夫が脱いだ靴下を片付けるのは妻の役割?話題作が描く女性の負担とその根深さ

また2人のぬいだ靴下!毎日毎日!

家事や子育て、そして仕事。日々めまぐるしく過ぎていくなかで、「あれ?なんで私ばっかり…」と感じる瞬間、ありませんか?

コミックエッセイ『“生きづまる”私たち』は、そんな日常のなかにひそむ、女性たちの「どうにもならない気持ち」や「生きづらさ」にそっと光を当てる作品です。

第2話「みさとのいら立ち」に登場するのは、子育ても家事も完璧にこなす専業主婦・みさと。 明るく元気でママ友にも慕われる、理想のママだけど…実はため息だらけの毎日を送っています。

みさとがふとした瞬間に感じる「あれ?」という違和感は、決して彼女ひとりの問題ではありません。
それは、現代社会が抱える根深い問題ともつながっているのです。
もしかしたら、あなたも「これ、私のことだ」と思わず共感してしまうかもしれません。

【マンガ】「“生きづまる”私たち~みさとのいら立ち」を読む

「全部私任せなのはどうして?」パーフェクト主婦・みさとのいら立ち

46歳のみさとは、48歳の夫、10歳の息子との3人暮らし。

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より

もともと掃除や料理が得意で、「家事も育児も手を抜かない」がモットーでした。

散らかりがちなリビングも毎日きれいに保ち、油汚れがつきやすいキッチンもピカピカに磨き上げる。
そんな“完璧な日常”を支えるために、彼女は努力を惜しみません。

しかし、そんな彼女の前に立ちはだかる「壁」がありました。それが、夫と息子…!

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より

彼らはぬいだ靴下を洗濯カゴに入れることすらしません。

みさとの頑張りを知ってか知らずか、家事を当然のように人任せにする態度。
まるで「家事はみさとの仕事」と決めつけているかのようです。

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より

例えば、シャンプーが空になった時、息子は「シャンプーがなかったからボディーソープで髪を洗った。詰め替えはママの仕事でしょ」と言い放ちます。
開いたままの引き出しを元に戻す、ゆすがず放置されたペットボトルを捨てる、中身がなくなったティッシュケースにティッシュを補充する……これらはすべてママの仕事。

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より

「主婦の私がやるしかない」
「本当は自分たちでやってほしいけれど、私がやればすむこと」

そうやって、みさとは黙って家事をこなし続けてきました。
その結果、家の中の“すべてのこと”が、みさとの「役割」と「責任」になっていたのです。

気づけば、彼女の心には小さな徒労感が積み重なり、じわじわと“おり”のようにたまっていくのでした。

見過ごされがちな家事の「ホスピタリティ」

では、なぜみさとは「私ばっかり…」とモヤモヤしながらも、「結局私がやるしかない」と思ってしまうのでしょうか?
この問いについて、働く女性をテーマに調査を行うワークスタイル研究家・川上敬太郎さんに話を伺いました。

しゅふJOB総研研究顧問/ワークスタイル研究家 川上敬太郎さん

ワークスタイル研究家・しゅふJOB総研の川上敬太郎氏

1973年三重県津市生まれ。大手人材サービス企業管理職などを経て、2010年に株式会社ビースタイル(当時)入社。翌年、調査機関『しゅふJOB総研』を起ち上げ所長就任。独立後の現在も研究顧問として調査に携わる。プライベートでは、男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。

——『“生きづまる”私たち』2話のエピソードについての感想をお聞かせください。

川上さん:率直に、とてもリアルな作品ですね。よくある家庭のワンシーンで「どこかおかしい」と感じつつも「主婦の私がやるしかない」という葛藤。そんな無意識の違和感が丁寧に描かれていて、とても興味深く読みました。

たとえば、夫や息子が脱いだ靴下を放置しているシーン。私も主夫生活5年目なので、その光景にはよく出くわします。
あきらめ半分のような、なんとも言えないがっかり感。多くの家庭で“あるある”ですが、その奥には根深い課題があります。

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より


——みさとは夫や息子に「やって」と言うことすらあきらめています。なぜ言えないのでしょうか?

川上:長年にわたって刷り込まれた性別役割意識によって、言えない状況に追い込まれている面が大きいのだと思います。家庭内の役割分担って、実は話し合って決めるより、いつの間にか押しつけられていることが多い。

たとえば脱いだ靴下は、本来は自分で洗濯機に入れるべき。でも、それをみさとは無意識のうちに“やってあげて”いる。

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より


——確かに、「つい、やってあげる」ことってありますよね。

川上:それって実はすごいことなんですよ。
「脱ぎっぱなしの家族の靴下を洗濯機に入れる」
これは100%家族のための行いで、ホスピタリティの領域に入っていると思うんです。
しかも、それが性別役割の名残と結びついて、「家庭の仕事=女性の仕事」と無意識に刷り込まれている。
家族だけでなく本人でさえもそう思い込んでしまっている構造が、問題の根っこにあるんです。

必要なのは、家事を家族全員で共有し、「家庭の仕事」を「自分ごと」として捉える意識改革。
そうすれば、みさとのような女性たちの「生きづまり感」も、少しずつ軽くなっていくのではないでしょうか。

****

川上さんのお話からは、「無意識のうちに家事を女性の役割だと決めつけてしまう構造」が、いかに女性たちを追い詰めているかが見えてきます。

この課題は、決して女性だけの問題ではありません。
家族全員がその構造に気づき、少しずつでも意識を変えていくことで、もっと協力し合える家庭を築くことができるはずです。

「『“生きづまる”私たち』~みさとのいら立ち」より

物語の中で、みさとにはやがて“ある出会い”が訪れます。
この出会いが、彼女自身の心境や家族との関係にどんな変化をもたらすのか——。
今後の展開にも、ぜひご注目ください。

文=山上由利子

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