酔うと化け物になる父、母は自死『毒親サバイバー』菊池真理子さん 子どもの人生を支配する親の異常なパワーに巻き込まれないために

#くらし 

アルコール依存症で家庭を顧みない父と宗教にはまって子育てを放棄する母。そんな、両親の元で育った菊池真理子さんが自らの過去を振り返るとともに、過酷な家庭環境で育ちながらも押しつぶされなかった10人に取材したコミック本『毒親サバイバル』。¨毒親育ち¨の人々の赤裸々な体験談が今大きな反響を呼んでいます。著者の菊池真理子さんにお話をお聞きしました。

うちの両親は変じゃない。異常さに気づくことができなかった子ども時代


――会社員の父、専業主婦の母、3歳下の妹という4人家族だった菊池さん。どのような家庭環境で育ってきたのでしょうか?

【画像】お風呂に5日入らないのも当たり前の子ども時代


よその家も同じようなものだと思っていました


「父は営業という仕事柄、酒の付き合いが必須でした。シラフでは口下手で物静かなのに飲むと軽口をたたいて大騒ぎする父は、典型的な、飲ませるとおもしろくなるタイプ。おかげで営業成績は東日本で1位になったそうで、私が小学2年生の時に独立して、小さいながらも自分の会社を持ちました。

 自営になって時間にゆとりができたのか、この頃から、近所の飲み仲間を集めて、家で麻雀をするようになります。それまでも平日は午前様で、日曜にしか会えない人だったのですが、これ以降は顔を会わせても、かなりの割合でお酒が入っている状態となりました。

 一方母は、熱心な宗教信者でした。酒飲みの父がイヤで入信したのかと聞かれることが多いのですが、結婚前からの信者です。私が学校から帰ってくる時間には家にいましたが、夜は連日のように会合に出かけていました。私たち姉妹も、時々は連れて行かれました」

――作品に「子どもは自分の家庭がおかしいことに気づくことができない」とありました。菊池さんが最初に家庭環境への違和感を覚えたのはいつ頃でしょうか?

多感な時期に母が自殺。酒に溺れる父の世話に疲れ、宗教に救いはなく…


普通でいたいから、仮面をかぶって元気なふりをしていました


「自ら家庭環境に違和感を覚えたというよりは、母の死によって、強制的に『普通の家庭環境じゃなくなったぞ』と知らされたというのが最初でしょうか。それからは、普通じゃないことがバレないように取り繕い、自分自身にもウチはそれほどヘンではないと思い込ませていたような気がします。

 きちんと思い込みがはずれたのは前著『酔うと化け物になる父がつらい』の反響をいただいた後、何年かかけて。『こんなにひどい家があるの』と言われ、ひどかったのかと気づきました。ただ、一気に思い込みがはずれてそのまま全てを素直に受け入れられたという感じではなく、たびたび違った感情が生まれました。例えば、憐れまれることに抵抗を感じたり、父を擁護したくなったり…。自分の感情ながら、全く一筋縄ではいきませんでした。本当に徐々に『普通じゃなかったんだな。だから自分は不器用な生き方でも仕方なかったんだな』と受け入れられました」

「毒親サバイバー」たちに直接会うことでこれからの生き方を模索したかった


――大人になってから少しずつ育ってきた家庭環境を客観的に見られるようになったのですね。今回、ご自身の体験だけでなく、毒親育ちの人に直接取材してそれぞれのケースを紹介する本にしたのはなぜでしょうか?

「自分の生きづらさの理由が、親子関係から来ているとわかったものの、この先どうしていったらいいかはわからなかったので、先にその問題に気づいていた人たちにお話を聞いてみたいと思ったのがキッカケです。私は自分の感情に蓋をしていた時間が長くて、その分、問題にも気づけなかった。ほかの人はどうしてきたのか、教えてほしかったのです。一人一人、個別の事情は違うけれど、共通するものもあるのでは、とも感じていました」

アルコール依存症セミナーで私の普通にヒビが入りました


謎が解けたら、生きていける気がしたのです


――実際に「毒親サバイバー」の方たちにお会いして、どんなことを感じましたか?

「ほとんどの方が、わけもわからないまま親に振り回される子ども時代を経て、怒り・悲しみに飲み込まれる青年期を送っている。その時期は、意識しているにしろ、無意識にしろ、親の方がおかしいと思っているのにご自身もめちゃくちゃつらそう。それが社会に出たりして、いい大人、いい会社、必要とされる仕事、やりたいことなどに出会うことで、親と直接対決しなくても、変わられているのが印象的でした。それは決して親を許したということではなくて『バカヤロー!』だったのが『あの人、どうしようもないんだよなぁ~』みたいになっているというか」

――大人になって世界が大きく開けることで、それまで家庭という小さな枠組みで対峙していた親から距離をとれるようになっていたのですね。菊池さんが取材した中でとくに印象に残っているエピソードなどはありますか?

「ひとつに絞るのは難しいのですが、あえて言えば、占い師の鳥海さんのエピソードでしょうか。実家が民宿で手伝いや家事を強要され、中学生にして毎日50人前近い料理を作っている…。どう見ても「ものすごーーく出来る人」なんですが、彼女が自分に下している評価は、まったくそうではなかった。母親に対しては、早い段階から全てを諦めているのに、取材の時に涙を見せられたのも、忘れられません。私は、何に対してかわからないままに『鳥海さんにこんな複雑な思いをさせやがって、ちくしょう、ちくしょう』と思っていました」

とくに印象に残っている占い師の鳥海さん


毒親から逃げられなくても…「心の距離」を離す手段もある


――「毒親から逃げる」という選択肢がある一方で、親との確執を抱えたまま、完全に縁を切るまではできない…と悩んでいる人も多いのではないかと思います。とくに女性の場合、結婚や子育てで親が介入してきてぶつかるようなケースもよく耳にします。毒親との上手な距離の取り方があれば教えてください。

「私も『逃げる』が最善だと勧めるのは、危険だなぁと思っています。誰にでもできる方法ではないし、逃げられない人が、自分を責める材料になってしまいそうで…。

 私は親との距離のとり方に大失敗したので、どうしたらいいのか、いまだによくわかりません。なので、この本の解説を書いてくださった信田さよ子先生がおっしゃっていた方法をひとつだけ、お知らせさせてください。それは、物理的な距離は近くても心の距離を離すという方法。『です』『ます』調でしゃべり、『おはようございます』などの挨拶だけはしっかりする。親に『なによ、他人行儀ね』と言われたら、成功ですとのこと。親の異常なパワーに巻き込まれないために、とても有効だと思います」

――この本を読んで、自分自身が子どもにとっての毒親になっているかもしれない、と思い当たる人もいるかもしれません。自分は毒親かも?と気づいたときに、状況を悪化させないためにもできることはありますか?

「子どもにとってつらいのは、わけがわからないこと。Aという行為で褒められることもあれば、怒られることもある、なんてことが続くと、子どもは自分の中に、それを納得させる異常なストーリーを作ってしまいます。だから、理不尽な理由で子どもに怒ってしまったとしても、その理由をきちんと説明してあげてほしいです。『○○のせいでイライラしていて、全然関係ないあなたにあたってしまった。お母さんが悪かったね。ごめんね』と。おそらく子育てをしていたら、感情的になってしまうことは、何度もあるものでしょう。そのたびにきちんと関係をリカバリーしていったらいいのではないかと思います。ただ、本当の毒親は『自分は毒親かも?』なんて思わないんでしょうね(笑)」

自分自身が子どもにとっての毒親になっているかもしれない、と思い当たる人もいるかもしれません


本当の毒親は『自分は毒親かも?』なんて思わないんでしょう


――今回「毒親サバイバー」の方たちにインタビューをして、菊池さんご自身の気持ちの変化はありましたか?

「一人で閉じこもるのはやめよう、SOSを出せる人間になろう、と思うようになりました。それから、自分のことで手一杯な時期が過ぎたら、人の方を向いていきたいなぁと思っています。外の世界とつながって生きているみなさんが本当にステキだったので、見習いたいです」

読者からも家庭の悩みを相談されることが多くなったという菊池さん。「私に聞かせてくださるのはありがたいことですが、同時に、ほかにも心が楽になる話せる場所を持っていらっしゃるといいなと思います」と語ってくださいました。毒親の呪縛から逃れられない人、「自分が毒親なのかもしれない」と悩むすべての人にぜひ手にとっていただきたい一冊です。

文=宇都宮薫

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アルコール依存症の親、暴言と暴力の親、価値観を一方的に押し付ける親、果てしなくお金をむしりとる親、そんな状況を見て見ぬふりする親……。
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