おでんに何もかけないなんて! 「ちょいがけ」で日本全国おでんの旅

秋の気配とともに、その存在感を増す、おでん。なかでも、日本各地の個性的な「ご当地おでん」が人々を魅了しています。
黒はんぺいといわしの削り粉が力強い風味を引き出す「静岡おでん」、かにの甲羅に魚のすり身とかに足を盛り付けた “かに面”が豪華な「金沢おでん」、ゆで卵を丸ごとさつま揚げで包んだ“バクダン”が豪快な高知の「室戸おでん」、濃い醤油色のだし汁と白いテビチ(豚足)でパンチある風味「沖縄おでん」などなど、一度は食べてみたい具材ばかり。

こんな特徴的なおでんダネは地元以外では入手しづらいため、あまり体験する機会がないのですが、じつは全国ご当地おでんには、もう一つ、「特徴的なタレやミソをかける」というご当地おでんスタイルがあります。
厳密には出汁やおでんダネも各地で少々異なりますが、家庭で簡単に楽しみたい方におすすめしたいのが、手軽にタレをかけるだけでご当地おでんの雰囲気を味わえる「ちょいがけで日本全国おでんの旅」なんです。
【青森県】〜心も体も温まる、屋台発祥の「しょうがみそ」〜


厚みのないこんにゃくや大角天と呼ばれるさつま揚げの串刺しが、見た目に特徴的な「青森おでん」。戦後の青森駅周辺で青函連絡船を待つ大勢の人々が買い求めた、おでんの屋台は忙しく、温めるのに時間がかからないように、薄い具材となったとも言われています。
しかし青森おでんの決め手は、何と言っても「しょうがみそ」。「青森おでんの会」によれば1軒の屋台の女将が、「お客さんの冷えた体を少しでも温めてあげたい」という気持ちから甘い味噌だれにしょうがをすり入れたものをかけて出したのが発祥となっています。
地元味噌メーカー、かねさ味噌でもお手軽な「しょうがみそ」を販売。地元スーパーなら置いていないところはありません。また、通販で入手も可能です。
【愛知県】〜おでんにみそかつ「つけてみそ かけてみそ」〜


愛知県では「おでん」は大きく2系統に分かれます。
一つは、牛すじや豚のモツを煮る郷土料理「どて煮」と同じ味噌だしの中で、大根やゆで卵を真っ黒に煮た「味噌おでん」。
そしてもう一方が、関東煮(一般的なおでんは味噌煮のおでんと区別するために関東煮と呼ばれる)に、あとから甘い味噌だれをかけるタイプです。
現在、あとがけ派が推す甘い味噌だれの代名詞といえば、「つけてみそかけてみそ」。江戸時代創業のナカモが、すでに同社で商品化していた「田楽みそ」や「みそかつのタレ」「どて煮の素」などの味噌だれを一本化し、1994年に発売したものです。味噌が初めてトマトケチャップ式容器に入った “卓上みそ”として生まれ変わり、県民の味噌愛を確かなものにした立役者と言えます。
オリジナルの他に、「ゆず味」や合わせみその「マイルド」、などあり。
じつは、味噌だれあとがけタイプ内には“昆布だしのみで煮たおでんダネに甘い味噌だれをかけるもの”を「味噌おでん」と呼ぶ別の派閥もあり、愛知県民同士で話していても、話が噛み合わないこともあります。いずれにしても、味噌に甘い味付けをすることで共通し、八丁味噌に代表される豆味噌のコクと旨味を味わえるのが、愛知のおでんの特徴です。
【長野県】〜底冷えの冬を乗り切る「ねぎだれ」〜

長野県飯田市のおでんだれは、長ねと醤油のシンプルな旨味が生きている「ねぎだれ」です。
市内の「丸現」という料理屋さんが発祥の「ねぎだれ」は、刻んだ長ねぎ、醤油、砂糖、酢を加えた醤油ベースのたれ。その評判はいつしか市内に知れ渡り、今では、飯田の家庭の味にもなっているそう。
飯田市は県の南に位置するため、県内では温暖と言われていますが、冬は放射冷却で氷点下に気温が下がることもあるため、厳寒のなかでの生活を余儀なくされます。そんな底冷えの冬に、体を温める効果を持つネギをおでんに使うことが喜ばれたに違いありません。
このねぎだれを毎日大量消費する飯田市民は大量に手づくりするらしいのですが、“ちょっとお味見したい”我々には、地元メーカー・丸昌稲垣の「信州飯田のねぎだれ」が便利です。メーカーによると、「ねぎだれ」はおでんだれとしてのみならず、揚げ物に、豆腐に卵かけご飯に、麺類にと、オールマイティーに使える万能調味料とのことなので、お醤油がわりにいろいろなメニューにちょいがけしてしてみると、あっという間に1本消費の便利だれでした。
【愛媛県】〜甘さと辛子の二重奏、みがらしおでんみそ〜


麦味噌の甘みと、和がらしのピリリとした辛味が、おでんによく合います。
愛媛県の多くの味噌メーカーが製造する、おでん味噌。麦味噌に和がらしと酢、砂糖を加えた調理味噌で、愛媛の食文化にかかせない味で「みがらし」「みがらしみそ」などとよばれています。郷土料理の「フカの湯ざらし」(サメの湯引き)や「しめとうふ」(固ゆで豆腐)に添えられますが、特に、おでんとの相性は抜群。
県内では、うどん店やラーメン店などに必ずサイドメニューとしておでんがあり、みがらしみそもその横に必ず添えられています。つまり、おでんを食べる機会は多いため、県民にとって、みがらしみそとの関係も切っても切れない仲となっています。
愛媛のスーパーでよく見るのは、ギノー味噌「おでんみそ(甘口)(ピリッとから口)」や、矢野味噌「みがらしおでん味噌」など。どちらのメーカーも老舗の麦味噌メーカーで、地域の味を守り、伝えています。
(※お隣の香川県でも、うどん屋さんにはおでんがあり、辛子味噌がたっぷり入った壺が置かれています。愛媛は麦味噌、香川では米味噌を使います。)
〜気軽にちょいがけのススメ〜

寒い季節、「おでんパーティー」など大勢でおでんを囲む機会があれば、特徴的なたれを持ち寄って、というのはいかがでしょうか? ちょいがけで日本全国おでんの旅を満喫できます。もちろん、関東の和がらし、九州のゆず胡椒も必須です。以前、ちょいがけおでんイベントを開催し、いつものおでんの味の変化に、とても盛り上がりました。
また、簡単に手づくりで真似できそうな、兵庫県の「しょうが醤油」などから試してみれば、気軽にちょいがけで日本全国おでんの旅に今すぐご出発いただけます。からしだけがおでんの薬味ではないのです。
文と写真:スーパーマーケット研究家・菅原佳己
Information
スーパーマーケット研究家。1965年東京生まれ。名古屋在住、一児の母。夫の転勤で国内外の転居を繰り返し、スーパーの研究を続ける。ご当地スーパーブームの火付け役として、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで活躍中。著書『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』『日本全国ご当地スーパー 隠れた絶品、見~つけた!』(講談社)。「みなさんも日頃から疑問に思っていることありましたら、ご連絡ください。あなたに代わって、お調べいたしますよ〜」
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