触れちゃいけない…? ママ友社会の闇を描くコミックエッセイ『ママ友がこわい』著者インタビュー

#くらし   

子どもを育てる中で、大きな課題となる「ママ友」という存在。うまく気の合うママ友が見つかれば大きな財産になりますが、一歩間違えば子どもの交友関係にまで影響が及びかねません。でも、うまくやっているつもりでも、ほんの些細なところから関係が崩れて孤立してしまうことも。そんなママ友同士のドロドロとした関係を描いたコミックエッセイ『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』(野原広子/KADOKAWA)が、今再度注目を集めています。


 


本作品は、仲が良かったママ友に嫌われ、陰湿な嫌がらせや孤独、不安と戦うことになってしまった1人のママが主人公のコミックエッセイです。誰にも言えないし、味方であるはずの夫の理解も得られない主人公は、どんどん精神が壊れていきます。その様子は、とってもリアルでこわい!

そこで今回、著者の野原広子さんに、この作品についてお伺いしました。

—この作品を描かれたきっかけを教えてください

きっかけは、「ママ友」をテーマに書いてみませんか?という編集長からの提案でした。そこで早速「ママ友とのトラブル」について取材を始めたところ、初っ端から「それ、触れちゃいけないとこ」と知人に目を伏せられちゃって。でもこの言葉で火がつき、ママ友という人間関係について深く知った上で作品にしてみたいと思いました。

―作中で起こっているのは、実際にあったエピソードなのでしょうか?

エピソードはフィクションですが、元はとても仲良しだったのに目も合わせない関係になってしまうパターンはよく見かけます。親しい関係の方が厄介なことになりやすいんですよね。例えば、家族ぐるみで遊びに行ったり楽しそうにしたりしていたのに、今では口もきかない、目も合わせない、しまいには子供に対しても冷たい態度を取るといった具合です。一度は「友達」だと思っていたからこそ、落差がつらいですよね。

この落差がつらい…


―どんなことがきっかけで、関係が崩れるんでしょうか?

きっかけとなっているのは些細な出来事であることが多くて、実際は小さなモヤモヤ、イライラが蓄積された結果なんだと思います。また、それぞれの「自分の子供が一番可愛い」という親心も、こういったいじめが深刻化する原因になりがちです。作中でも、主人公の子どもがおゆうぎ会でセンターになったことが起爆剤になっています。取材をする中で、人は「自分より下」だと思っている人に負けたと感じたとき、怒りの感情が生まれるんだなと強く感じました。先生など、第三者の冷静な目線を大事にしたいところですね。

「よその子 “は”センター」という見え方が、ママの心を歪ませていく…


―作品を作るうえで、苦労したポイントはどこですか?

「どこから漏れるか分からない」という不安から、誰も自分自身のことは話してくれなかったことです。自分自身だけでなく子供が関係してくるだけにとても慎重になっていて、大抵の人は「私はママ友には恵まれているし、お互い助け合って楽しい関係」と笑顔で話してくれました。その人たちが実際どうなのかは分かりませんが、こういう「誰にも言えない環境」が、よりいじめを助長するのかもしれませんね。フィクションだからこそ、そういったしがらみに囚われず、心の奧の暗い部分まで掘り下げて描けたと思います。

―気に入っている部分はどこですか?

主人公のサキが、どんなに意地悪されても「元ママ友」たちにちゃんと挨拶するところです。

元ママ友に笑顔であいさつするサキ


どんなに無視されても、「笑顔であいさつ」はやめない


今いじめられていたとしても、これから長く続くかもしれない園や学校生活で「変われる糸口を残しておく」というのはとても大事なことです。描きながら、辛くてもそれをきちんとできているサキはエラいなあ、と感じていました。

―実際の、野原さんのママ友生活はどんな感じでしたか?

本作品ほど強烈なことはなかったですが、仲良くできていると思ってもそうでもなかったり、仲良くなりすぎてお互い踏み込みすぎてケンカ別れしたり、いろいろ失敗もありました。でもママ友に助けられて乗り越えられてきたことはとても多くて、子供が保育園のころからずっと仲良くしているママ友もいます。子供が大きくなった今でも一緒に遊びますよ。私の場合、ママ友との関係と子ども同士の関係がリンクしていなかったので、それも比較的平和なママ友関係を築けた理由の1つかもしれないです。

―最後に、春からママの社会デビューする読者の方にメッセージをお願いします

ママ友って“怖い”とか“面倒くさい”ってイメージもあるかと思います。でも、こんな怖い話を書いておいて言うのもなんですが、程よい距離感でおつきあいできれば子供を育てる上でとても心強い存在だと思います。頑張って作るものではないし、仲良くなるときは自然となる。いないならいないでいい。同じ子育てという荒波を越えてゆく人たちと思ってお付き合いしていく中で、生涯仲良くできる関係ができたりしたら、それはとても嬉しいことだと思います。

◇ ◇ ◇

どんな世界でも、人と人が関わっていく以上、様々なことが起こるもの。この『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』は、あくまでこんなこともあるかも…という一例です。でも、その世界を知っておくことで、もしもの時に心の支えになるかもしれません。そして自分がモヤモヤを抱える側になった時、一度冷静になることができれば、きっとそこから先の未来も変わってくるはずです。

文=きこなび(月乃雫)

コミックエッセイ「ママ友がこわい」の結末はいかに?衝撃のラストは▼こちら▼から!

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Information


著者:野原広子
神奈川生まれ。コミックエッセイプチ大賞受賞。出産を機に、フリーのイラストレーターとして活躍。山登りが好き。著作に『娘が学校に行きません』『ママ、今日からパートに出ます!』『離婚してもいいですか?』(KADOKAWA)など。
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