90年代のヒットソングが呼び覚ます青春時代の思い出『べつに友達じゃないけど』やまもとりえさんインタビュー

自分の高校時代に流行っていたヒットソング、覚えていますか?
2月14日に発売されたやまもとりえさんの新作『べつに友達じゃないけど』は、90年代ヒットソングのタイトルに彩られ、ちょっぴりノスタルジックな気分になるコミック作品です。
イラストレーターになりたいという夢をもって上京するも、現在はパート社員として平凡な日々を送っている井上美里・41歳。ある日彼女の元に「あなたを私のお葬式に招待いたします」と書かれた招待状が届きます。差出人は特に親しかった記憶もない高校の同級生。なぜ自分がお葬式に呼ばれたのかわからないまま葬儀場へと向かうと、そこには同じ招待状を受け取った3人の同級生が集まっていて…。
高校時代のエピソードや作品への思いについて、作者のやまもとりえさんにお話を伺いました。
あらすじ


イラストレーターになることを夢見て東京に出てきて17年。現在では、スーパーのパート社員として平凡な日々を送っている井上美里・41歳。独身だからという理由で他のパートさんの欠勤の尻拭いばかりさせられることにちょっぴりうんざりしていました。

そんな彼女の元に、かわいらしい封筒に入った招待状が届きます。開けてみると、それはなんと「あなたを私のお葬式に招待いたします」と書かれたお葬式の招待状。差出人の名前を見ても誰だったか思い出せず、ただただ困惑するのですが…。
ストーリーを彩る「90年代ヒットソング」で蘇る青春の思い出

――まず初めにこの作品を描いたきっかけから教えてください。
やまもとりえさん:担当編集さんと私が同じ1982年生まれで、青春時代の思い出トークが盛り上がったんですよ。私たちはちょうど「キレる若者」と呼ばれていた世代なのですが、「この世代の人ってなんかちょっと不思議だよね」という話の流れから、今回のストーリーが生まれました。
――やまもとさんの青春時代はどんな感じだったのですか?
やまもとりえさん:私の場合は、青春らしい青春がなかったな〜というちょっと鬱屈とした思いがあります(笑)。甘酸っぱい片思いはしてたけど、彼氏と制服デートなんてしたことないし、親友と呼べる友達も特にいなかったので。この本の登場人物たちも、「青春っぽい青春はなかったな」って思っています。
でも、よくよく振り返ってみると「あれって結構青春だったな」みたいなシーンって、きっとみんなにあるはずなんです。毎日面白くなかったはずなのに、その頃流行っていた音楽を聴くと、胸がキューって締め付けられるのは、きっと苦い気持ちも含めてそれが「青春」だったのかもしれません。
――今回の作品は、作中のタイトルやストーリーにも90年代後半のヒットソングが多数使用されていますね。

やまもとりえさん:作中のタイトルに曲名を付けたのは、担当編集さんのアイディアなんです。私はもともと淡白なタイトルを各話に付けていたのですが、「せっかく主人公が同世代なんだから、その頃に流行った曲でタイトルを付けてみませんか」と言われまして。それで、90年代のヒットソングを流しながら、ひたすら曲を探し出す会議を開催しました。「歌詞の内容が話と合ってるかな」とか、「この話のテンションだとこのぐらい落ち着いてる曲がいいね」とか、3時間くらいかけて延々と。
――その会議、すっごく楽しそうですね。
やまもとりえさん:選曲作業は本当に楽しかったです。曲名を見た瞬間に頭の中にメロディが流れてきて、あの頃の記憶がブワーッと蘇ってくるんですよ。名曲ってすごいパワーがあるんだなと感じました。
実際に漫画を描いている間にも当時のヒットソングを流していたら、なんだかあの頃に戻ったような感覚になってきて。気づいたら、甘酸っぱい恋愛をしていたかのような架空の青春の思い出が頭の中に出来上がっていて、自分でもやばいなと思いました(笑)
――タイトルに付けた中で特に特に好きな曲はどれですか?
やまもとりえさん:一番好きな曲は、4章の『素直』です。私、槇原敬之さんが初恋で、今もずっと好きなんですよ。だから、今回の主人公は『素直』の曲に出てきそうな女の子にしようと思って描きました。でも、作品全体を通してのテーマソングは、3章に付けさせていただいた『夜空ノムコウ』が一番合ってるかな。

――作品の空気感と曲の雰囲気が合わさって、なんだかすごくイメージが伝わってきます。
やまもとりえさん:高校生の頃にすごく心に響いた歌詞を40歳超えて改めて読み返してみると、なおさら胸にくるものがあって。あのときと今とでは、メロディから受ける印象もまた違うんですよね。やっぱり『夜空ノムコウ』は名曲だと思いました。
ギャル派、個性派、真面目派…棲み分けられていたあの頃の高校生たち

――本の挿絵にも、プリクラやCDプレーヤーなど、90年代後半を思い起こさせるイラストが散りばめられていましたね。
やまもとりえさん:当時の流行り物を検索しながら挿絵を描いたのですが、全てにおいてパワーが漲っていて、なんて豊かな時代だろうと改めて思いました。私たちの世代はコギャルが全盛期で、ケータイにストラップをジャラジャラ付けたり、ルーズソックスはだるだるであるほど良いみたいな感じでしたよね。でも、おしゃれ雑誌の『Zipper』を愛読している個性派の子もいたり、勉強を頑張っている子もいたり、オタクな子もいたりして、現代の子たちと比べると、なんだかすごく極端に棲み分けられていた印象があります。
私自身はそのどこにも属せなかったコンプレックスがあるのですが、実はそういう子も案外多かったんじゃないかなと思うんです。だから、今回の作品の主人公も、当時「目立てなかったタイプの子」になりました。
***
中高生の頃に聴いていた曲はいくつになっても特別で、たまに聴いてみるといろんな感情が呼び起こされますよね。『べつに友達じゃないけど』の各話タイトルとお話の空気感のマッチ度も合わせて味わってみてくださいね。
取材・文=宇都宮薫
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