物事のA面B面、それぞれの立場から人間を描きたい『べつに友達じゃないけど』やまもとりえさんインタビュー

『べつに友達じゃないけど』より

ほとんど顔も覚えていない、20年以上前の高校時代のクラスメイト。
そんなかつての同級生から「あなたを私のお葬式に招待いたします」と手紙が届いたら…?

そんな気になるエピソードから始まる、やまもとりえさんの新作コミック『べつに友達じゃないけど』。40代を迎えて思い通りにならない人生を生きる4人の男女が招待された葬儀に集まり、ほとんど接点がなかったはずの高校時代の思い出をたどる物語です。

この作品への思いや高校時代のエピソードについて作者のやまもとりえさんにお話を伺いました。

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あらすじ


 『べつに友達じゃないけど』より

イラストレーターになりたいという夢をもって上京するも、現在はパート社員として平凡な日々を送っている井上美里・41歳。ある日彼女の元に「あなたを私のお葬式に招待いたします」と書かれた招待状が届きます。差出人は特に親しかった記憶もない高校の同級生、水原すみれ。

 『べつに友達じゃないけど』より

 『べつに友達じゃないけど』より

訝しく思いながらも式に参列するため地元に帰ってきた美里。「今何してんの?」とか、「いい人おらんの?」と聞かれることが嫌でずっと実家を避けていたので、祖母のお葬式以来11年ぶりの帰省でした。

 『べつに友達じゃないけど』より

お葬式の会場に着くと、そこにいたのは当時の同級生の大場ミホ、藤井百合子、伊藤亮介の3人。自分も含めてたった4人の小規模なお葬式。自分がここに呼ばれたわけは…?


片方からの視点だけではわからない、物事の「A面/B面」を描きたい


――やまもとりえさんの最近の作品は、『わたしは家族がわからない』『怖いトモダチ』など、ミステリータッチの作品も増えていますね。影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか?

 『べつに友達じゃないけど』より

やまもとりえさん:小さい頃から本当に漫画をよく読んでいて、特にくらもちふさこさんといくえみ綾さんが大好きです。お二人とも私とは全く作風が違いますが、多くを語りすぎないバランス感覚が素晴らしいので、私もできるだけそうありたいと思っています。でも、それってかなりの技術が必要なことなので、私はまだまだ到達できていないのですが。

――やまもとさんの作品の余白の作り方からも「多くを語りすぎない」というこだわりが伝わってくる気がします。

やまもとりえさん:私の場合、最後のコマの使い方を意識しています。たとえば、「そうなんだ…」と呟く人の顔を描いたら、ただ「その人がそう言ってるだけ」に見えてしまいますが、セリフと共にその場に置かれたペットボトルを一本描いたら、何か含みがあるような気がしてきませんか? そんな物語の余白を研究するためにも、テレビでドラマを観ている時、CMに入る前のシーンに何が映っているかなど結構気にするようにしています。

 『べつに友達じゃないけど』より

――そういう日々の観察によって、やまもとさん独特の間の取り方が生まれているのですね。では、ストーリーを考えるときに大事にしていることはありますか?

やまもとりえさん:意識してそうしたわけではないのですが、気づいたら物事の「A面/B面」を意識して描くようになっていました。片方からの視点だけではわからない相手の背景とか、もしくは相手がどう思っているのかをなるべく表現したいんです。私自身、小心者なので、完全な悪者を描くのは苦手意識があるのかもしれません。

『べつに友達じゃないけど』より

もしかしたら誰かにとってあなたはすでに「大切な人」かもしれないから…


――今後、描いてみたいテーマなどありましたら教えてください。

やまもとりえさん:これまで全く描いたことのないものを描きたいですね。ガッツリ恋愛とかホラーとか。女の人のドロドロとした片思いのお話とか、ギリシャ神話を現代風にしたお話なんかもいいですよね。いろいろやりたいことはあるけれど、まずは体力をつけます!

――これからもいろんなジャンルでやまもとさんの作品が読めそうで嬉しいです。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

やまもとりえさん:いつも読んでいただいてありがとうございます。『うちらはマブダチ』を読んだ読者さんから、「私もこういう友達が欲しかった」という感想をよくいただくのですが、もしかしたら誰かにとってあなたはすでに大切な人かもしれません。そして、「私には青春がなかった」と思っていても、実は大切な情景を忘れているだけかもしれません。作品を通してそんな気持ちを思い出していただけたら嬉しいです。

 『べつに友達じゃないけど』より


***

高校時代の小さな約束が40代になった男女4人を突き動かしていく物語『べつに友達じゃないけど』。読み終わった時には、なんとなく過ごしている日々から脱却して一歩前へ進んでみたくなるかもしれません。


取材・文=宇都宮薫

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