「年金が足りない」「貯金がない」「ローンが残る」と、多くの人がご自身の老後には経済的な不安を抱えているもの。

年金の受け取り方から老後の家計管理、1000万円以上も得する節約術など、「老後不安」を解消するために欠かせない、ごく簡単な方法をまとめました。本当に必要なことだけがまとめられた「お金の教科書」で、老後の幸せを掴みましょう。

※この記事は『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』(田中佑輝/アスコム)からの抜粋です。


収入が激減する60歳以降、必要なのは「お金」への意識変革! お金の教科書(1)【連載】 画像(1/1) 収入が激減する60歳以降、必要なのは「お金」への意識変革!

老後を楽しく暮らすために!「60歳からの収支」をしっかり考えよう


これからみなさんに60代以降の人生を安心して、より楽しく豊かに過ごしていただくための「資産の増やし方」についてお伝えしていきますが、何よりもまず、みなさんに認識していただきたいことがあります。それは、「60歳から、家計の収支は大きく変わる」ということです。


その変化をもたらす最大の要因は、収入の急激な低下です。日本では、60歳になって定年を迎えた後、再雇用された時点で給与が大きく減ります。極端な場合には、それまでの5分の1になることすらあります。


65歳になり、年金が受給できるようになっても、状況はあまり変わりません。2018年度の、標準的な夫婦二人世帯(夫の現役時代の平均月収が42万8000円で、妻が専業主婦)の、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた額は、月額22万1277円(年額にすると265万5324円)となっています。


夫婦ともに企業で働いていた場合には、二人分の老齢厚生年金を受給できますが、合わせて300万~400万円ほどという世帯が多いのではないでしょうか。いずれにせよ、50代までの年収には遠く及ばないケースがほとんどのはずです。


もしかしたら、みなさんは「何を当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、その「当たり前のこと」をあえて書いているのには理由があります。頭では「60歳になると、収入が減る」とわかっていても、人はなかなか、それに合わせて生活を変えることができないのです。


特に、現役時代の所得が多かった人ほど、収入が減ったとき、より生活に困難を覚える傾向があります。その理由の一つは、今の年金システムにあります。


みなさんは、「所得代替(だいたい)率」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?所得代替率とは、現役世代の平均手取り収入額(ボーナスを含む)に対する、給付開始時点の年金額の割合を示したものであり、これによって年金の給付水準がわかります。


ちなみに、厚生労働省の「平成26年 財政検証結果レポート」によると、現役世代男性の平均月収約34万8000円に対し、モデル世帯(会社員の夫が平均賃金で40年間働き、妻は専業主婦の世帯)の年金額は21万8000円で、所得代替率は62.7%でした。


そして、現役時代の収入がモデル世帯より少なかった人は、所得代替率が高くなり、収入がモデル世帯より多かった人は、所得代替率が低くなるという仕組みになっています。つまり、公的年金は、収入が少なかった人ほど有利になっているのです。


「収入が多かった人は、公的年金以外にも、貯蓄や個人年金保険などへの加入によって、より多く老後に備えることができるけれど、収入が少なかった人は、公的年金が老後の生活の基盤となるため、より手厚くしなければならない」という考え方が基本にあるためです。


しかし実際には、収入が多い世帯が、必ずしも老後に備えられているとは限りません。むしろ、現役時代に収入が多かったがゆえに支出も多く、資産が形成できていない世帯も多いのです。特に、バブル期を経験している世代だと、当時の金銭感覚が身についてしまっていることが少なくありません。


私は今まで、定年を迎えた60代以降のご相談者から「貯金を切り崩しながら生活しているけれど、このままだと資産が底をついてしまいそうです」といったお悩みをしばしば聞いてきました。その都度、家計の状況をお伺いしているのですが、収入が大きく減ったにもかかわらず、支出の内容や額があまり変わっていないというケースが少なくありません。


収入が減ったのはわかっているけれど、細かく家計をチェックすることなく、漠然と「大丈夫」「何とかなる」と思ってしまう。以前の生活スタイルを、ずるずると続けてしまう。家計を改善させ、資産を増やし、60代以降の生活をより豊かなものにするためには、まず現状、そして今後のお金の流れを明確に、客観的に把握し、お金に対するこのような意識を変える必要があるのです。


【POINT】 

・60歳になり、定年退職すると、収入は大きく減る。それをしっかりと認識することが、お金の不安をなくす第一歩となる。


著=田中佑輝