

ミカは乞われるままにカウンセラーとして話を聞くことになり、刺繍のハンカチと1時間のカウンセリングで1万円の報酬を得ることに成功します。

 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

カウンセリングで高額の報酬を得るようになった彼女は、高級ブランドバッグを買ってSNSに投稿し、承認欲求を満たすようになっていきます。その浪費行動が破滅への道につながっているとも知らずに……。

 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

次第に相談者も増えてきたため、ミカは手っ取り早く稼ぐためにお茶会を開催します。心の中ではどす黒い言葉で毒づきながらも、天使が言いそうなポジティブな言葉で相談者を勇気づけていきますが……。


この注目のコミック作品の原作者・小咲ももさんにお話を伺いました。

原作者・小咲ももさんインタビュー


――主人公ミカにとって「孤独」「承認欲求」が大きなテーマとなっていますが、これについてどのように掘り下げましたか?

小咲ももさん:
カルト的なものにハマる一番の要因は「孤独」じゃないかと思います。それは信者側だけでなく、教祖側も同じではないかと思ってます。実は私、「教祖様」と呼ばれるタイプの、自己啓発やスピリチュアルの提唱者について情報収集していた時期があったのですが、信者から熱狂的に崇拝されてる「教祖様」自身が、孤独に苦しんでいるように見えたんです。

というのも、教祖でいる限りは「自分のダメな部分」や「調子の悪い時」を見せることができません。だって、それを見せてしまうと、「幸福になる」と謳うメソッドに矛盾が生まれるし、売れなくなってしまう。だから常にハッピーをアピールしなくてはならない。幸せのロールモデルでいつづけなきゃいけないのです。それってすごく苦しいし、孤独なことではないかと思ったのです。

 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

――ミカも自分の悩みを表に出せず、人前やSNS上では幸せなふりを続けますね。このSNSでの「承認欲求」についてはいかがでしょうか。

小咲ももさん:
承認欲求は、さきほどの「孤独」の部分と繋がっています。孤独なミカは、SNSでチヤホヤされることによって、自分の存在を確認してるんです。慣れない土地で、友達がいない中でもSNSには自分の居場所がちゃんとあって、誰かにいいねをつけてもらえている。自分がここにいると認めてもらえていることにミカは安堵しています。

でも、SNSの中にはミカの本当の姿はありません。美しく加工した顔で、信者からのお金で買ったブランド品を「天使のおかげで手に入った」という嘘で自慢し、夫との不仲や不満を隠して円満アピールをしています。だから、自分の存在を実感できているように見えてちっともできていないのです。それどころか、自分をもっと孤独にさせています。そうした悪循環をこの作品では描いています。

 『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より


――この作品を通じて、読者にどのようなメッセージを届けたいですか?

小咲ももさん:
スピリチュアルに依存している人が立ち止まるきっかけになると良いなというのと、作品の大きなテーマが"自分を偽って生きることの辛さ"なので、それが伝わると嬉しいなと思っています。

今はSNSで簡単に自分を偽れるし、それでチヤホヤされるかもしれないけど、本当の幸せはそこには無いと思うんです。読者の方が、自分が本当に好きなものや、感じたこと、周りにいる人を大切にして、自分だけの幸せを見つける一助となればとても嬉しいです。


   *     *     *

SNSで自分をよく見せようとして必要以上に取り繕ってしまったり、「いいね」欲しさに本来の自分とはかけ離れた行動をとったり……。そんなことを繰り返すうちにどんどん虚しくなっていくこと、身に覚えはありませんか? また孤独感から必要以上にスピリチュアルに傾倒することにも、この作品は警鐘を鳴らしています。もし少しでも心当たりがあるなら、少し立ち止まってみることも大切かもしれません。

取材=ツルムラサキ/文=レタスユキ

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