漫画を描き始めたきっかけは友人の気軽な一言。漫画家・やまもとりえさん新作インタビュー

育児エッセイの『今日のヒヨくん』や、美大時代の友人たちを描いた『うちらはマブダチ』では実体験をもとにしたユーモラスなコミックエッセイを綴っている、漫画家のやまもとりえさん。
一方で、可愛らしい絵柄ながらもどこか不穏な空気を漂わせる、ミステリタッチのフィクション作品『わたしは家族がわからない』『わたしが誰だかわかりましたか?』『望まれて生まれてきたあなたへ』なども発表。緻密なストーリー構成でも注目を集めています。
そんなやまもとさんが、高校時代を過ごした90年代の空気感を繊細に描いた新作コミック『べつに友達じゃないけど』を2月に発表。この作品についてのエピソードや、漫画家になるまでのエピソードについて、お話を伺いました。
あらすじ

思い通りにならない人生を過ごしながら、気がつけば40代。ままならない日々を過ごす4人の男女のもとに、高校時代のクラスメイトから一通の手紙が届きます。それは「お葬式の招待状」でした…。


招待状を受け取った4人のうちのひとりは、高校時代は爽やかで人気者だった伊藤亮介。40代になった彼は外に働きに出ることもできず、実母の介護のために人生の大半を使っています。「あんたがおらんと私生きられんわ」という母からの言葉にまるで縛り付けられているようでした。

そんな彼の元にあったのは、高校時代の同級生・水原すみれからの手紙。
招待された葬儀場へと向かうと、そこには招待状を受け取った3人の同級生が集まっていました。特に接点はなかったはずの4人をつなぐ出来事は…? 4人は当時の思い出をたどりながら、水原すみれが彼らを招待した理由に近づいていきます。
どこのグループにも属せなかった高校生活がコンプレックスだったけど…

――今回の作品では、登場人物たちが高校時代を振り返るシーンが多く登場しますが、やまもとさんご自身はどんな高校生でしたか?
やまもとりえさん:私はクラスのどのグループにも属してなくて、親友もおらず一人でふらふらしている遊牧民的な立ち位置でした。人と喋るのは好きなので、ギャルの子ともオタクの子とも優等生の子ともまんべんなく関わってはいたんですよ。私はそれがすごくコンプレックスだったのですが、当時のことを知る人からは、「いつも楽しそうに笑っていて友達がいっぱいいる人に見えた」と言われて驚いたことがあります。視点が違うとそう感じることもあるのか…と。

――どこにも属さないというのは、なんとなくやまもとさんらしい気もします。ちなみに、今やり直せるとしたら、どんな高校時代を送りたいですか?
やまもとりえさん:う〜ん、どうしよう……。高校時代にもっと真面目に勉強して、一度は東京に住んでみたかったですね。私は京都の大学に進学して、毎日すごく楽しかったし、いい友人にも出会えたから不満はないのですが、もしも進学先を決める時に東京まで見学に行っていたら、また違った人生を送っていたのかもしれないなって思います。でも、そうしたら今の友達とも子どもとも会えていないんですよね。
――美大時代の友情を描いた前作の『うちらはマブダチ』も幻になっていたかもしれないんですね。

やまもとりえさん:そうなんですよね。それを考えると、今のままが正解なのかも。ちゃらんぽらんであまり先のことを考えていない高校生だった私に「そのままでいいよ」と言ってあげたいです(笑)。
美大を卒業してデザイン事務所に就職。イラストレーター・漫画家になるまで

――高校卒業後に京都の美大に進んだやまもとさんですが、イラストレーター・漫画家になったきっかけとは?
やまもとりえさん:大学を卒業して、最初はデザイン事務所に就職したのですが、25歳の頃、やっぱり絵を描く仕事がしたいと思い、ポートフォリオを作って売り込みを始めました。いろいろな出版社に50冊くらい送って、10社だけ連絡が返ってきて、実際に仕事ができたのが3社くらいでしょうか。そんなことを繰り返しているうちに、イラストの仕事がちょっとずつ増えていきました。
その後、結婚を機にデザイン事務所を退職し、妊娠中の記録を文字でブログに綴っていたら、近くに住んでいた漫画家の友人、小山健くんに、「せっかくなら漫画で描いちゃえよ」って気軽に言われまして(笑)。それが出版社さんの目に止まって、育児コミックエッセイを出版することができたので本当にラッキーでした。そこから徐々に、イラストより漫画の仕事が増えていった感じです。

――妊娠、育児をネタに漫画を描き始めたとのことですが、ご自身の経験を漫画に落とし込むのは難しくなかったですか?
やまもとりえさん:漫画を描くのは想像以上に大変でした。妊娠中のことを4コマにして書こうと思ったらオチが全然思いつかなくて。とりあえず驚いた顔をしておとけばオチるかなとか、いろいろ試しましたね。そのうち、オチを無理に作る必要はないのかもと気づいて、ただただ記録をつけるような感覚て描いていたら、子どもが生まれたらあとは、子どもが勝手に落としてくれるようになったので、すごく助かっています(笑)。

***
「漫画を描くのは大変でした」と育児コミックエッセイを描いていた頃を振り返るやまもとさん。その後はコミカルな青春コミックエッセイから、緻密な構成のミステリ作品まで、次々と作風の幅を広げています。
そんな中で発表された今回の新作『べつに友達じゃないけど』では、これまでのやまもとさんの作品とはひと味違った読後感を味わえます。90年代のヒットソングやカルチャーを交えて丁寧に描かれた空気感の中で、ほんの一瞬だけ重なり合った4人の登場人物の時間。その意外な結末を、ぜひ見届けてくださいね。
取材・文=宇都宮薫
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